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働き方ノートVol.2 後藤伸正先生

…現実的な話、技師には定年があるのでいつかは終わる時が来ますが、クリエイターや作家としては生涯「凄えユニークなクリエイター」でいたいと思っています。

診療放射線技師 兼 漫画家 兼 クリエイター
後藤伸正 先生


■ 仕事編

Q診療放射線技師になった動機、やりがい

これをいきなり一問一答で語ると読んでいる方が訳分からなくなると思うので、ざっくりと私の略歴から書かせてください。

高校時代:某美術大学を目指し、高校の美術部だけでなく、美術予備校にも通う日々。

高校3年の夏:美術予備校で出会った先生(美大生)と相性が悪く、美術の道を断つ。

この先どうしようと悩んでいた所に、親戚が講師をしていた臨床検査技師に興味が湧く。

18歳:臨床検査技師学校に入学。

21歳:臨床検査技師の免許取得。某病院、検査部に就職。

24歳:検体検査科で、毎日検査結果の数字ばかり見ていて、
ふと「人間の体って数字だけで測れるものなのか?」と思い、画像診断に興味が湧く……①

同院内の診療放射線技師から、画像診断に興味あるなら診療放射線技師をやってはどうかと勧められる……②

25歳:某放射線技師学校夜間部入学。学費がないので、奨学金をもらいながら、昼は働き、夜は学校に行く勤労学生生活を4年間過ごす。

29歳:診療放射線技師免許取得。現在に至る。

そんなこんなとある人生なもので長々と済みません。以上より、技師になった動機は①②ということになるので
しょうか。
 やりがいについては、患者の病変を写真に描出出来た時でしょうか。勿論、診断は医師がするものですが、その画像を提供出来た時は嬉しく思います。

Q漫画家・クリエイターになった動機、やりがい

 動機という大それたものはないのですが、そもそも幼少期から絵は好きで描いてました。
 小学校の時に出会った藤子・F・不二雄先生の作品に感動して、その頃から、先生のような漫画家になりたいなぁとぼんやりとした将来のビジョンはあったと思います。
 先生の作品では、特に「SF短編シリーズ」と「TPぼん」が大好きです。因みに私の漫画初投稿は中学3年生の時の「週刊少年サンデー」で、デビューは24歳の時で「月刊少年マガジン」です。
 やりがいについてですが、漫画においては、私はもうほとんど描くことはないですが、やはり読者の反応です。黙々と部屋にこもって描いているので、アンケートや手紙等の反応があると「あ、届いていたんだ」と嬉しくなります。
 アニメのデザインにおいてのやりがいは、私がデザインしたものがTV画面で動いているのを見た時でしょうか。命を吹き込んで頂いたようで嬉しくなります。

【胤(いん)】
漫画作品でいうと、誌面に出ることはなかったのですが、オーギュスト・ロダンの「地獄の門」をヒントに描いた「胤(いん)」という作品は、当時の担当編集から「後藤さんの画集を描くつもりで描いてください」と自由に描かせて頂いたので楽しかったです。
実は、後述する特撮「GARO~魔戒ノ花#11漫画」の中にもこっそり出てきます。

Q副業を始めて変わったこと(生活スタイルなど)

 副業を始めてからという訳ではないのですが、技師の仕事と絵の仕事、そして、プライベートのON/OFFの切り替えはキッチリするようにしています。
 私だけかも知れませんけど、ペンを持った時は、その前のことは一旦忘れて、リセットした頭で考えた方が能率が上がるので、ある時間まで考え抜いたら、途中でも手を止めて、あえて飲みに行きます←飲むんかい!

Q将来どちらを専業にしていきたいですか?

 答えになっているのか分かりませんが、現実的な話、技師には定年があるのでいつかは終わる時が来ます。
 しかし、クリエイターや作家としては、死ぬまで描き続けることは出来るので、細々でも可能な限り絵は描き続けていきたいと思っています…と同時に、生前、声優の1)井上真樹夫さんに「このお方は凄えユニークなクリエーターさんだよ!!(原文まま)」とTwitterで言って頂いたので、生涯「凄えユニークなクリエーター」でいたいと思ってます!

■ プライベート編

~ある一日のスケジュール~

6:30 起床:メールチェック(各社からデザインの修正等ないか確認)デザイン参加したアニメが放映された翌朝なら登場カットとクレジットの確認

7:45 出勤

8:30 仕事開始

13:00 昼休み:昼食取りながら、朝にメールで来た修正やメールの返信

14:00 午後の診察開始

17:30 終業

17:45 スポーツジム。筋トレがメインですが、有酸素の日はスマホにDLしたアニメや映画のを観ながら走ります。

19:00 帰宅。晩飯

20:00 デザイン等の執筆、または電話等での打合せ

23:00 就寝

Q趣味

 趣味は多くて、国内外旅行、道の駅巡り、スキー、登山、映画鑑賞、音楽鑑賞、絵画鑑賞、写真、居酒屋巡り、筋トレ等で、最近は珈琲を少々。
 とにかく興味のあることはまずやってみます。…で、自分に合わなそうだったら止めます。因みに趣味で脱落したのは、グラススキー、スノーボード、アコースティックギター、ローラーブレイド、大道芸、スキューバダイビング(Cカードは持ってる)等々

■ 後藤先生に聞きたい!

Qご自身の作品で一番のお気に入り、またはお気に入りのシーン、キャラクター

 アニメでは、デザイン協力させて頂いた「GARO(炎の刻印、紅蓮ノ月)」のホラー達と特撮では作画担当させて頂いた「GARO~魔戒ノ花#11漫画」の漫画たちです。
 脚本を基にデザインの発注が来るのですが、自分にはない発想があり、勉強にもなり、楽しかったです。

【アニメ「GARO~炎の刻印」より】
©2014「炎の刻印」 雨宮慶太/東北新社
【特撮「牙狼GARO~魔戒ノ花 #11漫画」より】
©2014 雨宮慶太/東北新社

Q後藤先生の作品「シニガマエ」について見どころを教えてください!

 「満月が2つ出る夜に死神が現れる」そんな都市伝説が囁かれる東京第24区「富士見区」、別名「不死の街、不死身区」。
そこにはどんな「死」も存在しない。そんな街に現れる死神。死を求める少女。その街には何故「死」が存在しないのか?その秘密とは?
 今は廃刊になりました「月刊マガジンZ(講談社)」に掲載されたホラーアクション作品です。
 当時の担当編集の意向により、ほとんどトーンを使わず、筆ペンとペンでガシガシ描いた為、掲載時の誌面では真っ黒に潰れまくって何を描いているのかさっぱり分からなかったので、それらの問題をクリアにし、リメイクしたデジタルコミックをAmazonにて発売中です。宜しかったら是非ご一読下さいませ。

【シニガマエ】

Qヤングブラックジャックの監修することになったきっかけ

 「ヤングブラックジャック」の脚本をされている田畑由秋先生2)にお声かけ頂いたのがきっかけです。
 田畑先生は私が20代の時にアシスタントでお世話になった漫画家、風童じゅん先生3)の先輩アシスタントで、それ以来の付き合いです。
 お話を頂いた時は、医師でもない私が医療監修なんておこがましい、きっと務まらないと思い、連載立ち上げまでの設定協力という体で、当時の研修医制度や学生運動等の時代背景等作り込んでいっていたのですが、田畑先生から「この作品では、”医療”というより”昭和”を描きたいんだよね」という話が出て、「あ、だったら、もう一歩踏み込んで何か出来るかも」と思ってた所に、「聞きづらい質問も聞きやすいし、このまま医療監修やってくれない?」と田畑先生から言われて、「あ、はい、じゃぁ頑張ります」って感じでした。

【「ヤング・ブラック・ジャック」】
Ⓒ手塚プロダクション
Ⓒ田畑由秋・大熊ゆうご(秋田書店)2012」

Q監修のお仕事をするうえで難しく感じること

 この作品は、有名な手塚治虫先生のブラックジャック(以下BJ)が何故無免許医になったのか?を描く、研修医時代のBJが主人公の漫画なのですが、舞台は1968年、いざ監修の作業に入ったら、その当時はCTもまだ日本にはなく(日本初のCT導入は1975年)、あれ?じゃぁ、この病気の確定診断は何でするの?しかもオリジナルのBJより前の時代だから、BJよりもっと医療機器が少ないじゃないか!といきなり頭を抱えることに。
 その為、医療機器メーカー数社に問い合わせて、先ず医療機器の歴史を勉強、この時代で出来ること出来ないことを把握することから始めました。
 そして、本編に入ると、予想していた事態が早々に起こりました。
 解剖学や生理学、病理学や免疫学等、基礎的なことは臨床検査技師と診療放射線技師の勉強と経験で理解していたつもりでしたが、BJは外科医…しかもただの外科医ではなく、無免許の天才外科医!なので、当たり前ですが、私の知識じゃ到底足りなかったのです!やはりおこがましかった!
ですので、脚本においては、まず田畑先生から脚本のプロットを頂いて、その脚本に沿う医学書やドキュメントを読んだり見たり、そして知り合いの医師に相談したりして、その後、上がってきた脚本に肉付けをしていきました。
 その後の作画においては、大熊先生にその都度作画に必要な資料を揃えお渡しし、どうしても伝わらないとか、難しいとか、若しくは締め切りに間に合わないとかいう場合は私が描いたりしてました。
 私が描いたと言えば、単行本時に私が描き直している箇所も所々あります。雑誌とコミックスを持っている方は雑誌掲載時と何が、何故変わったのかを考えながら比べてみると違う楽しみ方が出来るかもしれません。
 アニメの方の医療監修は、脚本会議(監督、脚本家、プロデューサー他が集まる場で、その回の医療シーンの要点説明と相談)→上がった脚本修正(回によっては何稿か修正)→絵コンテ(レイアウトや秒数が描かれたシート)のチェック(医療カットの注意事項記入、必要に応じて別紙で説明)→アフレコ(医療用語のイントネーション、呼吸など演技の指導)→ビデオ編集(医療機器のブザー音やその他効果音のチェック)という感じで監修に入り、あとはハメ込みで使用するレントゲン写真やカルテ等も作成しました。
 作成と言えば、某医療機器を3Dで作るので三面図を切って欲しいと言われて、勿論そんな時代の機器は見たこともないので、アニメ制作会社の方と印西市の医科機器歴史博物館に実物を見に行って、分解されてたパーツはその機器関連の本を買って各パーツの構造と意味を理解して、描きおこしたりしましたね。使われなかったけど…(ぼそっ)
 あと、漫画とアニメでは、それぞれで求められているものが違うので、一度漫画の方で監修した話を、アニメに合わせて又、監修し直すのが結構な作業でした。そして、当たり前なのですが、漫画は単行本収録時に修正出来ても、アニメは放送されてしまったらもう修正が出来ないので、今思えば、もうちょっと踏み込んで監修すればよかった等色々反省しました。もし2期があるようでしたら、その反省を活かしたいです。
 とはいえ、当時出来ることは、時間を惜しまず頑張ったので、漫画もアニメも観て頂けると嬉しいです。

Q座右の銘は?

「継続は機なり」
やり続けていれば、チャンス(機)は廻ってきます。
その日の為に焦らず諦めず、力を付け、蓄えている事が一番大事かと思っています。

<注釈>
1)「巨人の星」花形満役、「ルパン三世」(二代目)石川五右衛門役、「宇宙海賊キャプテン・ハーロック」ハーロック役他
2) 著書「真マジンガーZERO」「ニンジャスレイヤー」「コミックマスターJ」「アクメツ」他
3) 著書「HAYATE」「GUT’S」「バイキングス」「しょくだま」「そら色ウォール」他

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