セカンドオピニオンのオンライン受診のすすめ
はじめまして。メドレーの梶山です。
私は、メドレーの事業連携推進室という部署で、病院でのオンライン診療の導入を進めたり、自治体・医会との実証実験などをお手伝いしたりといった業務を担当しています。もともとは製薬会社で働いていたので、社会人になってからずっと医療機関と接する仕事をしています。
今日は、病院でのオンライン診療の活用方法のひとつである「オンライン・セカンドオピニオン」についてご紹介したいと思います。
がん治療におけるセカンドオピニオンの実施率はわずか 6.6%
セカンドオピニオンとは、教科書的にいうと「治療の進行状況、次の段階の治療選択などについて、現在診療を受けている担当医とは別の医療機関の医師に『第 2 の意見』を求めること」です。
この仕組みは、「患者さんが納得して治療を受ける」ためにとても大切な仕組みです。
複数の医師に話を聞くの?と違和感を感じるかもしれませんが、日常生活に置き換えて考えれば、悩んだ時や大きな決断をするときに、家族や友人など複数の人に相談することは珍しくありませんよね。
病気の治療に前向きに取り組むためには、たくさんの選択肢の中から自分の治療方針についてきちんと理解し疑問点を払拭した上で、納得して治療を選択することが重要です。そのためにセカンドオピニオンが重要な役割を果たすのですが、実は普及がなかなか進んでいません。
ある調査によると、がん治療におけるセカンドオピニオンの実施率は、全国平均で 6.6%しかなく、最も高い東京都で 18.7%、最も低い県では 1.1%で、実施率が 1%台だった都道府県は 14 もあると報告されています。
セカンドオピニオン受診における複数のハードル
なぜこんなに実施率が少ないのでしょうか。医療機関やセカンドオピニオンを提供されているサービス会社の方などとお話すると、以下のようなハードルを多くの方が感じているようです。
<ハードル①> どこに、どうやって受診すればよいかわからない
セカンドオピニオンが利用される主なケースとして、がんや大きな手術などがあげられます(もちろん、上記以外でも様々な疾患で実施されています。)。
すべての病院がすべての疾患のセカンドオピニオンを実施しているわけではありませんし、一口に「がんのセカンドオピニオン」といっても「大腸がんに強い」とか「手術に強い」「遺伝子(ゲノム)医療に強い」など、病院によって様々な特徴があります。
自分の住んでいる地域のどの病院で受けられるのか、どの病院がお勧めなのか、どうやって受診すればよいのか等を自分で調べて受診するのは、とても労力がかかります。
「セカンドオピニオンを受けたくても、具体的な病院の探し方や実際の受け方が分からない」というのが、多くの方の最初のハードルなのです。
<ハードル②> 主治医に言い出しにくい
お世話になっている主治医の医師に「セカンドオピニオンを受けてみたい」と言い出せないというのも、よくある受診しない理由のひとつです。
詳しい手順は後ほど説明しますが、セカンドオピニオンを受けるには、主治医にこれまでの治療の経過や検査結果などを記載した「診療情報提供書」という書類をだしてもらい、セカンドオピニオン受診先に提出することが必要です。
そのお願いを主治医にすることで、治療方針に不満があると思われてしまうのではないか、嫌な顔をされるのではないかという不安を感じたり、忙しそうでお願いするタイミングがないといった理由から、主治医に言い出すことができない患者さんはとても多いようです。
よくセカンドオピニオンは「主治医に不満があるときに行う」「病院や担当医を変える前提である」だと誤解されていることがありますが、そうではありません。
セカンドオピニオンは、本人もしくは家族の病気や治療方針について、主治医以外の人の話も聞いて、より深く理解し納得するためのものであり、主治医に何か不満があるから行うというものではないのです。
セカンドオピニオンを受けた結果、主治医と同じ治療方針が提示され、もともとの病院で治療を継続することも多くあります。
「同じだったから無駄」というわけではなく、同じ治療方針であっても別の医師から別の視点で説明を受けることで理解が深まり、結果として治療に前向きに取り組めるようになることは、とても大切なことです。
他の医師の意見を聞いた上で、再び主治医と一緒に治療をしていくことが、セカンドオピニオンの目的のひとつでもあります。
もちろん、セカンドオピニオンを聞いた結果として他の病院に移ることもありますが、それは患者さんの当然の権利であり、元々の主治医に対して感謝をしつつも遠慮する必要はありません。
不安やもやもやを抱えたまま治療を続けることは、患者さんにとっても主治医にとっても良いことではありませんし、病状によってはなるべく早く治療方針を決めないとならない場合もあります。
最近では病院のホームページにも「他院のセカンドオピニオンを受けたい方へ」といった案内があることがほとんどなので、遠慮せず「セカンドオピニオンを受けたいのですが」と伝えてみてください。
ちなみに、アメリカでは「セカンドオピニオンを受けますか?」と主治医から尋ねることが一般的になっているそうです。私もこれまでさまざまな大学病院や総合病院の医師と話してきましたが、患者さんのことを考えている医師ほどセカンドオピニオンを自分の患者さんに勧めている印象があります。
<ハードル③> お金と時間がかかる
患者さんは、高齢だったり入院中だったり、病気で体力や免疫力が落ちていたりするので、セカンドオピニオンを受けるために遠くの病院まで移動すること自体が大変な場合があります。また家族にとっても、会社を休んで付き添わなければならないなど、負担がかかることがあります。
また、自身の病気に関する専門医が近隣にいない場合には、遠方の病院までいくための新幹線や飛行機、宿泊代などもかかってしまい、費用負担も大きくなります。
このように、セカンドオピニオンは体力的、費用的、時間的に負担がかかる場合があり、この負担が、受診をためらう理由になってしまっています。
オンラインでセカンドオピニオンをもっと身近に
ここまで紹介したように、セカンドオピニオンに関心がありながらも受診に至らない背景には様々なハードルがあります。これらの課題解決のひとつの方法として、オンライン・セカンドオピニオンはとても役立っています。
<メリット①> お金や時間の負担を減らすことができる
前述のとおり、セカンドオピニオンでは移動の費用、時間、家族の予定調整など、様々な負担がかかりますが、オンライン・セカンドオピニオンであれば自宅や入院中の病院にいながら、遠くの病院の医師であっても相談をすることができます。
自分が気になっている治療を専門とする病院がすごく遠くにあったり、専門性が高くて日本で数施設しか病院がないような場合であっても、いま住んでいる場所から気軽に意見を聞くことができるようになりました。
例えば、静岡県立こども病院では、CLINICS オンライン診療を使って小児の疾患のオンライン・セカンドオピニオンを実施していますが、北は北海道、南は鹿児島まで日本全国の患者さんがオンラインで相談を受けています。
■静岡県立こども病院の事例
<メリット②> リラックスした状況で話ができる
患者さんにとっても付き添いの家族にとっても、初めての病院に行き、初めての医師と話すのは緊張するものです。「偉い医師、有名な医師」と思うと余計かもしれません。
色々と質問したいことがあるのに、緊張してしまったり「医師が忙しそうだったから」と遠慮してしまって結局十分に聞くことができなかった、という話もよく聞きますが、オンラインであれば自宅などいつもの環境で話を聞くことができるので、リラックスして話をすることができます。
また、コロナ禍で、診察室で医師も患者もマスクをすることが当たり前になってしまった今のような状況で、「対面よりもオンラインのほうがマスクなしで、きちんとお互いの顔をみながらお話ができるので良い」という声を、医師や患者さんの双方からよく聞くようになりました。
最近では、移動が大変な患者さんはオンラインで、対面で医師の話を聞きたい家族は対面で、といったように、オンラインと対面を合わせたハイブリッド式のセカンドオピニオンを実施している病院もあります。
■藤田医科大学の事例
実際にオンライン・セカンドオピニオンを利用するには
オンライン・セカンドオピニオンを導入する病院はここ数年で増えており、申し込み方法や使用するツールも様々ですが、ここではメドレーのサービスである CLINICS を使ったオンライン・セカンドオピニオンの受診の流れを解説します。
受診までの主な流れは以下です。
①病院を探す
まずはオンライン・セカンドオピニオンを受診できる病院を探します。
オンラインで受診できる病院のほとんどは、ホームページに受診方法や対応している診療科が掲載されているので、気になる病院がある場合にはまずその病院のホームページを見てみましょう。
また、CLINICS では、オンライン・セカンドオピニオンを実施している医療機関が全国で 200 以上あり、エリアや診療科などから受診先を探すことができます。
→CLINICS でオンライン・セカンドオピニオンの受診先を検索してみる
てんかんや心臓血管外科などの一部の領域に限っては、CLINICS オンラインセカンドオピニオンというサイト※でオンライン・セカンドオピニオンを受けられる大病院を紹介しているので、ぜひのぞいてみてください。
※(2023.4.4追記)本サイトは2023.3月末をもって終了しました。セカンドオピニオン実施医療機関はCLINICSから検索可能です。
②予約をする
受診したい病院が決まったら予約をします。
多くの病院では対面の場合と同じ予約方法で対応しているため、FAX や郵送で受診申し込みを受け付けているところがほとんどです。
一般的に、申し込み申請を受け取ってから病院内で日程調整がなされ、数日以内に病院から連絡がきて受診日が確定します。
受診日が確定したら、CLINICS のアカウントを作ります。
アカウント作成ができたら、申し込んでいる病院のページから指定された日時を選択して予約します。
また、詳しくは次の項目以降で説明しますが、申し込みの時に紹介状を必要とする病院もあるので、自分が受診したい病院の予約方法をホームページなどで確認しましょう。
③主治医に紹介状を作成してもらう
セカンドオピニオンを受けるためには、主治医に紹介状や診療情報提供書という資料を作成してもらう必要があります。
これは患者さんの検査データや画像など、これまでの治療の経過を記録したもので、セカンドオピニオンを行う医師は、これらの資料を元に患者さんの話を聞いて、自分の考えを伝えます。
紹介状には宛先が必要なので、セカンドオピニオンを受診したい病院が決まったら「○○病院でセカンドオピニオンを受けたいので紹介状の作成をお願いします」と主治医に伝えましょう。
④受診先に紹介状を送る
主治医に資料を作成してもらったら、セカンドオピニオンの受診先へ郵送します。
セカンドオピニオンを受ける病院によって、予約の時点で資料を一緒に送る必要がある病院と、予約が確定してから受診日までに送ればよいという病院があります。
また、患者自身で郵送する場合もあれば、主治医からの郵送のみを受け付ける場合もあるので、予めホームページなどで調べておくようにしましょう。
⑤受診する
受診日が決まり、診療情報提供書類を送ったら、当日は CLINICS から受診するだけです。
パソコンやスマートフォンで予約時間より少し早めにログインして待機しておきましょう。
医師の診察の都合上、時間ぴったりに呼び出しが来ないこともありますが、医療機関から連絡があるまで待ってみてください。
また、当日スムーズに受診できるよう、電波環境は問題ないか、音声は聞こえるか、映像は映るかなどを事前に確認しておくと、受診中のトラブルを防ぐことができます。
セカンドオピニオンは時間によって診察料が決まっていますので、「緊張して上手く話せず時間がなくなってしまった」ということがないように、事前に質問したいことをメモなどにまとめておくのもお勧めです。
受診後は、セカンドオピニオンをした医師から主治医に対して「返書」という説明内容について書いてあるお手紙が送られます。それを受けて、今後の治療について改めて主治医と一緒に方針を決めていくことになります。
セカンドオピニオンは患者さんにも医師にもメリットがある
繰り返しになりますが、セカンドオピ二オンで治療への理解を深めることは患者さんにとっても主治医にとっても、大変重要です。
CLINICS でセカンドオピニオンをしている、てんかん専門医の医師とお話しする機会があった時、「オンラインによって、セカンドオピニオンのハードルが下がることがとても大切だ」と話されていたのがとても印象的でした。
オンラインが適しているのは、単に遠くに住んでいる患者さんだけではありません。その医師のところには「すぐ近くに住んでいるけれど、別の疾患によって人工呼吸器で寝たきりのため動けない」という患者さんの家族からの申し込みもあったそうです。
パソコンの画面を通じて患者さんの様子を見せてもらい、家族から病状について話を聞き、ご家族は今の治療方針への不安を解消できた、という話をしてくれました。
■東北大学インタビュー
メドレーでは、2017 年からオンライン・セカンドオピニオン普及のための活動をしてきました。最初は数施設しかないところから始まり、現在は全国で 200 以上の医療機関が CLINICS を使ってセカンドオピニオンを実施してくれるまでになりました。
もちろん、CLINICS 以外にも zoom などのツールを使ってオンライン・セカンドオピニオンをしている病院もあります。最近では、クレジットカードの付帯サービスや生命保険、会社の福利厚生などでオンライン・セカンドオピニオンが受けられることもあるので、確認してみるのもよいかもしれません。
メドレーでも、医療相談やセカンドオピニオンの紹介サービスを提供しているティーペック株式会社と連携して、オンライン・セカンドオピニオンを提供する取り組みをしています。
最後になりますが、メドレーでは「納得できる医療」をミッションに掲げて活動をしている会社です。
病院が遠いという理由だけでなく、仕事が忙しい、費用がかけられない等、人によって事情は様々ですが、そういったことを理由に不安を抱えたまま治療を続けたり、後から「やっぱり聞いておけばよかった」と後悔することはとても勿体ないことです。
オンライン・セカンドオピニオンが普及することで、セカンドオピニオンがもっと身近になり、今以上に納得して治療を受けることができる世の中になってほしいと思います。