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【メディアブリーフィングレポート】薬局DXの課題や現状〜処方薬の当日配達機能提供開始にあたって〜

こんにちは、メドレー広報グループです。

メドレーでは先日、総合医療アプリ「CLINICS」でオンライン診療やオンライン服薬指導を受けた患者に向け、Uber Eatsの配送網と連携してオンライン服薬指導後、約30分で処方薬をお届けする「当日配達機能」の提供を開始したことを発表しました。

今回は、「当日配達機能」の提供に合わせて実施したメディアブリーフィングから、メドレーで薬局向け事業の責任者を務める亀井と、メドレーのかかりつけ薬局支援システム「Pharms」を通じて、業務効率化や患者満足度向上を目指して薬局DXにおけるさまざまな取り組みを実施されているコンフィード社代表・薬剤師の中澤氏がお話しした、薬局DXにおける課題や現状、推進における両社の取組みについての内容をお届けします。


薬局DX時代における現状と、薬局向けサービス「Pharms」について

株式会社メドレー Pharms事業推進室長 亀井翔太

薬局のあり方に関する現状と課題

薬の処方と調剤を分離し、それぞれを医師・薬剤師という専門家が分担して行うことで専門性を発揮し、医療の質の向上を図ろうとする”医薬分業”という制度があります。従前より推進されてきたこの”医薬分業”ですが、公的規制の改革について調査・審議する規制改革会議で、2015年に”医薬分業”に関する議論がなされ、患者主体となっていない点や、医薬分業の推進により増加した患者の費用負担に見合う効果が見えていない点などについて指摘されました。これを受けて、厚生労働省は2015年10月に、2025年までに薬局が目指すべき姿を明確化したものとして「患者のための薬局ビジョン」を策定し、薬局のあり方として「立地から機能へ」「対物業務から対人業務へ」「バラバラから一つへ」という3つの基本的な考え方が示されました。

しかし、2022年に開催された厚生労働省の”薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ”では、患者のための薬局ビジョンの現状に対して以下の指摘がされました。

「対物から対人業務にシフトしていく薬局のあるべき将来像を示した一方、これまで必要な情報基盤が十分整っていなかったこともあり、患者からの聞き取り等、断片的な情報に基づき対人業務に従事せざるを得ず、ビジョンに示された薬局の価値が十分に発揮されているとは言い難い状況である」

令和4年3月10日 第2回薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ資料 2-1

この指摘については、薬局の現状として、対人業務に取り組みたくても人手が不足していたり、薬剤の出荷ストップなどの対応に追われて業務が逼迫していることなどが影響し、変化への対応が難しいといった背景などを、薬局の現場の声として聞くことがあります。対物業務から対人業務にシフトし、薬局の提供価値を十分に発揮するためには、”薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ”でも言及されている「情報基盤の整備」を推進することも必要です。
そのため、厚生労働省はオンライン資格確認システムや電子処方箋を活用したデータヘルス改革に取り組んでいます。

データヘルス改革によるICT活用

データヘルス改革においては、オンライン資格確認システムや電子処方箋などの活用が進むことで、患者・医療機関の双方にとってより良い医療体験を授受・提供することができるようになると考えられています。

現状では、患者の医療情報は医療機関ごとに蓄積されており情報連携がされていないケースが多いため、重複した検査・投薬が行われるリスクがある状態となっていますが、図1(※1)のようなICTを活用して情報が連携されることで、調剤薬局であれば業務が効率化されるだけでなく、患者に対してより質の高い服薬指導を行うことができるようになるため、患者・薬剤師の双方にとってのメリットが期待できます。

一方で、それだけでは薬局を主体としたデータヘルス改革にとどまり、患者の直接的なニーズを満たす手段としては不十分という声を聞くこともあります。患者の直接的なニーズとしては、薬剤師の専門性を発揮したコミュニケーション、オンラインでの服薬指導、待ち時間の短さなどが挙げられており、これらに応えるためには国が示す方針へ対応するだけではなく、薬局個々で取り組んで行かなくてはならないものも多々あるという状況です。

図1

※1 出典:令和4年3月10日 第2回薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ資料 2-1

患者の直接的なニーズに応える調剤薬局向けシステム「Pharms」

メドレーが提供するかかりつけ薬局支援システム「Pharms」は、12,000件を超える導入実績があり(2023年12月時点)、患者の直接的なニーズを満たすための以下の機能をオールインワンで提供しています。

・薬剤師の専門性の発揮:「服薬フォローアップ機能」
薬剤の服用期間中、患者に対して服薬状況の確認、有害事象の発生有無、残薬確認などのフォローアップを行う機能です。有害事象の発見による服用停止や医薬間の連携にも繋がっています。

・待ち時間の短さ:「処方箋ネット受付機能」
スマートフォンなどで処方箋を撮影し、写真を事前に薬局に送付、処方薬が完成したら呼び出してもらう「処方箋ネット受付機能」を活用した結果、30分〜1時間弱かかっていた待ち時間を10〜20分程度に短縮できた事例もあります。

・利便性の高さ:「オンライン服薬指導機能」「薬の当日配達機能」
これまでは、薬局の予約から決済までの機能を提供していましたが、今回新たに提供した「当日配達機能」により、47都道府県において約30分で患者の自宅などに処方薬を届けることが可能になりました。薬の当日配達を開始するにあたり、安心・安全に処方薬をお届けするため、連携先であるUber Eats社と、配送できない禁止薬剤の制限や配送時のルールを厳格に定めています。

Pharmsは、今後も患者のニーズや利便性向上に繋がるさまざまな機能を開発・提供し、対物業務から対人業務へのシフトや、門前薬局からかかりつけ薬局への転換に取り組む薬局を支援していきます。

調剤薬局におけるDXの取り組みについて

株式会社コンフィード代表取締役 中澤裕太氏

対物業務から対人業務にシフトするためのDX活用

様々な業界でDX化が進み業務が効率化される中、薬局では未だに手や紙で行うアナログな業務が多く存在しています。このような運用は保管や管理にもリソースが割かれるだけでなく、ヒューマンエラーのリスクも孕んでいます。これらを改善し、より患者と向き合う時間を創出するために対物業務から対人業務へとシフトすべく、当社では薬局業務における一連で様々なITツールを活用しています。

脱対物業務に向けたDXツールの導入例

患者が来店して退店するまでに薬剤師が行う業務フローを「受付」「処方箋情報の入力」「処方薬のピッキング」「医薬品の監査」「服薬指導」「会計」の大きく6つに分けると、当社が運営する麻布十番調剤薬局では、以下のようなITツールの導入を行っています。

1.受付:WEB問診票
紙で問診票を記入する場合、感染症対策でボールペンを消毒する工数や、記入に必要なバインダーなどのコストがかかっていましたが、患者のスマートフォンから回答してもらうWEB問診システムを活用することで消毒の工数やコストが削減され、業務の効率化にも繋がります。

2.処方箋情報の入力:AI-OCR技術を用いた処方箋入力補助
紙の処方箋情報をレセコンに手入力する作業を、文字情報をデジタル化するOCR技術を活用して効率化しています。紙の処方箋をスマートフォンのカメラで撮影すると内容がデータ化され、生成されたQRコードをバーコードリーダーで読み込むことで、レセコンへ自動反映されます。

OCR技術を活用した処方箋情報の入力
(左:紙の処方箋情報をカメラで撮影して内容をデータ化している様子 右:生成されたQRコードを読み込んでいる様子)

3.処方薬のピッキング:iPad写真
処方箋のコピーを取り、それを見ながら処方薬のピッキングを行う場合、コピーや紙の処理にかかる工数、印刷をするためのコストがかかります。iPadで処方箋を撮影し、それをもとにピッキングを行うことでコストや業務負担がなくなり、またレセコンへの入力が完結する前にピッキングが開始できるため、時間の削減にも繋がっています。

iPadを活用した処方薬のピッキング

4.監査:スマートフォンアプリ医薬品監査システム
スマートフォンのアプリを活用し、医薬品のバーコードを読み込むことで、レセコンに入力した医薬品との齟齬がないかを確認し、取り違えを防止しています。

スマートフォンアプリの医薬品監査システムを活用した監査業務

5.服薬指導:クラウド防犯カメラ
「薬が足りなかった」「薬が入っていなかった」という問い合わせへの事後検証のため、クラウドの防犯カメラを設置し、投薬カウンターの上から撮影しています。お問い合わせがあった場合は、適正にお渡しできているかを検証できるため、確認などの対応時間が軽減されています。

服薬指導をクラウド防犯カメラで撮影している様子

6.会計:レセコン、POSレジ、キャッシュレス端末、自動釣り銭機の連動
患者ごとの決済データが、レセコンから金銭のやり取りなどの情報をリアルタイムで記録・集計するシステムを完備したPOSレジへ自動で飛びます。それを自動釣り銭機もしくはキャッシュレス端末へ連動させることで、釣り銭ミスや、キャッシュレス端末への金額入力ミスといったエラー回避、レジ締め時の工数削減を実現しています。

レセコン、POSレジ、キャッシュレス端末、自動釣り銭機と連動した会計業務

薬局におけるDXは、利便性を最優先したツール先行にならないよう、現場とコミュニケーションをとりながら日常業務における課題の洗い出しを行い、抱えている課題の解決に繋がるITツールや外部サービスを利用することが肝心だと考えています。また、ツールの導入には業務フローの変化が伴うため、課題に直結する業務を担当しているスタッフにツール活用の推進担当者として周囲に活用方法や成功体験を伝えてもらうなど、現場での定着に向けた仕組みづくりも重要なポイントです。

患者の医療体験向上に向けた取り組み事例

モバイルオーダーやデリバリー、決済方法の多様化など、さまざまな場面で利便性が向上し、より良い顧客体験が生まれている中、薬局は「薬を受け取る場所」というイメージからあまり変化がなく、優れた顧客体験を提供するという観点では遅れをとっていることに課題を感じていました。調剤薬局を薬を提供する場としてだけではなく、より良い医療体験を提供できる場にするため、当社では患者の利便性向上に繋がる取り組みに積極的に取り組んでいます。その中の1つである「オンライン服薬指導」においては、前述の事後検証のためのツールだけではなく、より幅広い患者のニーズにお応えできるよう、服薬指導、決済、薬のお渡しというステップ毎に様々なツールを活用しています。

オンライン服薬指導は、Pharmsのような調剤薬局向けのシステムやビデオ通話機能のある無料サービスなどのツールを採用しており、調剤費・薬剤の支払いは、現金だけでなく、電子決済や銀行振込、代引き支払いなど、複数の決済手段に対応しています。医薬品の配送は、コロナ禍がきっかけとなり、外部委託配送サービスを活用しながらコストと工数の最適化をした上で、当日での配送を実現しています。 

配送サービスを活用した処方薬の当日配達

今まで、オンライン服薬指導の実施にあたっては、ビデオ通話、決済、配送に対して別々のツールを利用する場合は、それぞれの管理画面で運用する必要があるため業務が煩雑になっていましたが、今回、Pharmsが処方薬の当日配達に対応することで一つのシステムでも完結ができるようになったため、全体工数の削減によって患者と向き合う時間の創出に繋がると期待しています。

最後に

今回は薬局DXにおける課題や現状、推進における取組みについて、メディアブリーフィングでお話しした内容から紹介しました。

メドレーは、調剤薬局向けのシステムだけでなく、医療機関向けのシステムを複数提供しており、患者と医療機関の双方がテクノロジーの恩恵を受けることのできるプラットフォームづくりに注力し、利便性のみならず安全性に配慮したサービスの提供を通じて、「患者が医療を使いこなせる未来」の実現を目指していきます。