経済に無知な一医学生が現代経済学に触れてのつぶやき【現代経済学の直観的方法】
・出会い
「現代経済学の直観的方法」
極めて難しいタイトルに目を背けたくなるが、kindleで試し読みした途端に
「これは今すぐ読まなくては」
と思ってしまった。
私だけかもしれないが、医師(医学生)は医学以外の教養にはとことん弱い。
これからの時代、医師一筋、第一線で活躍できる人はそう多くないと思う。
これから迎えるそんな時代を生き抜くために最低限の教養を得、それを生かしていかなければいけない。
その中でもかなり身近である「おカネ」の話。
医師はマネーリテラシーに弱いと言われている。
これから医師の収入も減っていくようになり、これからの時代は医師も最低限のおカネの知識がなければ不自由なく暮らしていくことも損なわれかねない。
そこでお金が絡む経済学の理解を深めるための一冊を探していた。
サブスクであるNewsPicksの記事に登場していた本書の記事を見つけ、
「経済というものが全く分からず予備知識もほとんどない読者がそれを一冊もっていれば、通勤通学などの間に1日あたり数十ページ分の読書をしていくだけで、1週間から10日程度で経済学の大筋をマスターできる」
という本書「現代経済学の直観的方法」はうってつけの本であると思い、購入に至る。
・本からの学び、つぶやき
現代経済学の様々な事柄を1冊で理解させてくれる本書だけに、情報量がとてつもなく多い。
そこで、今回はアメリカと日本の経済に絡むつぶやきを…
・アメリカ・ファースト(アメリカ経済のお話)
「アメリカ・ファースト」という言葉をここ数年よく耳にしたと思う。
ご存知の通り、まもなく政権を終えるドナルド・トランプ大統領の言葉だ。
もともと1992年に主張されたものであるが、自国の社会や経済を最優先するべきだという考え方で、今回は本書を読んで経済(貿易)の観点からのアメリカ・ファーストがなぜ謳われたのか考えてみた。
トランプ大統領は経済学出身であり、経済に長けた人物だ。
そのトランプ大統領がアメリカ・ファーストを謳い、保護貿易に向かったのはなぜなのか。
これは貿易の仕組みが関係している。
土地や気候など様々に異なる世界各地では、当たり前であるが品物の産出量にばらつきがある。そのばらつき具合によって需要と供給による価格差が各地で生じ、貿易では利益を生み出すことが可能になるのである。
世界のネットワークがますます強固なものになり、経済的な国境線は消滅してきており、国家間の貿易という概念は消滅し、国際貿易やその流通は単なる巨大な一国内の宅配業というようなものに過ぎなくなる。
そこで自由貿易はその利益を保護するためにも保護主義的な色彩を帯びざるを得なくなっているのだ。
経済を知るトランプ大統領の決断は経済(貿易)だけをみれば、国益を考えたときに経済的な国境線消滅を危惧していたことがひとつの背景として存在していたのではないかと感じる。
・経済はなぜ成長し続けなければいけないのか(日本経済のお話)
昨年、潰瘍性大腸炎の悪化に伴い総理大臣の職を辞した安倍前総理。
安倍政権ではアベノミクスを掲げ、実質経済成長率2%の水準を目指した政策が打ち出されていた。
経済成長が国にとって重要なのは分かっていたが、それがなぜ必要であったのか。
経済に無知であるが故に全く理解していなかった。
答えを述べると
成長を続けなければならないのは、資本主義というシステムが必然的に持たざるを得ない宿命であったから
である。
これには金利の存在が影響している。
製造機械などを導入する際に資金を銀行から借りるが、利子を払わねばならず、借りた資金を前よりも肥さない限り利払いはできないため、ひたすら売り上げ拡大に邁進しなければいけない、ということだ。
これが経済成長となって表れていたのだ。
この30年の世界全体の経済成長は年率2から4%であり、要するにこれが資本主義社会がそう問題なくやっていける標準的な値と解釈でき、日本が目指す値についても納得である。
(この経済成長のスピードは二十数年で経済が2倍に拡大するレベルを示しているがこれを維持していくのは極めて非現実的で、経済成長の速度を遅くするメカニズムが必要。)
また、日本の資本主義を動かしているのが
他国の資本主義から自国を守るための資本主義
であり、これは、日本が19世紀の産業社会の到来によって、このまま身ぐるみ剥がされてしまうと恐怖を経験し、この「心配」の精神をもつ日本の国民性が資本主義を駆動している。
これにも納得できる。
今では改善されつつあるが、それでも日本人の労働時間は長いとされている。
この背景にも「今の地位を失うのが心配だから必死に働く」という日本の資本主義の負の側面が見えているようにも感じる。
なかなか進まない働き方改革もここに多少なりとも根ざしているように思え、国民性が絡む問題がすぐに改善されないのはよく分かる。
さらに、日本の「心配」の精神をもつ国民性が老後2000万円問題に直面したとき、一目散に消費を控え、貯蓄に走ってしまう現象にも繋がっているのではないか。
長期を見据えた投資に対してなかなか積極的になれない日本人の国民性がここでも浮き彫りになっているのでは…。
・最後に
話は少し逸れるが、最近見た中田敦彦のYouTube大学の【2040年の未来予測】が印象に残っており、そこでは日本の衰退というテーマがあった。
『日本に実際に住んでいる身としては衰退を大きく実感することはない。
しかし、確実に人口減少が進んでいる今の日本はすでに衰退への道を進んでいる。』
この動画を見て私は「心配」になった。
多くの人はその事実を知らない。
このままでは日本は世界から遅れをとり、どんどん衰退していく。
「心配」の精神を持つ日本の国民性だからこそ、この事実を受け入れ、変わるところは変わっていかなくてはいけない。国民の意識改革がまず日本には必要である。
と思ったここ最近であった。