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なぜヘパリン起因性血小板減少症(HIT)はヘパリン投与後すぐに発症しないの?

ヘパリン起因性血小板減少症はICUなどでよく見られ、ヘパリン投与後5日以降に発症するヘパリン抗体性の血栓性疾患です¹。血小板は減少しますが、主に血栓を形成します。

なぜヘパリン投与後すぐに発症しないかというと、この疾患は抗体が原因なので、抗体産生に5日以上かかるんですね²。中には30日経過して発症する方もいます。

では、なぜ血栓傾向を示すのでしょうか?血小板減少であれば出血しそうな感じがします。

…実は、原因であるヘパリン+血小板第4因子(PF4)に対する自己抗体(HIT抗体)は血小板にも結合し、血管内皮細胞のヘパリン様構造(ヘパラン硫酸など)に血小板をくっつけてしまうんですね¹。
さらに、抗体が結合している血小板は活性化し、さらにPF4を分泌→抗体結合→血小板凝集→…と悪循環を呈します。DICと血液検査似ており、鑑別が難しいので抗体を測ります。

これが血小板減少なのに血栓傾向を示す理由です。抗体が内皮細胞に血小板をくっつけまくるので、消費性に血栓になっていき減少しているのですね。

ちなみに治療は速やかにアルガトロバンによる抗血栓療法+ヘパリン中止(ヘパリンロックも含め全て❕)
その後、抗凝固状態が安定し、血小板数>15万/μL以上となった時点でワーファリンによる抗凝固療法を少量から開始します¹。
※近年では細菌にもPF4様抗原があり、健常者でも0.3-0.5%にHIT抗体がみられることが明らかになっています。

参考
1)Brieger DB at.al. Heparin-induced thrombocytopenia. J Am Coll Cardiol. 1998 Jun;31(7):1449-59.
2)https://hospi.sakura.ne.jp/wp/wp-content/themes/generalist/img/medical/jhn-cq-iizuka-150501.pdf


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