教官から指導を放置されたら
ある意味チャンスです!邪魔が入る前に正しく研究を導いてくれるメンター(研究指導者)を見つけましょう。そして、教官があなたに興味を失っている間に、研究を進めて結果を出してしまいましょう。
メンターの見つけかた
口コミ
他の学生(他の研究室でもよい)にどのような指導を受けているか聞いて、ちゃんと指導をしてくれる教官を見つけましょう。まともな指導者かどうか判断するポイントは、以下のような点です。
研究プロジェクトの意義を説明してくれる
実験操作の意味を解説してくれる
実験指導を誰かに丸投げしない
プランB(保険の研究プロジェクト)がある
定期的にミーティングの時間をとってくれる
忙しすぎない
論文
同じ部局で、論文を活発に出している研究室を探しましょう。論文が出ているからといって、まともな指導がされているとも限りませんが、学生が放置はされていないはずです。放置された学生は、論文を出すことはできないからです。
避けるべきメンター
上級生
どの研究室にも、必ず一定数は教えたがりの先輩がいます。一見、面倒見のよい親切な学生の様に見えますが、実はトラブルメーカーであることがあります。
一つの理由は、まだ博士号をとっていない学生だということです。「大学院修士・博士課程は自動車学校と同じであるべきだ」のnote記事でも解説しましたが、自動車免許と同じく博士号は研究のライセンスです。それは、(建前上は)自分自身で、問題を発見し、解決方法を見出し、科学的価値を創造し、論文として発表する能力を持つことを示しています。よって、博士号を持っていない学生は、上級生といえどもメンターになり得ません。自動車の運転を、自動車免許を持っていない人からは習いませんよね?
もう一つの理由は、自身の研究が順調であるならば、やらなければならないことが山積みであり、他人を構っている暇などないからです。よかれと思って下級生に干渉したがる上級生は、たいていは隠れた動機があります。詳しくは「あなたのためは誰のため?」のnote記事を参照ください。自分の取り巻きを作りたいか、自分の実験を手伝ってくれる(押し付けられる)手下が欲しいか、自分の名前を論文著者に載せたいか、それら全てかです。
ポスドク
では、博士号を持っているポスドクはどうでしょうか?こちらは上級生の場合とは逆に、ポスドクのためにも、学生側がメンターになって欲しいと助けを求めてはいけません。
理由は、ポスドクは教官(スタッフ)ではないからです。ポスドクは、自身が未だ研究者としてのトレーニング途中ということもあり、なによりも自分の研究を最優先に、論文に向けて実験に集中すべきです。上級生の場合と同じく、自身の研究が順調であるならば学生を指導している時間などありません。自身の研究が順調でないのならば、なおのことです。多くの(優秀な)指導者は、研究教育指導にかかる労力を過小評価しています。たとえ実験手法だけにしろ、ポスドクに学生の指導を任せるのは、ポスドクのキャリアを考えていないに等しいです。放置されたあなたも、助けを求めたポスドクのキャリアの障害となってしまうのは嫌なはずです。
また、ポスドクは学生の学位に責任を持てません。ポスドクに助けを求めた結果、あなたの研究が上手くいかなくても、あなたの学位や論文をなんとかしてはくれないのです。その権利も義務もありません。
放置プレイを乗り越えて
本来ならば、研究室選びの際に、上述のような事柄は十分に下調べしておくべきことです。情報を集めていたにも関わらず、教官から放置されてしまったとしたら、「研究室選びの罠」にハマっていたということです。研究室訪問の際、先輩は「厳しいけど自分の力で研究できるよ」と意味深に話していませんでしたか?
教官から指導を放置された場合、解決方法は二つあります。
一つは、自分でなんとかすることです。もちろん、自分ひとりでなんとかできるなら指導者など必要ないわけで、大学院に在籍する理由もありません。まともな指導をしてくれる新しいメンターに助けてもらいつつ、「罠シリーズ」や「書き方シリーズ」を参考にして、自分で試行錯誤するしかありません。
もう一つは、指導教官(研究室)を公式に変えることです。あまり知られていないかもしれないのですが、研究室は途中で変えてもよいのです。ただし、「もっとやりたい研究が見つかった」、「より自分に合う研究室が見つかった」など、ポジティブな理由をでっち上げてください。決して、「指導者と反りが合わない」とか「今の指導体制に不満がある」などと、ネガティブな理由を匂わせないでください。ともすると、放置された現在の指導教官から嫌がらせをされる場合があります。
「大学院に関する「かんちがい」」のnote記事でも一部解説しましたが、小学校〜大学までと大学院ではルールが違います。大学院では自分から動かないと何も解決しません。大学院生活でなにか困ったことがあったとして、待っていても誰も助けてくれません。正しい人物に積極的に助けを求め、助かるための正しい努力をしましょう。