序章【特集:教育事業4.0】教育事業1.0〜4.0までの歩み
新型コロナウイルスの流行により、社会は大きく変わった。当然、療法士業界も例外ではない。そのなかでも、教育事業は大きな変化をむかえたと思う。
私(@shunta0701)の勝手な定義では、この教育変革はこのたび4.0のアップデートをむかえたと考えている。1.0は1966年7月17日に理学療法士110名により結成された日本理学療法士協会の設立。
2.0では地域の情報格差を解決するため、各都道府県の有志が立ち上がり仲間内で学びはじめた。3.0になると療法士業界の教育を事業化し、多くのセミナー運営会社、個人団体が設立された。
そしてコロナ禍で急増したオンライン教育事業である。その中でも、2社のサービス(リハデミー、リハノメ)について徹底解剖してみたいと思う。
多くの療法士は、上記2社を対立構造つまりVSの関係性でサービスを検討していることだろう。実際には、全く異なるサービスを行っていることが取材の結果あきらかとなった。また、取材にともない療法士業界における教育の未来がすこし垣間みえた。
今回の特集により、過去から現在、そして未来のインサイダー情報としてみなさんにお届けしたいと思う。
業界教育史
まずはじめに、業界内の教育の歴史を時系列でおっていこうと思う。今回は一旦理学療法士業界に絞り話を進めていく。
上記年表をご覧のとおり、理学療法士教育のはじまりは、1966年(昭和41年)までさかのぼる。1966年といえば、ザ・ビートルズ日本初来日した年として記憶していることだろう。
その模様は、1966年7月1日にTV放送され、運命のイタズラなのか丁度20年後に私イマイがこの世に生を受けた。話を戻す。日本がビートルズ来日で沸いたその約一ヶ月後、110名の理学療法士によってPT協会が設立された。今回は、ここを教育事業1.0のはじまりと定義したい。
1966年当時の理学療法士は、特例制度により国家試験が開始され誕生したわけだが、このころはまだ学校教育としての礎は築かれていなかった。協会設立から約10年後の1979年にようやく短大教育が開始され、さらに10年後に大学教育が開始した。この頃から、教育は加速した。
このとき、日本はバブル崩壊の真っ只中。日本が沸いた1966年設立をかわきりに、バブル崩壊までのあいだに社団法人化を成し、学術研究団体と認められた。そしてバブル崩壊の最中でも我々の協会はつよく教育事業に邁進し、2年後には新人教育プログラムが開始され、3年後に専門理学療法士制度が導入された。
このように歴史をさかのぼっていくと、卒前卒後教育はここ20年で形作られた。ただし、それは良くも悪くも前半30年の礎があってこそである。今オンラインセミナーでしのぎを削る各企業においても、それは例外ではない。
温故知新の地方創生
教育において地方格差は今よりも確実に広かったといえよう。今でこそ、インターネットを使った情報収拾はあたりまえだが、それはここ15年の話である。
理学療法士協会が「新人教育プログラム」を開始した翌年、Windows95の発売に起因して、この年を「インターネット元年」とよぶ。この年の新語・流行語対象に「インターネット」がトップテンに名をつらね、それ以降「ネット」と呼ばれるようになった。
ネットはコミュニティのありかたも変えた。それまで連絡手段といえば、電話やメール。そこにネットを使った掲示板とよばれるコミュニティが誕生した。ネット上のコミュニティを活用して、近隣地域の療法士が集まり勉強をはじめた。そこでは、参加者はもとより講師も手弁当で参加し、まさに温故知新を体現していた。
これは地方ゆえの熱量がヒトと時代を動かし、教育事業2.0ともいうべきアップデートとなった。
ホントの教育“事業”到来
これまで、教育事業1.0、2.0と銘打って伝えてきた。ただし、事業というには少々大げさであった。本来事業とは、営利を目的とした経済活動のことを指すが、3.0を迎えるまではごく少数の事業者のみであった。
しかし、2010年を過ぎたあたりから会社、個人団体を立ち上げ、“セミナー”事業なるものが乱立しはじめた。その派手な広報スタイルから一時期、警鐘を鳴らす騒ぎ寸前でもあった。
この時代に、理学療法士となった私は凄腕理学療法士を目指すべく、日々研磨を重ねていた時代でもあった。それ以上のことは、ここで書くのは控えたい。気になる人は、大人の人にお伺いされたし。
社会は分断に向かっている
教育事業1.0から3.0までの歴史をおってきた。そして、コロナ禍の今4.0をすでにむかえた。対面での接触を避けるため、オフラインで行われていたセミナーは全てオンラインに移行。
これは、コロナ禍よりも前から進められていたことではあるが、コロナ禍によって加速したのである。これによって受ける恩恵は大きい。それを知るべく、現在オンラインサービスを展開している2社(リハデミー、リハノメ)を取材した。
本日より特集記事を連日配信するが、間違いなくそれぞれのサービスでどちらも沢山の恩恵を受けられる。しかし、一方で別の面もみてほしい。それは、2.0でも伝えた「格差」である。オンラインによって、日本全国どこにいても繋がることができる。つまり、「勉強できない」という言いわけができなくなった。
これまでも、「やる者やらざる者」にはわかれていた。しかし、オンラインによって、その境目ははっきりすることと思う。2社の成長を傍観するのでは意味がない。成長する2社を利用して、己の生き方を再定義する時代に今直面しているのだ。
可処分時間を制するものはオンラインを制する
さて、これから紹介する2社のサービス以外にもオンラインで学べる講座は数限りなくある。コンテンツの種類は、動画の他、電子書籍、書籍の音読など配信方法にも様々ある。これらのサービスを1日のうち、どの程度利用できるのか。
総務省の調査によれば,日本人にとっての可処分時間は1週間に男性で106.73時間,女性で105.50時間.平日に限定すると,男性で13,57時間,女性であれば13.8時間.つまり平均的な日本人は1日に2.6時間の可処分時間がある.「平成28年社会生活基本調査結果」(総務省統計局)(http://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/kekka.html)(2020年10月20日に利用)
総務省の調査によると、全年代の平均で1日約2.6時間の可処分時間があることが調査によりわかった。この可処分時間のうち、学習などに費やす時間は、平成23年に比べると増加傾向にある。
「平成28年社会生活基本調査結果」(総務省統計局)(http://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/kekka.html)(2020年10月20日に利用)
上記データは年代、男女含んだ平均であり、当然年代によって可処分時間は全く異なる。そもそも1日の中で可処分時間はどこに現れるのか?いくつかのパターンを用意して、確かめてみる。
3パターンのスケジュール
3パターンの1日スケジュール例を上図に出してみた。年齢、家族構成、職場との距離、職場の状況によって様々なスケジュールが考えられるが、より一般的なスケジュールを用意した。
Aは比較的若く働き盛り。Bは40代の管理職。変則的な昼休憩は整形外科クリニック特有のスケジュールだ。Cは子育てしながら働く女性。総務省調べによると、平日の可処分時間は1日約2.6時間だという。Aの場合、自由時間が含まれているので平均通りであろう。
一方、BとCではいかがだろうか?ざっとみると可処分時間は見当たらない。むしろCは睡眠時間が5時間と少ない。これに子供の夜泣きが入ると余計短いだろう。多くの「時間がない」と感じるヒトの場合、B,Cのようなスケジュールだと思う。
実は、B,Cの中にも可処分時間は大いにある。まず注目すべき点は、「出勤時間」である。交通手段は様々であるが、出勤中の時間も可処分時間である。自動車、自転車であれば音声にて聞くことが可能(*自転車のイヤホンは危険です。片方のみなど配慮しましょう)。電車であれば、動画視聴も可能だ。これで、30分〜60分の可処分時間を確保できる。
次の可処分時間は「昼休憩」。この時間にカルテ整理や各種、事務作業を行うものも少なくないだろう。基本的には休憩にあたるので、音声学習は可能だろう。休憩時間は労働者に与えられた時間なので、過ごし方は自由である。
もちろん上記他、“隠された可処分時間”は多いものだ。くれぐれも、睡眠時間を削るようなガッツをみせないほうが良いと考える。まず考えるべきは、睡眠を削るのではなく無駄を省くことである。そうすれば必ず、可処分時間の確保は可能だ。
さぁ本日より4日間連続ではじまる教育事業特集。この特集を通して、わたしが伝えたいことは各サービスの目的、理念に加えて共有したいのは世界観だ。両サービス共に、全く異なる世界観を有している。どちらが「優れている、優れていない」ではない。
そして、今回の特集でもっとも伝えたいことは、このサービスを通して受講者はどう生きるべきなのか?ということだ。ぜひ、特集を通してオンラインサービスの使い方を考えていただければと思う。
ー続く。
【目次】
序章:教育事業1.0~4.0までの歩み
第1章:リハノメを支える3人のペルソナ
第2章:リハデミーのデータ革命