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心房・心室中隔欠損症の心負荷がわからない!

先天性心疾患は構造や病態、治療が多岐にわたり非常に難しい分野の1つですよね。苦手な方も多いのではないでしょうか。
ここでは、基本的な心房中隔欠損症・心室中隔欠損症の血行動態についてお話します。


心房中隔欠損症の病態と血行動態

心房中隔欠損症は成人で最多の先天性心疾患(無症状経過が多いため)で、左房と右房の間が無くなっています。

これにより、左房→右房→右室→肺へ血流が増えてしまい、右心負荷がみられます。そして肺に弁の大きさに見合わない大量の血流が流れ続けていき、相対的肺動脈狭窄症(相対的PS)、最終的には肺高血圧症になります。

ここで、肺→左室へ血流が流れ込むから左心負荷も起きるのでは?と思う方もいらっしゃると思います。私も初学のときはそう思っていました。

ですが実際にはそうではありません。実は、肺に流れ込んだ血流は再び左房から右房へ流れ込むので左室には届きません。そのため、心房中隔欠損症では右心負荷だけなのです。

心室中隔欠損症の病態と血行動態

心室中隔欠損症は最多の先天性心疾患(新生児で最多)で、左室と右室の間が無くなっています。

これにより、左室→(右室)→肺→左房→左室へ血流が増えてしまい、左心負荷+肺高血圧がみられます。
Qp/Qs>2.0の肺高血圧では通常2歳までに手術!

ここで、左室→右室へ血流が流れ込むからすぐに右心負荷も起きるのでは?と思う方もいらっしゃると思います。確かに肺高血圧を呈すると、その手前の右心室にも負荷がかかりますが相当重症ですし、その場合、逆に右室圧が高くなりすぎて右→左シャントとなります。まず初期にはみられません。

左室から右室に血液が流れ込んでいるのになぜでしょう……?

これは”いつ”左室から右室に血流が流れ込むか思い出してみると良いです。
それは収縮期ですよね。収縮期には肺動脈弁は開いているので、左室→右室に流れ込むと同時に、開いている肺動脈弁から肺へ血流が流れ込みます
つまり、右室には確かに血流は流れ込みますが、初期には留まらず、肺へそのまま受け流されるのです。

まとめ
心房中隔欠損症:◯右心負荷 ✕左心負荷 ◯肺高血圧 
心室中隔欠損症:△右心負荷 ◯左心負荷 ◯肺高血圧
△肺高血圧が重度になるとみられる

補足:なぜ心房中隔欠損症では全収縮期雑音ではなく、収縮期駆出性雑音なの?

心室中隔欠損症では欠損孔を血流が通過する全収縮期雑音が聞かれます。
そうなると心房中隔欠損症でも欠損孔を通過する雑音が聞かれるのでは…?と思うのが普通だと思います。実は聞かれません。

理由は、左右房の圧較差は左右室の圧較差に比べて非常に小さいため、そもそも音として聞こえないのです。

では、心房中隔欠損症の雑音は何なのでしょうか…?
それは相対的肺動脈弁狭窄症(相対的PS)による収縮期駆出性雑音(+Ⅱ音固定性分裂)です。前述の通り、右室に左房からの血流が過剰に流れ込むので、肺動脈弁に見合わない大量の血流が一気に流れ込むので相対的に狭くなるんですね。


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