ある時、私は地獄を見た
ある時、私はうつ病を発症し休職、協会けんぽから傷病手当金を支給されつつ、家賃や社会保険や年金を払っていた。給料の3分の1程の傷病手当金が命を繋ぐ唯一の収入源だった。
しかし、傷病手当金を払いながら社会保険(普通は折半だが、休職すると全額自分で負担)や年金、住民税を払い家賃を払うのは容易なことではなかった。
既に、これらの合計が傷病手当金を上回っていたため、いずれ生活が破綻することを意味していた。
一向に治る気配のないうつ病。働きたくても働けない罪悪感。日々貯金額が減っていく恐怖。自殺を常に考える日々。
親に援助を求めることも考えたが、親も既に年金暮らしのために負担をかけたくないのと、今まで迷惑をかけてたうえに、惨めな自分を見られるのが嫌だというプライドが邪魔をして「助けてほしい」と申し出ることが出来なかった。
そして会社を退職、毎日を何もせず死ぬことばかりを考えていた。そして1年6か月の給付期間を過ぎ、次に失業手当を受給するも3か月では持つはずもなく、ついに収入源を失った。
年金を免除してもらい、税金も市に相談に生き減免措置をしていただいたが、それでも生活は苦しかった。働けず、お金がどんどん減っていく。
そこで私が手を出したのがクレジットカードでのキャッシングだった。会社員時代に作った数枚のクレジットカードを使い約200万円ほどの借金をした。
この時に、人生で初めて親以外から借金をした。それも200万近い大金。しかし生活していくにはこれしか道はなかった。正直に親に助けを求めていれば何とかなったのかもしれないが。
当時、結婚はしていなかったが彼女がいた。彼女にもこのみじめな生活は明かしていなかった。正直に助けてもらえばこんな惨めな思いはしなくてもよかったのかもしれない。
しかし、プライドが邪魔をして正直に言えなかった。
そこから、私は面白いように人生の階段を転げ落ちていった。仕事が決まっても、うつの影響で体が動かく行けないことが度々あり、仕事がまるで出来ない状況。
借りた200万は、その返済と生活費ですぐに消えてなくなった。もう200万円を返すことが出来ない。月々の返済すらままならない状況。家賃も払えず、ついに闇金に手を出した。
家賃と生活費欲しさにやってしまった。3日後には5万円返済しないといけない。無理だと分かっていても家賃を払わないと追い出されるという思いから、返済できるわけもなく、3日後には取り立ての電話が鳴り続いた。
そんな生活がいつまでも続くわけがなく、ついに彼女に打ち明けた。彼女は貯金をはたいて私の借金を返済してくれた
本当に涙が出た。何もしてやれない自分が悔しくて、情けなくて。
彼女は「どうして早く言わなかったの」「そんなことで私が離れると思ったの?」「プライドなんて捨てて飛び込んでくればよかったのに」と言われたのが心に突き刺さった。
大切な人に迷惑をかけたことは今でも心に突き刺さっているが、今は何とかメディアの運営で飯が食え、貯金もできるくらいにまで持ち直した。
お金がなくなり、生きることに必死になると、人というのは面白いように転落していく。クレジットカードでお金を借りても返すあてがないのに、闇金なんかに手を出したら恐ろしい目に遭うのがわかっていたのに。
わかっているのにやってしまう。テレビでよく借金まみれで苦しんでいる人が出ていたりするが、底の底にまで落ちてしまった人間にしか理解出来ないものがある。
本当にあの時期は地獄だった。必死に地べた這いずり回って生きていた。プライドなんてあの時に全て捨てて今まできた。
人間というものは弱い。本当に弱い。何かの歯車が狂い出すと、面白いように狂いだす。転落するのはあっという間だ。這い上がるのにはものすごく時間がかかるのに。
だが、あの時の経験は今は非常に大きかったと思っている。地獄を見たからこそ、思う。
本当に苦しいときは親や大事な人に助けを求めるのも重要なことだと思う。プライドなんて捨てて助けを求めると何とかなるかもしれない。
もう二度とあのような地獄を味わうのはごめんだ。