見出し画像

URAの見えない価値

 筆者は、某国立大学で広報担当者と して、プレスリリース業務などURA的な業務を行ってきました。URA(University Research Administrator)とは、一般社団法人リサーチ・アドミニストレーション協議会の定義では、以下のようになっています。

URAとは、大学などの研究組織において研究者および事務職員とともに、研究資源の導入促進、研究活動の企画・マネジメント、研究成果の活用促進を行って、研究者の研究活動の活性化や研究開発マネジメントの強化を支える業務に従事する人材のことです。

RA協議会ウェブサイトより

 いわば、縁の下の力持ち的なポジションです。URA業務の重要な点は、「研究」のことも「事務」のことも、両方理解していることが必要なことです。例えば、筆者が行っていたプレスリリース業務について説明すると、研究者から送られてくる、学会発表や論文発表の要旨のような専門用語が散りばめられた最初のプレスリリース原稿を、一般の方や記者に伝わるよう噛み砕いた表現に編集するためには、専門知識が欠かせません。また、助成金交付機関や本部広報課など関係各所とのリリースの日程調整など、事務処理能力もある程度高くなければいけません。筆者はURA人材育成プログラムを受講したこともありますが、URAとして求められているレベルを考えると、研究者としての経験がなければ業務の効果的な遂行は難しいでしょう。

 URAの仕事の概要については、RA協議会のウェブサイトで解説されているので、ご参照ください。個人的な意見として、研究者としての知識・能力があることは前提ですが、自分の研究よりも他人の研究のお手伝いに一生懸命になるタイプや、自分で手を動かすことは苦手だが他人の批評はうまいタイプ、研究のために生活(家庭)を犠牲にできないタイプは、URAに向いているのではないでしょうか。あと、コーディネーター役でもあるので、高いコミュニケーション能力も必要です。

 日本では、URAは比較的新しい職であり、制度も発展途上です。事あるごとに、URAの重要性が強調されています。しかし、実情は、URAを「研究がわかる優秀なお手伝い」や「面倒事をおしつけられる何でも屋」程度にしか認識していない先生もいるのではないでしょうか。優秀なURAが任期切れでいなくなったとしても、大学の先生は「困るだけ」です。自分の職がなくなるわけでも研究ができなくなるわけでもないのです。

 近年、大学などの組織で、URAの募集が増えています。任期制の後に無期転換が可能とうたっている募集もありますが、数えるほどしかありません。ほとんどは5年以内の任期で更新なし、報酬も低く、率直に言って、使い捨てにするつもりがあからさまです。2023年以降、雇い止めに会う大学教員は毎年量産されています。その中から、また新しく雇えばよいのです。5年任期で。これでは、優秀な研究者は海外や企業に逃げていきます。URAの待遇が改善されない限り、優秀な人材は集まらないし育たないでしょう

 日本におけるURAの現状については、東邦大学医学部研究推進室URA室の武藤彩先生のウェプサイトでよくまとめられています。ご参考まで。

いいなと思ったら応援しよう!