DTPむかしばなし 第1話(全7話) OSと組版ソフト
メディックメディア メディカルイラストレーターグループ(MIG)のおにくです。
時の流れははやいもので、私が入社してからもう20年近く経とうとしています。
さて、今回はおにく入社当時(2003年)から現在(2022年)までの、メディックメディアにおける組版ソフトの変遷についてお話ししたいと思います。懐かしさで死ぬ。
(DTP:パソコンで書籍データを作成すること
組版:書籍の印刷用データを作成する作業)
OSと組版ソフトの変遷
Quark XPressのこと
入社当時はすぐに組版に関わらせてもらえなかったものの、どうやらQuark XPress(QX:クォーク)というソフトで組んでいるらしい、ということは聞いていました。
(Quark XPress:米国Quark社の組版ソフトで、InDesignが出てくる前の「DTPと言えばこれ!」というソフト。参照:wikipedia)
ソフトを使うには「ドングル」というUSB型の認証キーを刺しておかないといけないため、先輩達のキーボードには常に謎の紫色の出っ張りがありました。
QXは海外のソフトだから縦書きやルビ(ふりがな)付けなどの日本語組版にはあまり向いていないんだよ、と先輩やオペレーターさんから聞いていましたが、幸いメディックメディアでは全ての書籍が横書きだったため、そこまで致命的ではなかったようです(多分)。
ただ、いい感じの下線を引くのに別途プラグイン(XTensionというらしい)が無いとダメとかで、データを開くパソコンによっては「XTensionが入っていない」とアラートが出ていたような気がします。
謎の隠しコマンド
あとは、特定のショートカットを押すと謎のロボットや宇宙人が出てきてオブジェクトを消してくれるので、暇な時にやっているとオペレーターさんが言っていました。海外製のソフトってこういう隠しコマンドが仕込まれていることがありますね。Adobeにもあるんだろうか。
(Youtubeに動画がありました)
『病気がみえる』の組版
メディックメディアでは、誌面構成が重要な『病気がみえる』という書籍の組版は我々メディカルイラストレーター(MI)が行うのですが、当時はもちろんQXを使っていました。
今は文字っぽいところは組版ソフトで、イラストっぽいところはAdobe Illustratorで、とわかりやすくなっています。ただし、表組みはいろいろと理由があってAdobe Illustratorです(普通は組版ソフトの方が効率的)。
〜ついにInDesignへ〜
InDesign(ID)がCS→CS2になって劇的に日本語組版が使いやすくなったらしく、世間の組版環境がQXからIDに変化しつつあった2006年に、メディックメディアもようやく制作環境をInDesignにしよう!ということで、MI全員で外部研修に行きました(MIはチームで書籍制作をするので、基本的に全員同じ環境にそろえています)。
外部研修に行ったことで、独学よりも効率的に学ぶことができました。必要な研修には積極的に行かせてもらえるのでありがたいです。
それまでQXで作っていたデータをInDesignで開くとめちゃくちゃに文字が崩れるのですが、それもスタイル指定ですぐに直ってくれるので、なんて便利なんだろう……と感動した覚えがあります。何もわからないところからスタイルなどのマスターデータを作ってくれた当時のリーダーは本当にすごいなぁと思います。
(スタイル:1クリックでフォントやサイズ、行間などが指定できる魔法。
マスター:書籍データ全体のデザインテンプレート。スタイルを含む)
その後はずっとInDesignで組版を行っています。
指をくわえて最新バージョンを眺める日々
ソフトのバージョンが新しくなる度に色々な機能ができてとても便利になるのですが、メディックメディアでは、すぐに新しいバージョンに変えることは難しいのです。
制作しているのが医学書という特性上、書籍は改訂を重ねることになるため、また、書籍間でのデータ流用も多いため、ソフトのバージョンを新しくすると社内外の既存の最新データを全てバージョンアップしなければならず、ものすごい労力がかかるのです。
せっかくソフト側が良くなっているので早く色々と試したい気持ちはあるものの、なかなか踏み切れなくてもどかしい現状です。
(実は、ほんの数年前までQXで制作されたデータのままの書籍がありました。さすがに古いQXの動くマシンがないので見た目が同じになるようにデータをCCに移行しましたが、増刷の度にデータ担当者は「本文の修正がありませんように!」と祈っていたことでしょう……)
次回はフォントのお話です。