吃音症の大学生が、吃音への思いや不安を思いのまま語ってみた
こんにちは、ライターのうめちゃんです!
突然ですが、皆さんは「吃音(きつおん)」という障害を知っていますか? 身近に吃音症の人がいるから知ってるよ!という人もいるかもしれません。しかし、そんな人でも「吃音症の人が見ている世界」を想像するのは難しいと思います。
10月22日は「国際吃音啓発の日」です。吃音症を知っている人も、知らない人も、この記事を読んで、吃音について一緒に考えてみませんか。
この記事では、当事者である私が、私なりの言葉で吃音症を紹介したいと思います。ぜひ、最後までお読みください。
1.「吃音」って何?
既に知っている人もいるかもしれませんが、吃音の定義を簡単に確認しておきましょう。
吃音は「どもり」とも呼ばれる、話し言葉が滑らかに出ない発語障害のひとつです。吃音に特徴的なものには、以下の3つが挙げられます。
吃音には、発達性吃音と獲得性吃音に分けられます。ここでは吃音の9割を占める発達性吃音について紹介します。発達性吃音は、主に幼児期に発症します。また、発達性吃音を発症する人には男子が多いようです。不思議ですね。
吃音は、個人の生まれ持った体質が大きく影響していると言われています。かつては「親の育て方に問題がある」と言われていた時代もありましたが、現在では否定されています。
また、吃音を治す確立した治療法はないと言われています。しかし、吃音の症状を和らげる方法はいくつかあるようです。それによって、「楽にどもる」「表面上は吃音がないように見せる」ことが可能になるのです。私も小学生の頃にリハビリに行き、言語聴覚士の人とお話ししたりストレッチしたりした記憶があります。吃音を軽くしたい願望があまり無かったので、意欲的ではなかった気がしますが……笑
ここまで辞書的な説明をもとに吃音を紹介したところで、次章以降では私自身の体験や吃音に対する思いを紹介しようと思います。
2.私と吃音
私が吃音だと自覚したのは、記憶の限りでは小学3年生の頃です。クラスメイトの1人から私の喋り方を真似され、担任の先生から私に謝罪するよう注意を受けていた景色が記憶に残っています。幸い、被害者の私は真似されたことを気に病むことはありませんでした。
時は流れて小学6年生の時、市内の小・中学生が自分の体験や意見を作文して発表する「弁論大会」の学校代表に選ばれました。いま振り返ると、当時から話すことに苦手意識を持っていたはずなのに代表を受け入れた当時の自分が信じられません。私は「吃音」をテーマに発表しました。人前で「私は吃音です!」と発表するのは、当時の自分にとって新鮮な体験でした。ここで「私は吃音症である」という意識を強く持つと同時に、吃音であることを自分で発信していいんだ!という、発信する武器になると気づきました。(だからこそ今もこうして、自分の吃音を記事にしているわけです)
私は、「吃音と人生を共に過ごすんだろうな〜」と自分の吃音症を可能な限り受け入れています。幼少期は、自分が吃音であることを自覚せず、無邪気に話したり発表したりしていました。それから時が流れ、思春期に入って自分を見つめ直したり、「空間を楽しむ/楽しませることが大事である」という思考から自分の役割意識を作り上げたりしたことで、自然と吃音を受け入れられるようになったのだと思います。
現在では、日常生活で自分が吃音であることを自覚しながら立ち回ることに慣れてしまいました。たとえば、友人と話すときに自然と「聞き手」に回る、相手に話す順番を譲る、時間制限のあるグループ発表で話さない役割を担う、など挙げれば数えきれないほど事例は多くあります。決して現状が嫌だとは思いませんし、むしろ吃音を利用して面倒くさい仕事を回避することも多々あります(笑) しかし、「小さいころにもっと吃音を軽くできたらよかったのに」「吃音がなければすらすら話せたのに」と吃音に対する後悔の気持ちが時々湧きます。正直、いまでも自分の中で「吃音への向き合い方」の正解を見つけられていません。いまだに吃音との向き合い方が分からないまま大学生になり、社会人へと進んでしまうと思うと怖いですね……
吃音の症状は、時期や場所によって変わります。私は、友人と喋っていて「今日は、さ行が苦手だな」や「最近た行を上手く言えないな」というように、直感で分かります。反対に「最近か行の調子が良い!」と思うこともあります。
また、環境によっても症状の重さは変わります。友人と話すときと人前で発表するときでは、吃音が出る頻度が違います。やはり、私のことを知っている人と話すときはリラックスして話せるため、吃音の頻度が減る傾向にあります。
3.最大の難所「自己紹介」
吃音症の人にとって最も過酷な試練といえば、きっと自己紹介であろうと思います。私も例に漏れず、自己紹介の度に憂鬱になります。
自己紹介をする相手は、私が吃音を持っていることを見た目では見抜けません。それは、吃音が「見えない障害」の1つだから、と言えるでしょう。相手が何も意識していないところに、私が「実は吃音なんです」とカミングアウトするのには、かなりエネルギーが必要です。
ところで、私は自己紹介の時に必ず「吃音という、言葉がスラスラ出にくい障害があります」とカミングアウトするようにしています。もちろん、自己紹介でカミングアウトするにはエネルギーが必要になるのですが、話していると必然的に吃音が出てしまうため、先に伝えておいた方が楽だと考えているからです。(吃音を持っている人の中には、自分が吃音であることを明かさない人もいます。)
しかし、自己紹介は相手の第一印象を決める大切な時間です。私の第一印象が「暗い人」「もごもご喋る人」と思われたらどうしよう!?とドキドキしながら自己紹介をなんとかやり過ごすのです。自意識過剰と言われてしまえばそれまでですが、言葉に不自由を抱えていることは存外大変で苦しいものだと思います。
4.吃音と不安
吃音をポジティブに捉えるようにしている一方、不安はもちろんあります。例えば「就活」の問題。就活には必ず面接が実施されます。「面接」という言葉を聞くだけで憂鬱な気持ちになります。吃音のために不利になるのだろうか、社会に出たとして働いていけるのだろうか、など様々なことを考えます。
そんなことを話すと、周囲の人からは「心配しなくていいよ、大丈夫だよ!」と返されます。信頼してくれているのは嬉しいですが、不安が解消されるわけではありません。もちろん、最近では多様性が認められ、申請すれば合理的配慮をしてもらえることも知っています。しかし、配慮してもらえるからといって不安が完全に解消されるわけではない、というのが私の考えです。
吃音症の人は、話すときに多少なりとも不安を抱えているんじゃないかと思います。私も気心知れた友人と話すときでさえ少し緊張したり不安になったりするものです。しばしば、「吃音の人と話す時に気をつけることってある?」と聞かれますが、私なりに答えると、この一言に尽きます。
話をしっかり聴く姿勢を見せてくれれば、それだけで嬉しい!
これは、吃音症の人と話すときだけでなく、他者と話すときには常に気をつけるべきことだと思います。私は、自分が吃音症である以上、会話で他者の話に興味をもって聞くよう心掛けています。「そんなことでいいの!?」と驚く人もいるかもしれませんが、「そんなこと」で安心感は増すのです。
ここまで長々と吃音について語ってきましたが、私は吃音をあまりネガティブに捉えていません。
なぜ吃音をあまり深刻視していないのかと聞かれれば、これまでの人生で私の吃音を馬鹿にする人がいなかったからだと即答できます。この状況は、とても幸せだなと思っています。もしも馬鹿にする人がいて嫌な体験をしていたら、もっと吃音をネガティブに考え、楽観視できていないと断言できます。いままで私に一瞬でも関わった皆さんのおかげです。ありがとうございます。
5.終わりに(関連書籍の紹介)
吃音を題材にした書籍で、吃音症でない人でも読みやすいものをいくつか紹介して、この記事を締めくくりたいと思います。吃音に興味をもった方は、ぜひ読んでみてください。
・伊藤亜紗『どもる体』(医学書院)
吃音の「謎」について、従来の医学的・心理的アプローチとは異なる、徹底した観察とインタビューから紐解いた本。吃音の当事者が、身体や心とどのように向き合い、自らの身体を動かしているのか丁寧に説明されている。また、吃音という現象を通して、人間の普遍的な身体動作にも迫る。
・押見修造『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(太田書店)
吃音症の少女、大島志乃が吃音と向き合いながら高校生活を送る話。吃音症の人が抱く気持ちや心の動きが繊細に描かれている。漫画は単行本で全1冊と読みやすく、映画化もされている。
最後までお読みいただきありがとうございました! この記事で少しでも吃音に関心を持ってもらえたでしょうか。感想などがありましたら、ぜひコメントやmedien-lien公式SNSにお送りいただけると嬉しいです。
まだまだ語り足りないので、もしかしたら第2弾を投稿するかもしれません! その時はよろしくお願いします。
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