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研究者のためのプレスリリース入門 〜基本編


はじめに

 筆者は某国立大学において、研究とともに広報担当者として、長年、研究成果発表のプレスリリースを担当した経験があります。広報の仕事が忙しくなると研究を圧迫してしまうので、できるだけ効率よくプレスリリースが行えるようシステム化してきました。以下のnoteは、不定期に行っていた広報セミナーからの抜粋です。

社会への情報発信の方法はいろいろある

 現在、社会への情報発信には様々な方法があります。いちばん手っ取り早い方法は、大学や研究室のウェブサイトに掲載したり、FacebookやX(旧Twitter)、Instagramといったソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に投稿することです。noteや個人ブログで紹介する方法もあります。動画を作成してYouTubeで公開してもよいでしょう。また、TVや新聞・雑誌の取材を受けるという方法もあります。余力があれは、講演会や市民公開講座を催したり、本を執筆することによっても、広く社会に情報発信する事ができます。

社会への情報発信の方法

プレスリリースとは?

 これらのうち、TVや新聞に取り上げてもらうために、TV局・新聞社に研究成果の説明文や説明会の開催案内を送付することを、プレスリリースと呼びます。プレスリリースの結果、取材を受けてTV放送されたり紙面に掲載されたりします。TVや新聞といったオールドメディアはオワコンだと言われて久しいですが、その影響力は、まだまだ侮れないものがあります。

プレスリリースの2パターン

プレスリリースは難しいか?

 プレスリリースは難しくはありません。ですが、「めんどくさい」です。例として、筆者が担当していたプレスリリースの流れを示します。作成したプレスリリースをメディアに配布するだけだと思われがちですが、実際には、原稿の編集から共同発表機関の広報担当との調整、日本医療研究開発機構(AMED)といった研究費助成機関への連絡、本部広報課とのリリース日調整など、多くの関係者とのやり取りが生じます。さらに、記者説明会を開催する場合、会場の準備や当日の司会なども広報担当者が行います。専任の広報担当者がいない場合、グレーの網掛け部分をすべて発表者が行う必要があります。筆者は効率的なリリースのためのフローチャートを作成し、自身は原稿の編集作業に集中できるようシステム化していました。

プレスリリースの流れ
効率的なリリースのためのフローチャート

プレスリリースは「めんどくさい」が、必要である

 もし、優秀な専任の広報担当者がいるなら、安心して丸投げすることができます。その場合、発表者が行うことは、基本、最初の原稿の準備と修正原稿の確認だけです。ですが、広報担当者がいなかったり、事務方が兼任していたりする場合、原稿の編集や関係各所との調整は期待できません。すべて自分で行う必要があります。
 プレスリリースは難しくないが「めんどくさい」です。ですが、「めんどくさい」からといって、プレスリリースしなかったり、おざなりにリリースすることは、情報発信の機会損失に直結します。社会への研究成果の積極的な情報発信は、大学等の組織のプレゼンスを上げ、行われている研究に対する社会的な理解を得るために重要です。研究者側でできることは、なによりもまず、わかりやすい原稿を準備することです。以降の「研究者のためのプレスリリース入門」シリーズのnoteでは、インパクトのあるタイトルのつけ方や、わかりやすい文章の書き方、わかりやすい図の作り方について、説明していきます。

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