『薬がみえる』vol.2・3同時改訂! 第1話(全2話) 組版データのメンテナンス
2023年秋、弊社「みえるシリーズ」の中でも特に薬学生さんや薬剤師さんにご愛読いただいている『薬がみえる(以下、『薬みえ』)』vol.2・vol.3の改訂版が発行されます。
vol.2は9月16日(土)、vol.3は9月2日(土)に書店店頭に並ぶ予定です。
初版発行から実に7〜8年ぶりの改訂となり、その間に新薬も数多く発売されたため、大幅に内容を刷新しました。内容面については『薬がみえる』公式ページや『病気がみえる』公式SNS(X〔Twitter〕、Instagram)に譲り、このnoteではMIGが中心となって作業にあたったポイントを主に紹介します。
今回のテーマは、改訂作業がスタートする前のデータメンテナンス作業です。
古い組版データはそのまま使えない
“改訂”では既存の組版データをある程度流用することができますが、そのまま使えるというわけではありません。初版発行から長い年月が経っているということは、組版データもそれだけ古くなっているということです。
初版はいずれも「Adobe CS5」というバージョンで制作されましたが、改訂作業がスタートした時点の社内の制作環境は「Adobe CC2021」でした。実に11段階アップ! 予期せぬバグが出現することを見越して、慎重にバージョンアップしました。
バージョンアップとは、古いソフトで作られたデータを新しいソフトのバージョンで保存することです。CS5からCC2021の間にソフト側の仕様変更が複数あり、バージョンアップ前後で以下のような差分が出現しました。
【Illustrator】ぼかし(CS6〜)
CS5で「ぼかし」効果を使用して作ったオブジェクトをCC2021で開くとボケ具合が変わっていました。
アピアランスパネルを確認すると、「ぼかし(以前の形式によるガウス)」とあります。CS6以降、「ぼかし」の仕様が変更されたようです。
参考:一部効果の仕様変更について(Illustrator CS6)
CC2021の「ぼかし」では、オブジェクトの境界線が認識できるようなボケ具合を再現できないので、「光彩(内側)」で代替しました。
【Illustrator】テキストの強制改行(CC2014〜)
「みえるシリーズ」の図版内のテキストの多くは、「均等配置・最終行左揃え」の設定にしてあります。テキストの途中にイラストが入る場合や、キリのよい語句で改行したい場合に、強制改行(Shift+Enter)を入れることで、左揃えにしていました(画像左側)。CC2014以降でこの点が仕様変更されて、強制改行を入れた行も均等配置になってしまいました(本来はこれが正しいのですが…)。
参考:ベテランほど知らずに損してるIllustratorの新常識(5)
CC以降、テキストの扱いで変わったこと
部分的に段落設定を「左揃え」にしたり、改行+次の行を1字落ちに変更したりして対応しました。
【InDesign】コーナーオプション(CC2020〜)
『薬みえ』の紙面で、「『病みえ』への参照ページリンク」や「商品名・略語」のアイコンに使用していた「角オプション」がCC2020以降「コーナーオプション」へと変更され、仕様も変更されました。
旧バージョンの「角オプション」は「正円が表現できない…」とDTPerを嘆かせていましたが、急に改善されるとそれはそれで困ります。
旧版のアイコンに見た目が近くなるように角のサイズを調整して、検索置換で一括修正しました。
『薬みえ』vol.2・3の本文は合わせて約1,000ページあるため、バージョンアップと差分検証・修正を行うのはなかなか骨が折れる作業でした。
なお、紙面に影響を及ぼさないところでは、Illustratorのレイヤーカラー「シアン」の設定がバグ(?)で「イエロー」に勝手に置き換わるというものがありました。CC2018以降で生じる現象のようです。
このままではレイヤー2上のオブジェクトの境界線やパスの頂点が見えづらく、作業に支障をきたすため、レイヤーカラーを「シアン」に変更しました。スクリプトで一括変換する方法もあるようです。
第2話に続きます。