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ロゴができるまで 〜ジョブメドレーのロゴリニューアルの裏側〜

はじめまして。株式会社メドレーの人材プラットフォーム(以下『人材PF』)でデザインを担当している小山と申します。

この度、4月末に医療介護の求人サイト「ジョブメドレー」のロゴをリニューアルしました。ジョブメドレーの開始から初めてのメジャーアップデートです。今回はそのあらましや苦悩について、時系列にご紹介いたします。10年以上続いたロゴのリニューアル、しかも創業者がつくったサービスのロゴを変えるのは、難易度が高いプロジェクトでしたが、なんとか形になりました。どなたかの参考になれば。

メドレーとジョブメドレー

左:ジョブメドレー  右:ジョブメドレー アカデミー

ジョブメドレーはメドレーの人材PFが管掌し運営する医療従事者向けの求人サービスです。サービスを通じて働く機会の最適化を実現し、医療福祉の大きな課題である人材不足解消を目的に運営しています。就業していない有資格者の復職や地域偏在の解消などに取り組み、それぞれにあった転職・就職・復職を支援してきたことで登録求職者数は110万人を超え、25万以上の事業所※に利用されるサービスとなりました。また、2021年2月からはオンライン動画研修サービス「ジョブメドレーアカデミー(以下『アカデミー』)」のグループ化によって、入社後の人材育成や定着を支援するサービス展開も開始し、約13年間で大きな成長と前向きな変化を遂げることができました。(※2021年12月末時点)

ロゴを変える3つの背景

ジョブメドレーは今後さらに大きな変化を予定しています。そのための準備としてリニューアルをする必要があります。その背景は3つ。

1つ目はサービス展開。アカデミーなど求人以外のサービスを開始し、さらに今後も他のサービス展開も予定しており、サービス運営において更に広い視野や複数の視点が求められます。対応できるだけの柔軟性がロゴに必要でした。

2つ目はグローバル展開。今後ジョブメドレー は人材不足解消のために取り組んできた知見を海外に向けて展開します。そのため様々な言語や文化に開かれたサービス設計が求められます。国内に向けたロゴをはじめとした様々なクリエイティブには、海外のそれにも対応できる考え方が必要となりました。

3つ目はマスマーケの拡大。2018年から続けているテレビCMの品質向上と認知拡大のため、さらに伝わりやすい表現に変えなくてはいけません。旧ロゴは「JobMedley」と欧文表記のため、瞬間で伝えるクリエイティブとしてハードルが高く、改善が必要だったためです。出稿量ではなく表現で対応できることがあるなら取り組むべきという判断です。

これらの三つの背景から、ロゴのリニューアルに取り組みました。

ロゴを変える体制と進行

プロジェクト体制は、プロジェクトリードの私、プロデューサーの人材PFの管掌取締役の石崎とジョブメドレーの事業部長の横尾の3人体制で進行しました。そして、サービス開始からジョブメドレーを支えてきた初期メンバーがアドバイザーとして参加しました。デザインはグラフィックや映像制作において活躍されているグルーヴィジョンズさんにアサインしていただきました。

まずプロジェクト開始前に私と石崎で事業展望を整理し、今後の展開から方向性を定めました。それを軸にグルーヴィジョンズさんにデザインを依頼し、アイデアのリファインを重ね、ジョブメドレーの歴史を知る初期メンバーに最終デザイン案の意見を収集。その意見をもとに石崎、横尾、小山が意思決定。といった流れで進めました。

これからのミッション、スタンス、コンセプト

これまで求人サービスとしてジョブメドレーを運営してきましたが、今後はアカデミーをはじめとした様々なサービスを展開し、また国を跨いだ展開を行います。医療介護業界の人材不足解消というミッションのもと、働き機会の最適化だけでなく、その後も切れ目のない体験に設計することで、定着率を高め離職をひとつでも減らし、課題解決につなげます。

切れ目のない体験

旧ロゴはマッチングをメタファーに握手というモチーフで設計されていましたが、その先も切れ目なく続くサービスであることを期待させるロゴに作り替えるというのが初期のテーマです。そこからグルーヴィジョンズさんに制作いただきました。

初期デザイン

で、見事に暗礁に乗り上げました。
この規模のプロジェクトはうまくいかないのが常です。いつか来るだろうと想定していました。むしろ想定より早かったので逆に良かったと思ったくらいです。いたって安定した船出です。と、自分を落ち着かせました。話を戻します。

グルーヴィジョンズさんのデザインはとても素晴らしかったのですが、決められなかった。私たち3人に決められるだけの考えが足りなかったのです。どのアイデアもジョブメドレーにあっているようであっていない。デザインには「切れ目のない」というキーワードからジョブメドレーと事業所さまや求職者さまとの密接な関係やそうした繋がりの中で人を大事にするという想いをシンボル化したものが多数ありました。また初期のテーマに合わせつつ、違う視点も盛り込んだ考え方を端的に表現したデザインがあり、網羅的にご提案いただきました。ですが…..何かが違うのです。

働く機会のその先もサポートしていくということは、働く人をサポートすること。なら「人」そのものがデザインのテーマになるだろうと考えていたものの、それは世の中の求人サービスすべてに当てはまってしまいます。ジョブメドレーが表現しなくてはいけない根拠や理由まで思考しきる必要がありました。「切れ目なく続くサービスとはどういうことなのか」「そこから利用者さまにどういう期待を寄せていただくのか」そして「私たちはどういう存在になりたいのか」それらを一つひとつ深堀をしていきました。根源的な問いに差し掛かるときは、良いものができるきっかけだと思っていたので、希望をもって思考を前に進めました。

シンボルの可能性を探索

まず「切れ目のない」はどういう状態なのか、考えてみることにしました。私見ですが、イメージしたのは一本道。求人サービスから始まる複数のサービスが直列で並び、それをなぞりながらシームレスに各サービスを体験していく。それが切れ目のない状態なのかと。

サービスとシンボルマークの概念検討

直感でしたが、そのサービス体験を一本道と例えるなら、切れ目はあってもいいと思いました。理想を言えば、私たちが用意するであろう切れ目がない一本道をなぞってほしい。ただ、一本道を辿ることが正解といえるほど働くことは単純ではありません。人やモノやカネやコト、慣習や法令、時期や時世が複雑に絡み合った中でお仕事と向き合っています。考えが変わり横道に外れたくなったり、じっくり考えるために腰を下ろすこともあると思います。ですから、重要なのは切れても違う道や違う見方を提案できればよいのでは?と幅を広げてみました。それらを含めて「切れ目のない」と指すのかもしれませんが、ロゴデザインに込めるテーマに「切れ目のない」は弱く感じました。それなら、利用者さまを中心に道が放射状に伸びたり、歩みとともに道が有機的に枝分かれしたり、切れ目があったとしても道を切り替えられるようにサービスがフォローする形が良いのでは?と考えました。もっと言うと道ですらないかもしれないし、もっと大きな何かなのでは?と。

関係性を検証

旧ロゴの概念

次に人と人をつなぐ存在のジョブメドレーという旧ロゴに込められている関係性も見直しました。事業所さまと求職者さまをつなぐ運営にアカデミーは含まれないためです。アカデミーは利用者さまが提供する医療もしくは介護サービスの向上を目指しているため、アカデミーの対象はそのサービス提供者である利用者さまお一人です。今後のサービス展開において、何かと何かを「つなぐ」という図式は変わらないにしてもアカデミーのようにこれまでと異なる見方や関係値が行き交うため、捉え方や要素が変わっていくことがジョブメドレー には求められます。人と人だけではなく、人ひとり、もしくは人と組織、あるいは組織、または組織と業界、さらには業界全体もありえます。より柔軟に変化し網羅できる関係への思考が必要です。

サービスの対象者の概念

そこまで飛躍させる必要はあるの?という疑問が沸きました。が、人材不足は事業所さまと求職者さまが運悪くつながらなかったというだけで起こる問題ではないはずです。ジョブメドレーは利用者さまともっと広くて深い関係性に向かうべきだと考えました。(「関係性」という範疇ではないかもしれないという観点も含めて)

あるべき姿を模索

さらに、サービスの軸も再検討しました。ジョブメドレーの軸は医療ヘルスケア領域の人材不足解消のため働く機会を最適化することにありましたが、今後はそれだけではありません。アカデミーは、働く技術の向上をサポートし医療介護従事者さまの提供サービスを改善するなど、求職者さまが得た働く機会を次の段階につなげるものです。この現状から将来のサービス展開を見据えたとき、働く機会の最適化に軸を置くのではなく、多面的で全体的なもの(究極的には「働くこと」そのもの)に志向すべきと考えました。展開されるサービスのゴールは人材不足解消ではなく、さらにその先となります。そもそも人材不足解消は、医療サービスを適切に受けられる環境にすることで患者やその家族が納得できる意思決定を行えるようにするためのものです。本来の目的に立ち返り次の段階のジョブメドレーのあるべき姿は、納得できる医療の実現のため「働くこと」そのものを多面的で全体的にサポートするということなのでは?と考えました。

メドレーのミッション、ジョブメドレーはここに一歩踏み込む

コンセプトに集約

以上の考慮すべき観点や思考からサービスのミッション、取り組み領域、そしてコンセプトを整理しました。以下がそれです。

ミッション

取り組み領域

モチーフ

これからのジョブメドレーは、求人サイトだけでなく「納得できる医療の実現」にもう一歩踏み込み、医療福祉を提供する側を全面的に支えるため「働くこと」そのものをサポートします。

これまでジョブメドレーは、求職者さまと事業所さまが納得のいく選択ができるよう間に立ち、双方をつなぐことを意識してきました。これからは「働くこと」そのものをサポートしていくため、間に立つだけではありません。

一人ひとり、チーム、組織、そして業界全体にわたり、様々な形でどこまでもつながり、密接に関わり、そして包み込む。この前提で、グルーヴィジョンズさんに再度デザインを依頼しました。

以前のような迷いはなく、3人がそれぞれの理由で良いと思うデザインを選べた気がします。私の場合は「地面/地盤」をもとにしたアイデア。ミッションやこれからのサービス展開と結びつきが強く、表現に力強さがあります。人生で多くの時間を費やすであろう自分たちのお仕事をサポートしてくれるなら、そのサービスは頼ってもいいと思える存在であり、そこはかとない力強さが求められるのではないでしょうか。また社会インフラのひとつである医療介護業界を支えるあるべき姿として、またその社会インフラに加わる新たな概念を目指し、その想いを憑依できるアイデアに「地面/地盤」は感じました。

最終デザイン案のパターン

案を絞り込みつつ、ロゴタイプのパターン、シンボルマークの形状のパターンとして洗い出しました。ここで最終ステップとして、メドレーおよびジョブメドレーを創業期から支えてきた、社員番号1桁台の初期メンバーから意見を集めました。

意見の一部

ジョブメドレーがいま存在できているのは、このみなさんの10年以上/近くの積み上げがあるからこそです。また、彼女ら/彼らに代表されるジョブメドレーに関わる多くのスタッフが、これまで以上にサービスに愛着を持ってもらうことも、ロゴリニューアル成功のために欠かせない事項であると考えているからです。

私が1on1形式でデザインの意図や経緯を説明し、その上でどちらのアイデアが良いか選んでもらいました。初期メンバーは職種や役職もバラバラですが、フラットに意見を求めるようにしました。その中には創業者であり現在のロゴを決定した瀧口も含まれます。瀧口も「自分が意見を述べることで過度に誘導することは避けたい。日々事業に向き合っているチームで決めてほしい」という意向がありました。

みなさんから投票形式でアイデアを選出し、それぞれの意見をもとに3人で意思決定しています。以下がデザインの決定案です。

デザイン決定

ジョブメドレーが、一人ひとり・チーム・組織そして業界全体を支える医療福祉業界の新しい「地盤」となり、「働くこと」を全面的、多角的にサポートすることを表現しています。また、誰一人欠けることがなくサポートしていく意思表明として、碗形のように地盤を示すカーブを上方に向けています。

ここでロゴデザインの第1フェーズが完了しました。そうです。まだ終わりではありません。第2フェーズのムービー制作に入ります。

ムービー制作

冒頭で触れた3つの背景のうち「グローバル展開」と「マスマーケの対応」がムービーを作る動機です。ジョブメドレーはビジュアルデザインにおいて端的に表現しにくい要素が多数あります。それは文字情報です。ジョブメドレーは求人情報がそのコアになります。誤解を招くような表現はサービス体験を著しく崩すため、齟齬を生まない具体的な説明が求められます。それをそのままで設計すると文字情報であふれ、ビジュアルコミュニケーションの難易度が格段に上がります。しかし、デザインでできる限りフォローしつつ優秀なライターが簡潔に表現し、なんとか伝えることができているため、国内展開のサービスは問題ありません。

ですが一瞬のうちに訴求を伝えなくてはいけないテレビCMや、言語表現が文化的背景に左右される海外展開は、同じ方法は取りづらいのが現状としてあります。前職では企業のグローバルサイトのデザインに携わっていたので、そのあたりは身に染みています。基本的には海外は英語表現が中心ですが、サイト訪問者には英語に明るくない方もいることから、UIデザインではアイコンやピクトグラムなど非言語体系でのコミュニケーションも意識せざるをえませんでした。そういう経験から言語に頼らない表現も必要になってくるのでは?と感じました。

誤解を恐れずに言うとロゴは抽象度が最も高く意図が伝わりにくい表現です。そのロゴにおいても意図が伝わり、瞬間で伝わる表現を模索することで今後のビジュアルコミュニケーションに役立つのでは?と考えたのがムービーを作る背景にあります。また、社内のメンバーに対してもロゴの意図を間接的にでも伝えたいというのも考えていました。そもそもロゴのリニューアルに立ち会うこと自体が極めて少ないので、それを受け入れる準備が整っていません。どうしても最初は強い違和感があるだろうと思い、その違和感を少しでも減らせられるならという想いもありました。

今回お願いしたムービーは、ロゴのビフォーアフターをコンセプトに載せて表現したムービーとテレビCMの冒頭にサービス名を伝えるムービーの二つです。文字情報を使わずに伝わるように注力しました。

表現の軸に据えたものは、デザインモチーフである「地盤」。旧ロゴから新ロゴに移り変わりをシームレスに伝えるべく、細部までこだわっていただき作り上げていただきました。テレビCMのムービーも、デザインモチーフをベースにモーションを作り上げ、これまでテレビCMで展開したサウンドロゴをリファインしたものになります。

デザインワークとコンセプトメイキングの振り返り

ロゴのリニューアルの流れと取り組んだものについてお話ししましたが、ここからはデザインワークとコンセプトメインキングのそれぞれのポイントや振り返りについてお話いたします。まずデザインワークはグルーヴィジョンズさんからコメントをいただいているのでご紹介いたします。

デザインワーク

今回のロゴのリニューアルにあたって私たちに与えられた課題は、信頼感や親しみやすさなど、これまで築かれてきたジョブメドレーのキャラクターは守りながら、これからの事業展開を見据えてプラスしていきたいイメージやコンセプトを新しいロゴで表現することでした。

イメージやコンセプトという見えないものを形にしていく作業は容易ではありません。デザイン担当の小山さんにヒアリングを重ね、 得られたヒントを手掛かりに可能性を探る……そんな、楽しくも苦しい作業が続きました。ロゴデザインは数多く手がけてきましたが、ご提案した案の総数はこれまででもっとも多かったかもしれません。

しかし、ジョブメドレーのみなさんの ブランディングに対する強い想いと練り上げられたディレクションをいただくことで、私たちデザイナーはのびのびと、新しいアイデアをぶつけることに専念できたように思います。 これもまた今まであまり経験したことのない新鮮な感覚でした。 

こうして数多くのアイデアから選ばれたロゴが、これから始まる新しい事業に寄り添い、「だれからも愛される人気者のまま多様な変化をうけとめてみんなを支える縁の下の力持ち」 そんなキャラクターに育ってくれることを願っています。

コンセプトメイキング

続いて私、小山からお話しします。
コンセプトメイキングでは、これからのサービスの展望をサービスに関わる人たちに少しでも知っていただけるように、ロゴに込める意図をできるだけシンプルにすることに注力しました。もちろんどんな意図にするのか?というのも重要なテーマですが、それと同じくらいに捉えて作り上げていきました。意図を端的に表現できたなら、誰でもイメージしやすく、ブレのないサービスになると考えたからです。

シンプルにするために、サービスの歴史や展望を一つひとつ集めては、意図の簡潔さとデザインの実現性と照らし合わせつつ目的に遡上して検証を重ねてまいりました。想像を超えた途方もない道のりで、非常に難易度が高い取り組みだった気がします。
おかげさまで、「地盤」というモチーフにたどり着き、壮大ではありつつも身近で誰しもが想像できるサイズに集約できたように思います。

スタートラインに立つ

リニューアルのあらましは以上となります。ロゴのデザインは終わりましたが、これからが始まりです。ロゴに込めたミッションの実現に本来の目的があるからです。

ジョブメドレーには「ピッタリの仕事、みつかる。」というメッセージがあります。転職に不安を感じる方に、納得の意思決定ができるように、まずは気持ちを和らげていただきたいという想いと期待を込めてこのメッセージがあります。ジョブメドレーのすべての取り組みはこのメッセージを実現するためにあります。おかげさまで、多くの方の支援ができましたが、医療介護業界はそこに携わる人をまだまだ必要としているのが実情です。
一人でも多くの方の納得のいく意思決定ができるように、働く機会をサポートするだけではなく、その先の「働くこと」そのものをサポートすることが次の挑戦となります。医療介護業界の新しい地盤として、あって当たり前の存在を目指し、ジョブメドレーでみつかったピッタリの仕事を「やっぱりピッタリだった、この仕事」と言っていただけるように取り組んでまいります。
もし一緒に取り組んでいただける方、この記事下の募集をクリックしていただけることをお待ちしています。

あとMeetyでカジュアルにお話しもできますので、ご興味のある方はこちら

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。そしてプロジェクトにご協力いただいた皆様ありがとうございました。今後ともジョブメドレーをよろしくお願いいたします。


プロジェクトメンバー
Producer  : 石崎 洋輔 (Medley,inc.) /  横尾 敏弘  (Medley,inc.)
Project Lead & Creative Direction : 小山 敬介(Medley,inc.)
Art Direction & Design & Motion Graphics : グルーヴィジョンズ
Composer & Music Producer : 小野 雄紀(WONDROUS)
Voice Actor : Bibi / wokuyama(TRY TRY NIICHE)
Advisor : 瀧口 / 橋本 / 瀬尾 / 田村 / 桐澤 / 中島 (Medley,inc.)