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第102話 「僕を助けて」



 その翌日、ちょうどお昼をまわった頃。
先方からの「発送しました」メールを受けると子宮の激痛が加速して、その日二度目の薬を飲んだ。

 こういう時に、あきらの学校が再開していないということが、今はありがたくて仕方がなかった。お弁当の支度も送り迎えも、色んな意味で痛みの中にいる私には、そこまで対応する余裕がなかった。
 そんな我が子はわかっているのか「たぶん、その買ったやつ届けば楽になるよ。」と言って、レトルトカレーしか用意できなかったお昼ご飯にむしろ感謝をしてくれた。

 実はその日は午前中の早いうちから、スサナル先生からいつものように“歌”の手紙が届いていた。洗濯物を干している頃から、それは脳内で自動的に流れ始まっていた。
 今までの曲だったら喜んですぐに歌詞の確認をしていたというのに、なんだか今回は確かめるまでに勇気が要った。カレーを食べ終わってから時間をかけてお皿を洗うと、それからようやくスマホを開いた。

 それは、私が大学生だった時の洋楽。歌詞なんかとっくに忘れ、うろ覚えのフレーズだけが“予感”だった。

 わかってた。けど調べてみたらやっぱりだった。男性ボーカルの歌声は繰り返し何度も、「君から隠れてしまいたい。僕は君から逃げたいんだ。」と、そんな風に歌っている。

 君から逃げたい隠れたい。僕はただの男にすぎず、なのにこんなの酷いじゃないか、一体どんな仕打ちなんだと私をずっと責めている。
「今の僕のまま愛してよ。全部終わってから起こしてよ。それまでは君から隠れさせて。メッキをはがさないままの綺麗な僕でいさせて。」

 ああ、私が自分の子宮に向き合い始めたことを、あなたはどこかでちゃんとわかってる。肉体的な痛みで苦しいのは私だけど、先生の奥底でもきっと、何か異変があるんだね……

 それにもかかわらず、歌の最後のフレーズはというと“save my soul”、僕の“魂”を助けてくれと繰り返し、その惨状をも私に訴えかけてくる。

 サイトの記事にも書いてあった。ツインレイの男性は通常よりも懐が深く、それが原因でより多くの責任を背負って生きているのだという。

 いつだったかあの人は、ギターや映画、読書がないと死んじゃうと言って私のことを笑わせてくれたけど、あれって文字通りに、本当に死んでしまうということだったんだと今更ながらに気がついて、途端に悲しくなってしまった。私に笑顔を向けてくれることに一人満足して、彼が抱え込んできた多くの苦しみの存在に気づけなかった自分のことを、大馬鹿者だとも思った。


 そしてさらに翌日。なおも腹痛は増していたけど、ポストに何かが投函される音がしたのを耳にすると、もはや這うように玄関へと向かった。
 だけど、それを手にする恐れもあった。これを身につけてしまったら、もしかしたら浄化の“スパルタ”、もっと痛さが加速するんじゃないかと思わなくもなかった。
 それでも開封して手に取った途端、ようやくちょっと“呼吸”ができて、そんな様子を見ていたあきらに「やっぱり大丈夫だったじゃん。そんな気がしてたんだよね。」と笑われてしまった。
 そして徐々に時間と共に、あれほど酷かった下腹痛も、少しずつ和らいできた。高いところから見守ってくれていた先生の意識も、笑っているのがわかった。


 ところがそれを身につけた晩から、夢を通して暴力的な男性たちがたくさん出てくるようになった。隙あらば侵入してこようとする彼らの意識との攻防戦。夢は毎回どす黒く、寝ながらにして疲れが溜まる。そして起きると同時に始まるお腹の鈍い痛み。
 最初はその意味がわからなかったけど、この時すでに個人的なエゴの解体と共に、古い三次元男性原理システムを解放すべく、私は地球を取り巻く集合意識そのものとの戦いをも開始していた。

 スサナル先生のハイヤーセルフによってもたらされた贈り物とは、私の中の古い世界の男性性と、それを下支えする女性性の闇を炙る、光の想いが結晶化したものだった。そしてその光の導きにより一戦一戦闘うごとに、私は自分の“肉体”の裏(精神世界)と表(現実世界)の“使い方”を徐々にマスターしていった。




written by ひみ

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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

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最初はアメブロのほうで紹介しようかなーとは思ってたんですが、昨日、まさかの高次元男性視点の記事を先に書きあげなさいということで、今回の曲はこちらで簡易的に紹介しますね。
素晴らしい和訳をしてくださってる方が多いので本当助かる。いい時代だ。

今回の小説に出てきたのは、MR.BIGの♪Take Covorという曲です。エリック、いい声してます。
ですが一か所だけ、
true to myself
and stay goldって歌詞があって、
みなさんの和訳を読むと、
「正直でいさせて」「正直でありたい」とあり、続けて「輝いたまま」「凛としたまま」と、おおむね“性善説的綺麗な僕”なんですが、わたくし当時からツインレイやってますでしょ?(←誰?)
なんかこの時調べて、ここに最初から違和感があったの。
それが時間と共に確信に変わったので、上記のような意訳としました。
ツインレイ男性、苦しいね。
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←今までのお話はこちら

→第103話 見習い戦士

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