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【特集】障がい者就労を自分事として考える~アルバイト経験を通じて~

二ーバーの祈り

こんにちは、ライターのいづみです。この言葉に出会ったのは、私が「チック症」に悩み、精神疾患について調べていた時のことです。自分の意志に反して喉を鳴らしたり、手を動かしてしまう「チック症」の症状は周囲の目が気になります。電車で隣の席を変えられたりすると、気持ち悪いと思われたのではと自己嫌悪に陥ることもありました。

この言葉のおかげで、症状そのものや他人からの見え方は自分では変えられない。でも、環境を変えたり他の障がいについて知れば、考え方は変えられるかも、と少し前向きになれました。今回は、そのような経緯で始めた就労継続支援A型のアルバイトから考えた、「障がいと働く」ということについてお付き合い頂ければと思います。

1、「生産性」という言葉が怖い 障がい者雇用の現場から

就労継続支援とは、障がいがあったとしても自分や家族の生活、自己実現のために働けるよう、障がい者の就労をサポートする福祉サービスの一つです。私がアルバイトをしている事業所では、パソコン作業がメイン。プログラミングスキルを活かしてHPを制作する方もいれば、PPTでオリジナルキャラクターを制作してグッズを作る方もいます

周囲にこのようなアルバイトをしていると伝えると、「折り紙や塗り絵をするんでしょ?」「高齢者施設みたいな場所で食事などのサポートをしているの?」と訊かれます。そのような手指の訓練やサポートが必要な方に対してサービス提供をしている施設もありますが、それはまた別。場所も「施設」ではなく一人一台パソコンとデスクが用意された「事業所、オフィス」です。

もっと詳しく知りたい方は、こちらのサイトの説明がとても分かりやすいです。

福祉系の大学でもない私が受け入れてもらえるだろうか、とドキドキしていたアルバイト初日。ある利用者さんから「下手に知識だけがある人は病名や障がいの名前だけを見て、自分(の人柄や性格)を見てくれない。むしろ、真っ白な状態の方がいいよ」と言われました。これはとても励みになると同時に、自分も障がいという先入観を持って接していたかもしれないという戒めにもなりました。もう一つ、別の利用者さんから相談を受けた際に言われた言葉をご紹介したいと思います。それは、「生産性っていう言葉が怖い」です。

「統合失調症」と診断されてからは思うように働けず、子どもを育ててもいない。育児をしながら働いて社会貢献している人もいるのに、と「生産性」という言葉に罪悪感を感じる。こんな自分が楽しんだりしてはいけないと思う。

私は「誰にでも幸せを追求する権利はあるので、そんなに自分を追い詰めないで下さい」としか言えませんでした。未だに何と答えるのが正解だったのかわかりません。ただ、働きたくても働けないことが人をこれほど苦しめることもあるのか、と驚きました。

2、地域に根差したユニークな取り組みと今後の課題

令和3年度に行われた厚労省の調査によると、障がい者の雇用状況は
身体障がい者……約35万9千人(対前年比0.8%増)
知的障がい者……約14万人(同4.8%増)
精神障がい者……約9万8千人(同11.4%増)

一方、平成28年度の調査になりますが、18~64歳の障がい者数は、
身体障がい者……101万3千人
知的障がい者……58万人
精神障がい者……192万6千人(*精神障がい者数のみ25歳以上 65歳未満の人数)
全ての方が就職を希望している訳ではないにせよ、通院のための休暇が必要、聴覚が過敏で人の話し声がストレスなど、適切な環境や働き方ができないことで働きたくても働けない方も多くいます

参照:「令和3年 障害者雇用状況の集計結果」厚生労働省「参考資料 障害者の状況」内閣府

また、法定雇用率は次第に改善されていますが、大企業がない地方では従業員数がそもそも少なく、地域格差も課題です。そこで、その地域の有力な産業に組み込み、売り上げを伸ばす取り組みがなされています。例えば、北海道で人気のある民宿に注目し、民宿の清掃に注力している会社や、ものづくりが盛んな新潟県で自動車などの部品などを製造している会社もあります。
参照:reward株式会社株式会社withyou

3、道徳だけではなく 学校で教えて欲しかった当事者意識

最後に、少し想像してみて下さい。もし、あなたのお母さんが歩道橋で転び、命は助かったけれども右半身が動かなくなったとしたら? 大切なパートナーが慣れない大工仕事をしていて屋根から落ち、頸椎を損傷してしまったとしたら? 他でもない、あなた自身が家族に精神科に連れていかれ、突然「統合失調症」という病名を医師に告げられたとしたら? 縁起でもない、と気分を害されてしまったらすみません。ただ、いま挙げたことは概ね私のアルバイト先で働いている方が実際に経験されたことです。

小中学生の頃、道徳の授業で黄色い点字ブロックの意味や差別の歴史などを学習しました。これらが無意味だとは思いません。ただ、障がい=先天的なもの、というイメージが強くなりすぎて他者としての障がい者にどう関わるかという点ばかりが強調されていないか、という疑問もあります。アルバイトをしていると健常者と障がい者という二者が壁を隔てて存在するのではない、と強く感じます。この先、後天的な障がいや病気を自分や周囲の人が負わない保証はどこにもありません。他の誰かのためではなく、まずは自分のために、そのような方々の生活のあり方や、制度や取り組みなどの具体的なことを知る機会がもっと増えればいいなと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました!


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