研究者のためのプレスリリース入門 〜要約図編
はじめに
プレスリリースの図は、直接的で直感的にわかりやすいものである必要があります。よくある間違いは、論文の図を修正せずに使用することです。これには3つ問題があります。
概要図ではないので、プレスリリース内容との関連がイメージできない
論文は英語で書かれていることが多く、英語表記のままでは一般の方が理解できない
クリエイティブ・コモンズ(CC)ライセンスなどによって改変・再配布が許されている著作権ではない場合、図の著作権は出版社に帰属するので、論文の図をそのまま使用すると著作権的に問題となることがある
プレスリリースの図は、一から作り込む必要があります。
タイトルと関連させる
プレスリリースの図は、発表内容を表しているものが適切ですが、同時に、タイトルと関連していることが必須です。具体的には、タイトルに含まれている言葉のイメージ(イラストや写真)を含むことが重要です。例えば、「高血圧」という言葉が含まれていたら、高い数値を示した血圧計といったイメージを、「運動」という言葉が含まれていたら、ジョギングしている人といったイメージです。「研究者のためのプレスリリース入門 〜タイトル編」のnoteでも書いたように、タイトルと図だけで概要が理解できないリリースは読んでもらえません。
必要最小限の言葉を使う
要約図の中の文章は、極力減らす必要があります。文章を重ねないと表現できないようであれば、イメージの練り込み方が足りないので、コンセプトから作成し直したほうがよいでしょう。短文で1〜2文、残りは最小限の言葉で表現しましょう。また、文字だけの要約図も避けましょう。文字だけの情報であれば、本文中で箇条書きで示したほうがよいです。要約図の修正例を以下に示します。
1図1アイデア
一つの図に複数の情報を詰め込まないようにしましょう。情報量が多いのであれば、分割して2つの図にしましょう。最悪な図は、官公庁でよく見られる「ポンチ絵」です。「ポンチ絵」は「ウォーリーをさがせ!」に似た現代アートの一つと取れなくもないですが、効果的な情報伝達という点では最低です。もともとの「ポンチ絵」は、わかりやすくパンチの効いた一コマ漫画です。The New YorkerやThe Washington Postの風刺イラスト(Cartoons)が、お手本となります。
https://www.washingtonpost.com/editorial-cartoons/
おわりに:画像生成AIの使用は慎重に
筆者は基本的に、著作権フリーの画像を組み合わせてプレスリリースの図を作成していますが、イメージ通りの素材が見つからない場合も多いです。以前は、いらすとやを利用していましたが、メジャーになってきたので、ACワークス株式会社のフリー素材シリーズ(〇〇AC)を使用しています。
最近は、画像生成AIできれいなイメージを簡単に作成することができるようになりました。しかし、画像生成AIのプロンプトを「呪文」と呼ぶように、思い通りのイメージを正確に出力させるためには、コツが要ります。また、生成されたイメージは必ずしも正確でないので、結局は手作業による修正が必須です。AIで生成されたイメージが問題となって、論文撤回されたケースを紹介します。
お金があれば、ロイヤリティフリーの画像を購入するか、プロのイラストレーターに依頼したほうがよいです。デザイナー・イラストレーターのリンクが充実している日本サイエンス・ビジュアリゼーション研究会のウェブサイトを紹介しておきます。