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おもしろき こともなき世を おもしろく
世につまらない研究テーマなどない。つまらない研究にしてしまう研究者がいるだけだ。料理では、どんなにありふれた食材であっても、料理人の腕次第では美味しい料理を出すことができる。逆に、どんなに高級な食材であっても、料理人の腕が悪ければ料理は台無しになってしまう。もちろん、食材が腐っていたりしたら、いくら料理人の腕がよくても、どうにもならいが(ただし、それが発酵だったら、なんとかなる)。
研究も同じである。もっとおもしろくなるはずの研究テーマなのに、本質からズレた細部に拘っていたり、結果が白黒つかないような方法で解析していたりする研究を見ると、実にもったいないと思ってしまう。研究をおもしろくするためには、何らかの「科学的センス」が必要なのかもしれない。
では、この「科学的センス」は養えるかといえば、わからない。ただ、研究経験を積むと、おもしろい本質的なポイントや興味深いギャップが、わかるようにはなる。「誰もやっていない」研究テーマは、「テーマ選択の罠」で解説したように、研究初心者は避けるべきだが、ある程度経験を積んだ研究者は積極的に挑戦するべきだ。また、 「研究へのモチベーションが自分の外にある人は基礎研究には向いてない」とも書いたが、「他人と違うことがしたい」ことがモチベーションになっている研究者は、ユニークな基礎研究領域を展開できる可能性がある。もちろん、独りよがりなつまらない研究になる可能性もある。これは、コインの両面だ。
つまらない研究のほとんどは、調理しだいでおもしろくできる。しかし、それには経験とセンスが必要だ。反対に、おもしろい研究テーマも、研究者しだいで台無しにできる。つまらなく見える研究のおもしろさを見過ごしていないだろうか、おもしろい研究テーマを台無しにしていないだろうか、と日々自問している。