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大学院に関する「かんちがい」
学生の頃、大学院に行っていると言うと「まだ勉強したいんだね」という反応が返ってくることがあった。「研究」と「勉強」は違うんだけどな、と思いながらも説明がめんどうなので「そうですね」と返事していた。
世間一般の大学院に対する認識は、そんなものだ。しかし、大学院でも、この手の「かんちがい」をしている学生がいる。よくあるパターンの一つは、「どうなったら正解なんですか?」と聞いてくる学生だ。『いや、その答えを見つけ出すのが大学院における研究なんですけど。。。』と思いつつも、「なにが正解だと思う?」と問い返す。もう一つのパターンは「結果が出る研究テーマが欲しい」というものだ。『結果が確実に出ることがわかっていたら、研究する必要ないでしょ?』と思いつつも、「それも含めて考えるのが大学院における研究だから」と諭す。
特に、医学部出身の学生など、「勉強」はできる学生にこの傾向があるようだ。もしくは、先生の指示すること「だけ」をやってきた「素直」な学生だ。彼ら・彼女らは、これまでの大学学部での勉強の「Input(講義)」・「Output(試験)」サイクルという単純なマインドセットに囚われている。
大学院では、このマインドセットを、もっと複雑なものに更新する必要がある。それは、研究という 「Explor(探求)」・「発見(Discover)」・「Create(創造)」・「Publish(論文出版)」サイクルだ。また、1サイクルにかかる時間も大幅に変わる。学部での勉強のIOサイクルは、せいぜい数ヶ月から半年程度だが、研究のEDCPサイクルは、最低2〜3年はかかる。そこには一夜漬けの対策など、ありはしない。
大学院ではルールが変わる。これが、「試験の成績と研究ができるかは関係ない」と言われる所以だ。違うルールに適応しなければならないのだ。大学院の初期教育時点で、「ルールが変わる」ことを指導者は学生に明確に意識させた方がよい。さもなくば、お互いに違うルールで勉強・研究を進め、いつまでも噛み合わないことだろう。