私の推しは罪状7件~6/10裁判未遂レポ~

・前書き、そして言い訳(冗長なので読み飛ばし推奨)

この文章は、現在京都地裁にて行われている裁判「アヤワスカ裁判」を追いかけ、被告人である青井硝子氏と氏の妻を「推し」として面白がる、一傍聴人による超個人的なレポートである。

本稿は6/10、結審のはずが裁判員のコロナ感染により裁判が延期となり、代わりに薬草研究会が開かれた日について記載している。
今後は有料部分を追加する予定であるものの、情報過多で書ききれるか分からなくなってきたので途中までの分を無料公開する事にした。

さて、これを書くにあたり、最初に一つ言わなければならない。

ここに書かれている事は軒並み事実である。

恐らく、この文章を読まれた方の過半数は「何だこれ?薬キメながら書いた私小説?」という困惑を抱くだろう。
みだりに他人の頭を混乱させてしまい申し訳ないが、しかし書いている私が一番訳分かんねぇなと思っているし、裁判の常連である学者先生でさえ「このアヤワスカ裁判自体が極度の非日常であり、一種のトリップなのだ」と仰っていたのだから、これはある種のトリップ体験レポートでもあるのだ。

その為、本稿が常識を窓から投げ捨てた怪文書になってしまったのはある種必然であり、仕方がない事だと言わざるを得ない。

さて、言い訳は程々に、今回のトリップレポートを以下に記録するので、私の体験に付き合って頂ければ大変幸いに思う。

・前日譚、伏見稲荷と謎ラップ

せめて失笑してくれと心から願っているのでこのくだりを入れておく。

前回の裁判の際、京都の伏見稲荷大社及び安井金毘羅宮に赴いた。
その際、伏見稲荷にある「おもかる石」という願掛け石にちょっとした願掛けをした所見事に叶ったので、今回はお礼参りとして朝一に参ずる事にした。

しかしながら、神仏知識はまるで皆無のこの頭、お礼参りと言っても何をしたら良いのやらサッパリ分からない。
その点、よくよく考えてみれば私の推したる青井さんはその道のプロではないか。
色々あって連絡先は知っている事だし、折角なのでここは先人の意見を仰いでみる事にした。

青井さん『キツネさんなら油揚げのお供えか、あと韻を踏むのが好きだからラップとか投げとくと良いよ!』

韻???

韻ってアレだよな、ラッパーがよくやっている、母音が似た単語を重ねて発話するという。
完全に初耳である。
というか神仏知識も霊感もゼロの身からすると、「キツネは韻を踏むのが好き」という文章を読む事は出来るものの、その内容の理解が全く出来ずに頭が混乱しまくっている。
神話にいそうな白狐が私の脳内を跳ねまわり、ホーミィHeyYoと鳴き始めた。

いやしかしまぁ、私は無学者であり、青井さんはその手の有識者だ。
何より推しがそう言っているんだし、完全に分からないが多分きっとそうなのだろう。
私は首を傾げながら「キツネ 霊 韻」「キツネ ラップ」という検索ワードを会社のPCに打ち込んでみたが、検索結果は皆無だった。

結果として当日、千本鳥居の朱色を朝日が照らし始める伏見稲荷大社、私はお賽銭を投げて手を合わせ、願いが叶った事への感謝を、そして青井さんと話した事のあらましを十分に説明してから、10分で頭を絞って考えたクソみたいな謎ラップを頭の中で曝け出した。

キツネさんが本当に存在するのだとしたら大困惑である。
伏見稲荷大社にて、はるばる静岡から鳥居をくぐったかと思えばいきなり賽銭箱の前でラップを唱え出した参拝客が今この瞬間発生したのだ。
人間が切なる執念を打ち明け始めた事は多々あろうが、人間が突然ラップを打ち明け始めた例が過去にいくつ存在しただろうと考えると、甚だキツネさんの心中を察するばかりである。

私はそして最後に、「マジで全然分からないんですけれど、もしこの情報が間違っていたら本当にすみませんでした」と謝罪の言葉で締め、神社を後にした。

・研究会当日、推し夫妻の概念礼装がヤバい

さて6月10日、結審2nd空振りのこの日は「薬草研究会」が開かれる予定だった。
研究会とは言っても、今回の裁判の概要と今後の展望を青井さんや弁護士先生が説明し、他は薬草情報や薬草文化、個々人の持つ思想等を、京都の幻の銘菓「豆餅」を食べながら語り合うという、ちょっとした座談会みたいな物だ。
今回はノー裁判という事で、私は「NOT TODAY」と書かれたクッソラフなTシャツで、昼食の待ち合わせ場である喫茶店の前で待っていた。

目の前に令和最新版宗教アートを身に纏った男が現れた。

裸足にサンダル、青い羽の付いたカラフルな毛糸のバンダナを額に巻き、オーバーサイズのシャツは黒地に梵字のプリントを中心として、青や緑で幾何学の曼陀羅模様を描いている。
ボトムスのサルエルパンツは青地に、まるであの世の火花を思わせる様々な色の雫が散りばめられていた。
隣には、白地に花弁を思わせる紺色の曼陀羅模様が描かれたワンピースとカーディガン、手には6角形の模様が全面に配置された手編みのバスケットを携えた美女。
青井夫妻である。京都の伝統的格式美に包まれた街並みが、そこだけアメリカレイヴ会場の一角へと変貌を遂げていた。
最高にファンキーな、しかし夫妻が夫妻だけに日頃のスーツ姿の数倍どころか滅茶苦茶似合っている出で立ちを賛美しながら、 (やべぇドレスコード間違えたかな)と内心に一抹の不安を抱え店内へ。
お店はご婦人が一人で経営する、落ち着いた昔ながらの喫茶店だった。

・「あ」のお母さんと「ん」のお母さん、そしてキツネさん

初夏のうららかな南中がガラスドアを通る喫茶店、3人でオムライスをつつきながらこんな話をした。
「『ある女の子がお母さんを殺したところ、そのお母さんの霊がタイプライターに憑依し、五十音となったお母さんが「あ」のお母さんから「ん」のお母さんまで分裂増殖して、最後は大回転音頭を踊り出す』という内容の小説が日本に実在する (笙野頼子『母の発達』)。」

この謎小説の凄い所として、先に挙げた文章は難しい言葉が一切使われておらず、ほぼ誰でも読む事が出来る一方、その意味が全く理解出来ないという事だ。
単語も拾えるし、なんならその状況を薄らぼんやり思い浮かべる事さえ出来るけれど、その意味がまるで分からない。
確かアカシア茶を飲むと言葉の意味が分からなくなるのだそうだが、恐らくこの「あ」のお母さん状態になるのだろうか。なるほど確かに分からない。
作者の笙野頼子氏は日頃からこんな文章を書いているのだそうで、素面の状態でトリップしている人間がこの世には存在するものだなぁとしみじみ感心した。

ふと分からない話で思い出したのが、件の「キツネさんは韻を踏むのが好き」だ。
そういえばあの話は検索しても何の情報もヒットしなかったが、一体どこが出所だったのだろう?
私は彼に問い、聞いた事のある名前を彼が答えた途端、嫁さんが
「アンタ!あの人は(スピリチュアルに)ぶっ飛んでんだから話を鵜吞みにするのはアカンでしょ!」

ああ、あの人かー……!!

説明すると、私が名前だけたまに聞く、スピリチュアルにぶっ飛んでいる方が日本に暮らしている。(仮にA氏とする)
A氏はどうも宇宙と交信したり踊りながら神仏を理解したりする事に長けた方らしいのだが、私としては以前聞いた『訪ねて来た青井さんに対して、「これが密教だッ!」と言いながら首を絞めてきた』というエピソードのインパクトが忘れられない、まぁ、そういった感じの人である。
この方に関してはお会いした事が無いので不明な所が多いのだが、ともかく、「キツネさんは韻を踏むのが好き」という話はA氏の個人的体験(?)によるものだそうで。

つまり、私は首を絞めて密教を布教するA氏の話を聞いた青井さんの話を更に又聞きして、よく分からないまま「まぁ推しの話だし」と妄信し、その結果伏見稲荷大社の賽銭箱の前で謎ラップを披露するに至ったのだ。

情報は発信元をきちんと把握する事が大事である。
私は身をもって学び、そして存在するか分からないキツネさんとやらに対して心の底から謝るべきだと、強く反省した。

賽銭箱の前でラップして、本当にすみませんでした。

(補足① 密教修行の中には、脳を低酸素状態に誘導するような技法が複数存在する。
これについて、ヒトの身体は低酸素状態になると肝臓の代謝酵素の量が変化し、トリプタミンという自然に発生する幻覚成分を体内で合成する仕組みを持っている。
更に脳の血流が止まると、N、N-ジメチルトリプタミン(DMT)という件の裁判で争われている幻覚成分が脳内で合成される。
そして、それらの幻覚成分はヒトに対して「悟り」とも言える凄まじい超越的体験を知覚させる事が知られている。
この事から、A氏の布教方法はあながち間違いとは言えない。ただひたすらアバンギャルドではあるが。)
(補足② そろそろ私の文章が『「あ」のお母さん』状態になっている事かと思う。)

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