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『こころの健康がみえる』のカバーができるまで
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今回は、2024年10月25日に発売された最新刊『こころの健康がみえる』(以後:『ここみえ』)のカバーデザインが完成するまでの経緯をまとめてみました。
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こころの健康がみえるとは?
理解するのがなかなか難しい精神疾患について、これまでの『病気がみえる』(以後:『病みえ』)シリーズと同様に、“みて、理解する”を目指して作成された書籍です。
私ロボは、この書籍の制作では本文(全512ページ)中の172ページの組版(紙面のレイアウトやイラスト作成などを行いページを作る作業)を行い、カバーや表紙のデザイン作成とデータ統括者として実際の印刷データの入稿を担当しました。
カバー制作の始動(入稿3ヵ月前)
本文の編集作業がだいたい大詰めになってきた頃から、カバーイラストをどうしようか考え始めました。
いつもは入稿の2ヵ月前ぐらいから動き出すのですが、今回は9月の入稿だったため、夏休みなどで人がいなくなることも考慮して早めに動き出しました(長期休みの期間があると、作ったものの回覧やチェックに時間がかかることが多いため)。
今回の『ここみえ』では精神疾患という、具体的にかたちにできるモチーフがなかったのと、私自身のなかでどういったデザインにするかのアイデアが少なかったため、一旦書籍編集者とイラストレーターにアイデアの募集を行いました。
いただいたアイデアや意見をまとめて私の方で作ってみたラフがこちら。
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このラフを関係者に回覧したところ、タイルでハートに見えるモザイク柄のイラスト(中央)が人気だったので、これをメインイラストにすることに決定。
ロゴについては既存の書籍である『職場の健康がみえる』を参考に、カバーの雰囲気(オビのかたちや全体のパーツなど)は『病みえ』に揃える方向で進めることになりました。
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メインイラストを考える(入稿2ヵ月前)
カバーのメインイラストの方向性は決まったのですが、単純な“モザイク柄のハート”だと、平面的で、よくありそうなデザインだなと思っていました。また、いかにもハートなイラストだと、「こころ」というイメージよりも「LOVE、可愛い」などのニュアンスが強まるデザインになってしまいそうだったので、正面から見たハート以外に何か作れないか考えていました。
たまたま子供とお風呂に入っていたときに、湯気で白くなった鏡に指で落書きをしていたら、ハートを斜めにして、その上に町ができているイメージを思いついて、これいいかも!となり、次の日会社でそのイメージをかたちにしてみたのが次のデザインです。
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オビの色とハートのイラストの色は違った方がメリハリが付いてよかったので、オビがピンク系統で、ハートのイラストが補色(反対色)の緑のパターンと、オビが緑系統でハートのイラストがピンクのパターンの2種類を出してみました(その他の色も試したのですが、ハートが青などの寒色系の色味だと冷めた感じになってしまったり、黄色などの暖色系もちょっと書籍の中身の印象と違うかなと感じたため、このパターンに落ち着きました)。
編集メンバーに意見をもらったところ、どちらも好印象だったのでよかったです。色味をどうするかはイラストを清書してからまた考えることになりました。
イラストの清書
イメージが固まったので、メインイラストのハートを作っていきます。
構図を決めたらガイドを描き、パスで線をかいていきました。こころの複雑さを意識して、同じかたちがないように意識してみました。すべてきっちりとしたものでなく曲線も織り交ぜながらパーツを作っています。
厚みはAdobe Illustratorの3D機能で出しています。
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ハートの中が小さな町に見えてくると、より書き込み量を増してダンジョン感を出したくなってきます。ある程度まとまったら、キャラクターやアイコンを配置していきます。
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「こころ」というものの複雑さをイメージで表せないか、と考えました。
エッシャーのだまし絵や個人的にファンであるジョルジョ・デ・キリコの作品の雰囲気やニュアンスを意識的に取り入れています。
ただ、描き込みすぎると何を描いているかがわかりにくくなりそうだったので、バランスに注意しながら、全体で見るとハートに見えるけど、近づいてみると階層が分かれていたりいろんな人がいて複雑な世界が見える、というイメージを表現しました。
そして、社長確認用の2パターンのデザインが完成しました。
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社長確認と色校正(入稿1ヵ月前)
社長にデザインを確認してもらったところ、ハートのイラストやデザインまわりで大きな直しはなく、概ね好評価でよかったです。オビのテキスト部分など細かな箇所にチェックが入ったので、そこの修正を進めたり、背のアイコンや裏表紙のイメージを更に検討することになりました。
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そしてピンクと緑の2パターン考えていたメインカラーですが、やはり「こころ」をテーマにしてるので、オビの色味はピンク系でいくのがよさそうということになりました。
イラストの方も、「緑のハートがいきなりハートって主張せず、“あ、ハート型だ”くらいの気づき体験もわるくないし、緑は社会・環境や地域、つながりを連想させやすくていいように思うので、ハートというモチーフと、社会環境の緑イメージを合わせたデザインは、コンテンツの中身、伝えたいこととすごくマッチしている。」
という編集メンバーコメントから、緑のハートイラストを採用することにしました。
「みえる」シリーズの書籍では、オビは特色(印刷においてCMYKの4色の通常インクでは再現できない色を表現するために、特別に調合されたインクのこと)を使っています。
今回はピンク系で2色の特色を選定。色を見るためのテスト印刷(色校正)に出しました。
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出校物を確認したところ、どちらも良くて悩んだのですが、最終的には優しい雰囲気が出ていたDIC2007(上)でいくことに決定しました。
イラストもキャラクターの主線の色を、背景と合わせて緑にするか、キャラクターを浮き立たせるために本文と同じ赤茶系にするかなど、入稿まで微調整しながら整えました。
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ちなみに編集メンバーには、地面に描かれたアイコンがナスカの地上絵みたいって言われました。確かに、言われてみればそう見えるかも。自分が意図していないけど多様な解釈をしてくれておもしろいなあと思いました。
数人が上を見上げている(こっちを見ている)のは何で?というコメントももらいました。これは、半分意識的にですが、覗いているこちらも覗かれている、自分のこころと対話する、みたいなニュアンスを伝えたかったんだと思います。
その他にも細かいところでは、「こころのON、OFF」をイメージして、スイッチ的なオブジェクトをいくつか配置していたりします。
そんなこんなで完成したのがこちらのカバーです。
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ピンクの帯に、さわやかな緑のハートのカバー、書店で見つけた際はぜひお手に取ってみてください!
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