【レポート】医療プラットフォーム記者レク 〜患者の診療体験を変える医療DXのいまとこれから〜
こんにちは、メドレー広報グループです。
メドレーでは、先日、記者向けに医療プラットフォーム事業についてのレクを実施しました。
今回のレクでは、メドレーのマネジャー陣より、日本の医療の現状や医療DXを取り巻く環境についての解説、メドレーが推進する医療DXなどについて紹介しました。その内容をレポートにしてお届けします。
医療DXを取り巻く環境
日本の医療の現状と諸外国との比較
日本の国民皆保険制度は、保険料を負担することで医療費が軽減できる社会保障システムですが、設計当初の1961年から人口動態、疾病構造、医療提供内容などが大きく変化していくなかで、現在では公費への依存が大きくなっています。また、日本の医療提供量は、ヨーロッパ諸国を中心に日・米を含め38ヶ国の先進国が加盟する国際機関であるOECD(経済協力開発機構)の平均と比較すると、受診回数は約2倍、入院患者の在院日数は約6倍と世界で最も多い一方、医師の数はOECD平均を下回っており、日本の医療は医療従事者の労働量に支えられていると言えます。
医療における質を維持しながら効率化を図るには「医療DX」が重要なキーワードとなりますが、例えば電子カルテの導入率で見ると、日本では2020年時点で50%なのに対し、ノルウェー、イギリスでは2012年時点で95%以上、アメリカでは2017年時点で86%と、諸外国の方が圧倒的に浸透していることがわかります。その結果、日本では、医療の質向上につながる医療情報連携やデータ活用が進まず、医療のデジタル化では遅れをとっているのが実態です。
政府主導で推し進められる日本の医療DX
日本医療のデジタル化は、新型コロナウイルス感染症への対応では「デジタル敗戦」と評されました。こういったこともひとつの契機となり、政府は医療DXを推進すべく、総理をトップとする医療DX推進本部を設置、2023年6月2日に策定された「医療DXの推進に関する工程表」では具体的な政策として以下の5項目が示されました。
また、2024年6月21日に閣議決定された「骨太の方針2024」では、工程表に基づく医療DXの取り組みに対する方針の追加、具体化として、以下の内容が新たに示されました。
次に、医療DXの取り組みの中から3つのテーマに絞って、それぞれの動きを見ていきたいと思います。
1:電子カルテの動き
電子カルテは、2030年に概ね全ての医療機関へ導入することが目標として設定されていますが、電子カルテを導入していない医療機関からは、「利用メリットを感じない」「費用が高い」「紙でのオペレーションに慣れている」という声を聞くこともあります。政府が開発を進めている標準型電子カルテが比較的安価で提供される場合は費用がネックとなっている医療機関にとっては導入に繋がる可能性がある一方、UI・UXや充実した機能、カスタマイズ性などの観点では民間カルテに強みがあるため、官民一体で推進することが重要になるのではないでしょうか。
2:電子処方箋の動き
電子処方箋は、2025年までに概ね全ての医療機関・薬局へ導入することが目標として掲げられていますが、2024年6月末時点での普及率は病院で1.7%、診療所で3.3%、薬局で37.7%という状況です。電子処方箋を導入することで患者の医療データが参照でき、投薬状況や併用禁忌を確認できるメリットがありますが、現状の導入状況ではそれらのメリットを感じにくいという声もあります。それらの声を受けて、政府では、まず薬局での普及を推進し、データの蓄積に伴って医療機関での普及を図る方針です。
3:オンライン診療の動き
新型コロナウイルス感染症の流行前は導入医療機関も少なかったオンライン診療ですが、新型コロナウイル感染症の流行によってその利用価値が改めて見直され、2022年4月の診療報酬改定では対面診療に近い形で診療報酬が引き上げられたこともあり、診療の新たな選択肢として活用されるようになりました。政府としてもオンライン診療をさらに普及していく方針で、特に地域の医療体制を確保する上で非常に有用という評価がなされています。これを受け、オンライン診療・服薬指導の積極的な活用を検討している自治体もあり、メドレーも自治体の実証事業に参加するなど、オンライン診療・服薬指導を活用した地域における医療アクセス向上への支援を行っています。
日本の医療DXは、骨太の方針のもと、今後も総理直下で推進されていくと捉えていますが、メドレーとしても政府方針に則ったシステムの機能実装などを行い、政府目標の達成、ひいては日本の医療DX推進に貢献していく考えです。
医療プラットフォーム事業とクラウド診療支援システム「CLINICS」が実現する医療DX
医療プラットフォーム事業が目指す姿
メドレーは「医療ヘルスケアの未来をつくる」をミッションに掲げ、テクノロジーを活用した事業やプロジェクトを通じて医療ヘルスケア分野の課題を解決し、病院や行政による「持続可能な医療」と、患者や家族にとって「納得できる医療」の実現を目指しています。医療プラットフォーム事業では、医療ヘルスケア業界のデジタル化を推進するプラットフォームを自社で開発し、医療機関・患者双方にとって利便性の高いサービスを提供しています。
クラウド診療支援システム「CLINICS」が実現する医療DX
病院・診療所向けのクラウド診療支援システム「CLINICS」は、電子カルテ、レセコンといった基幹システムに加え、予約・問診・オンライン診療といった周辺業務の効率化を支援するサービスです。以下の特徴と、予約・問診・診察・会計までの診療プロセス全体をワンストップで効率化できることで、利用医療機関数は年々増加しています。
「CLINICS」では、今後も、医療機関のさらなる業務効率化や負担軽減を実現するため、医療機関のニーズや行政の方針に合わせた機能拡充や改善を実行していきます。直近では、医療機関からの要望が多かった「CLINICSオンライン診療」でのオンライン資格確認の機能提供を行なったほか、「CLINICSカルテ」における電子処方箋に対応した機能実装を予定しています。さらに、患者の医療体験向上を目指してUbe Eats やAmazonファーマシーとの連携を開始したように、今後もさまざま業界、業種の企業・団体などと連携を図りながら、市場の拡大にも取り組んでいきます。
CLINICSアプリが目指す患者の医療体験向上
患者の健康を支える総合医療アプリ「CLINICS」
患者向けに提供している総合医療アプリ「CLINICS」は、自宅や職場から医師との診察、薬剤師との服薬指導を受けることができ、キャッシュレス決済や処方薬の事前送信、処方薬の当日配送により、病院・薬局での待ち時間を短縮できるサービスです。患者の通院や健康を支えるアプリとして、電子お薬手帳や、気になる症状から関連する病気を調べて受診に最適な診療科の病院・診療所を検索できる「症状チェッカー」など、健康管理に役立つ機能を提供しています。内科や小児科、皮膚科などのさまざまな診療科で活用され、アプリDL数は新型コロナウイルス感染症の流行前後で約24倍に増加するなど、多くの方にご利用いただいています。
患者の医療体験向上への取り組み
患者体験の向上のために、直近で行った「CLINICS」アプリの機能アップデート3点についてご紹介します。
1.「Amazonファーマシー」とのサービス連携
「Amazonファーマシー」は、Amazonショッピングアプリ上のアカウントから「Amazonファーマシー」に登録されている薬局で薬剤師によるオンライン服薬指導を受けたのちに、処方薬を自宅など指定の住所への配送、または、薬局の店舗での受け取りができるサービスです。電子処方箋に対応している医療機関で診療を受けることで「Amazonファーマシー」を利用できますが、「CLINICS」との連携により、「Amazonファーマシー」の利用者は「CLINICS」アプリを通じてオンライン診療を受けることで「Amazonファーマシー」を利用することも可能となりました。
※参考リリース:メドレー、オンライン診療で「Amazonファーマシー」とサービス連携を開始
2.処方薬の当日配送
Uber Eats との連携により、オンライン診療を受けてから約30分で薬が自宅などに届く処方薬の当日配達を実現しました。体調不良などで薬局に行けないというニーズに対し、自宅にいながら早く薬を受け取ることができます。当日配達に対応する薬局の件数は機能提供開始以降、2ヶ月でおよそ倍以上の3,600店舗に増えています。
※参考リリース:メドレー、患者向け総合医療アプリ「CLINICS」で処方薬の当日配達を開始
3.同時予約+決済機能の提供
「CLINICS」アプリでオンライン診療を予約する際に、事前に服薬指導を受ける薬局を指定できる機能の提供を開始しました。これまでは、オンライン診療を受けた後、医療機関から発行された処方箋を患者が薬局に送信していましたが、同時予約機能によって、医療機関から指定した薬局に情報が共有されて処方箋のやりとりが医薬間で完結するため、患者の薬局への処方箋送信の手間がなくなります。また、「CLINICS」アプリで決済情報を事前に登録しておくことで、決済もオンラインで完結することができます。
「CLINICS」アプリは、今後もシームレスな医療体験を目指して改善を行うとともに、現状介在できていない領域にも徐々に接点を広げることで、生活者の健康を支えるためのアプリとして進化していきます。
最後に
今回は医療DXを取り巻く環境や、メドレーが推進する医療DXについて、記者レクでお話しした内容から紹介しました。
メドレーは今後も、医療機関と患者の双方にとってテクノロジーの恩恵を受けることのできるプラットフォームづくりに注力し、「持続可能な医療」と「納得できる医療」の実現を目指していきます。