抗血小板薬と抗凝固薬の使い分けは?
よく同じ血栓症なのに
1.抗血小板薬を使う疾患(心筋梗塞、アテローム性脳梗塞、ラクナ梗塞)
2.抗凝固薬を使う疾患(心原性脳梗塞、肺血栓塞栓症 etc.)
に分けられますよね。この違いは何でしょうか。
▶動脈血栓について
動脈ではつぎのように血栓ができます。
速い血流が動脈壁を傷つけたところ
血管壁にくっついたコレステロールの塊(アテローム)が破れたところ
に血小板がくっついて血栓となります。傷ついた血管内皮細胞が血小板を呼び止めて、血小板の蓋を作るんですね。そのため、原因である血小板に抵抗するために抗血小板薬を用います。
▶静脈血栓について
血管は傷つけられなくてもうっ血すると、炎症のような反応を起こして白血球、単球、血小板などを呼び寄せます¹。
そして様々な反応の末、トロンビンを活性化してフィブリン塊を形成します。このトロンビンを阻害すればよいので抗凝固薬が用いられるのです。
▶NOAC?頭蓋内出血が少ない?
以前まではこのトロンビンを活性化する手前を阻害するワーファリンが心原性脳梗塞再発予防に用いられていましたが、副作用の頭蓋内出血が問題となっていました。
そこで、直接トロンビンを阻害するNOAC(エリキュース®やリクシアナ®)が開発されしました。これは第Ⅶ因子(外因性凝固反応のスタート)を阻害しないので頭蓋内出血が激減します²。第Ⅶ因子は脳血管が傷ついた時に止血をする反応のスタートなので、たしかにこれを阻害しなければ出血はしませんね。
参考
1)https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2017.890333/data/
2)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jse/31/3/31_3_287/_pdf
3)https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2014/PA03088_03