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なぜ筋強直性ジストロフィーでは糖尿病を合併するの?病態機序から考える
筋強直性ジストロフィーは、針筋電図での急降下爆撃音や舌の叩打によって舌のクローバ状変形がおこる「叩打性ミオトニア」が特徴的ですよね。
しかし、なぜ叩くだけでここまで過収縮するのでしょう?
また、他の筋ジストロフィーと違って糖尿病や白内障など様々な異常を合併します。なにが他のジストロフィーと違うのでしょうか?
ここで、筋強直性ジストロフィーとはどのような疾患だったかおさらいしましょう。
筋強直性ジストロフィーとは?
筋強直性ジストロフィーとは成人で最も頻度の高い筋ジストロフィー症であり、常染色体優性遺伝性疾患です。CUGの繰り返し配列異常と、その異常RNAが核内蓄積して、様々な蛋白質の発現異常をきたし、全身に症状がみられます³。他の筋ジストロフィーではトリプレットリピートによる異常RNAの蓄積が原因ではないので、筋肉以外の症状がみられにくいんですね。
筋肉の過収縮
では、なぜ筋強直性ジストロフィーでは筋肉が過収縮(ミオトニア)するのでしょう?
実は、筋強直性ジストロフィーでは異常RNAにより細胞表面のCl-イオンチャネルの発現が減少しており、それにより筋肉の興奮異常が起きていることが明らかになっています¹。Cl-イオンは興奮の最後に流入して細胞を興奮から戻す働きをします²(再分極)。そのためCl-が細胞内に入り込むためのCl-イオンチャネルが少なくなると、筋肉が興奮状態から戻ってこれなくなるんですね。
筋強直性ジストロフィーで耐糖能異常が起きる理由
筋強直ジストロフィーでは前述の通り耐糖能異常もみられます。これは、CUGトリプレットリピートによる異常RNAによりインスリン受容体の発現に異常をきたすためなのです³。
このように病態機序から整理してみると、どれも同じような筋ジストロフィーでも大きな違いがあることがわかりますね。
参考
1)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12150905/
2)https://www.tmd.ac.jp/artsci/biol/textlife/transmitter.htm
3)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/33/3/33_328/_pdf/-char/ja