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「花椒の味」ネタバレ注意

初鑑賞時、私の意識は三姉妹の家族に同調していました。あぁ、またやってしまった。こんなに愛しているのに。幸せになって欲しいのに。笑っていて欲しいのに。

私には亡くなった母と生き別れの父がおり、彼らの痛みを観るようで、私自身が責められている気持ちになりました。

次の鑑賞時、私は冒頭から感情が鈍くスンッとしていて、二度目のせいかと思いましたが、途中で長女に同調していると感じました。

愛は感じているんです。でも見守って欲しい訳じゃない。目を見て、ハグをして、愛しているよと言葉で伝えて欲しいんです。

抵抗するかもしれない。大泣きの大喧嘩になるかもしれない。それでも逃げず、日を改めて何回でも、愛と今上手くいかない理由を話し合いたい。

箱の中に大切にしまわれ、触れられない孤独と、束の間の笑顔で平穏に逃げられている事に怒っているんです。

そして、父も彼もそういう人間だと本当は分かっているのに、歩み寄れない自分を一番憎んでいるんです。

父の死で宝箱から這い出て、三姉妹や父に関わる人々と多角的に世界を観察した事により、長女は初めて自分を見付けたのかもしれません。

私は自身の父を愛してはいないけれど、もし父が私と話す努力をする時が来たら、受け止めようと思いました。

音楽担当は香港在住の日本人、波多野裕介さん。ご自身も繊細な方で、魂の粒子のような音楽を紡がれます。

この作品では、登場人物の魂の揺れがふわっと大気中に散り、身体にまとわりつき、皮膚や鼻腔からそっと浸透し、体内で強固な感情になって胸をぐっと締め付けます。

二回目の鑑賞では、魂の浸透が微かな抵抗も無いほどスムーズだったので、私にとってこれは長女の物語であり、感じていたのは長女の揺れだったのだと思いました。

二度、劇場鑑賞の機会を得られ、違う見方が出来たのも、何かのメッセージかなと感じます。みんな、もっと我儘になったら良い。

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