そっと手を繋ぐ
人に依頼するまでもない細かい仕事は、意外と沢山ある。
職場でチームリーダーだった時、少しイラつきながら走り回る私に、同僚の一人が「忙しいの?何かやる?」と声をかけてくれた。
一つ一つは小さな作業の為説明も面倒臭く、「あーだいじょぶ」と言って走り抜けようとしたら、同僚はこう言って悲しそうに俯いた。
「みーくちゃん?忙しそうだよ?私にも出来ることがあるかもよ?頼ってくれないと、助けになれないのかなって悲しくなっちゃう。」
ダンボールを抱えながら、時が止まった。流し目でおざなりにした返答を恥ずかしく思い、私は彼女の目を見て向き合った。
ダンボールを渡し「これ、作っておいてくれる?」と頼むと、彼女は「うん!」と嬉しそうに受け取り、二人でえへへと笑った。
こんな風に垣根を飛び越えて来てくれる人を、初めて見た。イライラに触らないことが、私の中では無自覚の常識だった。さらに、同僚ではあるが私は彼女より9歳年上で、無表情で走り回っていたのだ。
それからかなりの年月が経ったが、彼女とは未だに繋がりがある。お互いの生活があり、年に一度会えれば良い方だが、どんなに離れた環境にいても、困っていたら絶対に助けに行く。
会う頻度や何をしているかじゃない。その人自身を愛し、道に迷っていたらそっと手を繋いであげたい。そんな友達が何人もいるのが、上手くいかない私の人生の、一番の誇りだ。