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住めば都 -1- Köln

僕が住んだ街について。

ドイツに移住して、今このベルリンが4都市目になります。どの街にも約3年くらい住みました。それぞれの街に良いところと、そうでないところがあります。旅行で訪れるのと住んでみるのとでは、印象も随分変わって来ます。また、移り住んだ後に見えてくる風景っていうものもあります。今回はそんな街について書いてみます。


Köln (ケルン) 

僕がドイツで初めて住んだ街です。ルール工業地帯最大の都市で、ドイツ国内では4番目に大きな都市として有名です。名所はケルン大聖堂。名物は透明でスッキリした味わいの地ビールKölsch 。毎年2月の Weiberfastnacht に始まり、翌週の Aschermittwoch まで続くカーニバル。特にケルンはその3大カーニバルの一つとしてとても有名です…が詳細については割愛しますね。(ネットでいっぱい書かれてますからね)  とにかく春の訪れを狂ったように街中でお祝い…と言うか騒ぎたおすわけです。初めて見たときは、ピノキオに出てくる意地悪いサーカスの団長率いるピエロ達が街中に溢れかえってるみたいで不気味にさえ見えました。熱心に仮装する人もいますが、どちらかと言うとそれは少数派で、殆どは中途半端で汚らしい仮装。あのベニスのカーニバルとはクオリティが違いすぎます。でも人々はみんな楽しそうです、酔っ払っています。だからこそ、少し狂気じみて見えるんですね。地元ケルンっ子の中にも、このカーニバルが苦手で、この期間にバカンスをとって地元を離れると言う人も少なくなかったです。パレードも一回見たらもう十分でした。パレードの後は町中がゴミで溢れかえり、みんながあちこちで小便を済ませるものだから臭くてたまらなかった。そんな思い出があります(涙)。

初めて海外で就職した街ケルン。初めての海外での仕事。何もかもが未体験で、勝手が違い、戸惑うことばかりだった街。正直言って最初の1年半は、ただただ馴染むのに時間を費やした、と言って過言ではありません。ドイツ生活を楽しむなんて余裕はありませんでした。金銭的にも、時間的にも。家族揃っての移住だったので、子供達も奥さんも、大変だった。今でもその頃の苦い思い出で彩られて、「灰色の街」と言う印象が一番根強いです。実際街のシンボル「大聖堂」が灰色の巨大建造物としてそびえてますからね。ケルンという街を余裕を持って眺められるようになったのは2年を過ぎた頃ですね。お気に入りのサウナ&スパがあるし、映画館や美術館に行ったり、ライン河沿いを散歩したり、車でベルギーやオランダにドライブに出かけたり…。ケルンはヨーロッパを旅するには最適な立地です。長距離列車がケルン中央駅から沢山出ているので、夢が広がります。

しかし、自費での海外引っ越しはかなりお金がかかります。大手企業の海外赴任で手当てが出る、そんな話を聞かされたときは、心底羨ましいと思ってしまいました。僕のようなごく一般的「中の下」流家庭にはこたえます。そんな日々の中、当初はほとんど外食なんてできませんでしたが、そんなときに僕たちの胃袋を満たしてくれた料理が、ケバブと中華インビンスの料理でした。いずれもドイツ料理ではありません。ケバブはトルコで生まれて、ベルリンでストリートフードとしてドイツ全土に広まったファストフードです。(コレもある意味有名なので割愛) 取り上げたいのは僕たちがよく利用した中華インビンス「你好(ニーハオ)」。とにかく一品5€くらいでお腹いっぱいになった。僕の1番のお気に入りはモヤシとネギ、くらいしか入ってない、極細麺のソース焼きそばでした。この味はちょっと忘れられない。きっと体に良くない調味料も入ってたかもしれませんが、色々飢えていたので、細胞ひとつひとつが喜んでコレをかっ込んでいたように思います。もうただただB級グルメ、屋台の味です。(他にも美味しい量はたくさんありましたよ) そこのコックはいつも野球帽を深くかぶって無愛想、笑顔ひとつなかったけれど、いつ言っても同じ味と量で僕たち家族のささやかな晩餐を賄ってくれていました。そんなお店「你好」も、改装と共に従業員は総入れ替え。看板は同じなのに、店内も綺麗になって、値段も少し上がり、味は通り一辺倒の代わり映えしないお店に変わってしまった。だからあの焼きそばを食べたいと思っても、もう叶わない夢となってしまいました。お金に少し余裕ができて、ここでちょっといいものを食べに行ったことがありましたが、もう僕たちの気持ちを満たしてくれるお店ではありませんでした。残念ですが、仕方ありません。きっとあの時にしっかり働いて、しっかり貯めて国に帰ってしまったんだろう。いつもむっつり不機嫌そうだった彼が、故郷に帰って家族と笑顔になっていてくれたらいいな、と願います。

なんだかあまりドイツらしい話題が薄いですが、それが僕にとってのケルンという街の思い出です。もう一度訪れたい街かと聞かれたら、ちょっと遠慮してしまう街です。でもKölnischを飲むためならまた行ってもいいかな。他の街でも飲めるけど、あの街で飲むKölsch は本当に美味しいですから。




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