戦争の始まり【閲覧注意】
夢のお話。微弱のグロ要素があります。
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野山で遊ばせていた、大中小20頭程の犬達が虐殺された。沈痛の中、会話の流れで「隣村のやつらのせいだ」と言うことになり、私と友人達は襲撃に備え保身用の農具等を携帯して帰路に着いた。
怯えながらの集団移動中、一人の男性を見付けて、私達は岩陰に隠れた。仲間の男一人が近付き、短い会話の途中で「コイツらだ!殺れ!」と言って男性を襲い始めた。
この時点で、虐殺の証拠は何ひとつ無い。犯人の憶測は全て他人の意見だったし、見知らぬ男性との会話も聞こえなかった。男性は丸腰だ。
皆、息を飲み固まった。仲間の男が一人で男性と揉み合いながら「何してんだ!早くやれ!」と責め立てる。一人づつ、全員がやれ、と言う意味に感じた。血の操(みさお)なのだ。
嫌でたまらなかったのに、パニックを起こして、やる以外の道は見えなかった。私は細い鋤(すき)を、瀕死の男性の腹部に数回振り下ろした。
これにより、戦争が始まった。岩肌で休憩中、視界の隅に小さな動く点が見え、すぐに「タタタタ」と乾いた狙撃音が響いた。
私は机を盾にして反撃の機会を伺うが、ライフル相手に鋤では近付けない。幼い子供たちは、ノーガードでポカンと相手を見ている。
隣に座っている女の子の、ふわふわ広がった水色のスカートの横に、手製の手榴弾が落ちた。白い包帯で堅く巻かれたそれを、私はとっさに掴んで敵に当たるように投げ返す。
憎しみは欠片もなかった。ただただ怖くて、いなくなって欲しいだけ。
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ここで目が覚め、「これが戦争だ」と思った。何かしらの弊害があり、力の強い誰かが矛先を決める。流されて同じ信念を持つ人。恐怖に支配される人。
あの時、腹部に鋤を下ろさなかったら。殺されないまでも、罵られ、武器や衣服、水・食料を取り上げられ、追放されただろう。
私は極端に争いが嫌いな性分なのに、パニックには抗えなかった。分岐点は、「鋤を振り下ろす」か「話を聞く」かだと思う。
身を守る為の武装は、新たな武装を呼ばないか。既に襲われている見知らぬ人と、話をする事が出来るか。
「ちょっと待って、その人と話をさせて」と名乗り出るリーダーになれるか。その人の話を冷静に分析出来るか。
一人ぼっちで、罵倒されながら。