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信頼が生み出す医療の可能性|ブランディングとプラセボの共通点
はじめに
前回は、「#1_なぜ『ドクター個人』のブランディングが必要なのか」についてお話ししました。
今回はドクターのブランディングが治療の質にどのように影響を与えるのか解説していきます。
プラセボ効果のメカニズムは信頼感
読者の皆さまに改めてプラセボ効果について説明することは釈迦に説法であることは承知していますが、
プラセボ効果(Placebo Effect)は、実際には有効成分を含まない治療や薬剤(プラセボ)を用いた場合でも、患者さまが「治療を受けている」という信念や期待によって、症状が改善する現象を指します。
2018年4月2日に医学誌「International Review of Neurobiology」に掲載された論文によると、
プラセボ効果は、患者さまが治療や医師に対して信頼感を抱くことで脳内の神経伝達物質やホルモンが作用し、症状の改善を引き起こす現象です。
具体的には、脳内のドーパミンやエンドルフィンの分泌、前帯状皮質や前頭前野が活性化することで、痛みの軽減や幸福感が増幅されることが証明されています。
これらの反応は、治療の内容そのものではなく、治療を「信じる心」から発生するものです。
メディカルブランディングが持つプラセボ的な力
臨床におけるプラセボ効果の作用機序をブランディングに置き換えると、次のような共通点が浮かび上がります。
1. 信頼関係の構築が引き金を引く
プラセボ効果は、患者さまが「この薬は効く」「このドクターは信頼できる」と思うことで発生します。
同じように、ブランディングは患者さまに「このドクターなら大丈夫」「この治療を信じても良い」と感じさせることで、治療そのものの価値を引き上げます。
たとえば患者さまが受診前に、ドクターの経歴や医療理念を見て、パーソナルな価値観に共感をして、「このドクターは専門性が高い。」「この先生なら心から信頼できる。」と感じるプロセスは、医療そのものの質を高めることにつながるのです。
2. 一貫したメッセージが脳に影響を与える
プラセボ効果では、治療の「見た目」や「儀式的な要素」が重要な役割を果たします。
例えば、白衣を着た臨床医と研究医が診療する場面そのものがプラセボ効果を増幅することがあると証明されています。
同じように、ドクターのブランディングにおいても、一貫したメッセージや専門性の訴求、上質なビジュアルは患者さまの脳に作用します。
たとえば、クリニックのホームページ、ドクターのウェブサイト、SNSでの発信内容が一貫していると、患者さまの潜在的な信頼感が強化されます。
そのため、ブランディングの全体像を設計し、上流から下流の発信まで一貫したメッセージを打ち出すこともとても重要です。
3. 患者さまの期待を増幅させる
プラセボ効果では、患者さまが信頼感によって治療に「期待」を抱くことで、その期待が自己改善のプロセスを生み出します。
ドクター個人のブランディングを強化することも同様に、患者さまの「この医師なら大丈夫」という”期待”と”安心”を形成します。
その結果、患者さまは診療に積極的に参加し、治療効果が心理的に増幅されます。期待が現実となるこのプロセスは、ドクターのブランディングが医療の質を高める鍵と言えます。
ブランディングが、ドクターに不可欠な理由
ドクターが提供する医療サービスそのものの質を上げることは、患者さまにとって最重要な要素です。
しかし、その治療のそのもの価値をさらに高めるためには、
患者さまが「この治療を信じられる」「このドクターに託したい」と感じることもとても重要です。
私たちは、そのように患者さまに感じてもらうブランディングを「メディカルブランディング」と定義しています。
メディカルブランディングは、その信頼と期待を「可視化」し、患者さまに伝える手段です。プラセボ効果が医療の成果を上げるのと同様、メディカルブランディングは信頼を増幅し、患者さまとの強固な関係を築く基盤となります。
プラセボ的な視点から始めるメディカルブランディング
「信頼」は、医療の力を最大化するための不可欠な要素です。
プラセボ効果のように、信頼を軸としたコミュニケーションやブランディングは、患者さまの医療体験の質を向上させ、ドクターと患者の関係を深めます。
ブランディングを、単なる「集客マーケティングの手段」と捉えるのではなく、患者さまとの信頼を増幅する、医療の延長線上として活用することが、これからの医療には求められていますと信じています。
このような視点で、ご自身のブランディング(=関係構築のためのコンテンツ発信)について考えてみてはいかがでしょうか。
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