メモ:受容体-体験因子16個+関連性1個
因子1-1
テーマ:感覚的な現象について
キーワード「視覚、吐き気、睡眠、疲労、穏やかさ」等
・感覚器(五感),もしくは内蔵で感じるような感覚を表す用語が挙げられた。
(更にこのテーマは,内受容感覚(吐き気、疲労、睡眠、胃)と外受容感覚(視覚、聴覚、映画)に分類された。)
・これらの主要な因子は、体験レポートの全般に見られた。
関わっている受容体サブセット:5-HT2A受容体(最も強く関与), 5-HT2C、5-HT1A、5-HT2B、アドレナリン受容体α-2A、β-2、D2受容体
受容体サブセットに関連する薬物:DiPT(ジイソプロピルトリプタミン)、DOI(2,5-ジメトキシ-4-ヨードアンフェタミン)、5-MeO-TMT(5-メトキシ-N-メチルトリプタミン)
受容体サブセットが多く発現する脳の部位:神経処理階層の下端、特に視覚感覚領域の広範囲
因子1-2
テーマ:「①心の広がり」「②境界的な意識存在」「③即時的な時間軸」
キーワード:「①宇宙、空間、世界、意識、突破、存在、地球、次元、現実、炎、トンネル」「②実体、シッター、エイリアン、ビーイング、スピリット」「③秒、吸い込む(吸い込んだ)、吐き出す(吐き出した)、呼吸、その他目や肺等の身体システムを表す言葉」等
・①と②については、神秘体験現象に特徴的に表れるものであると言われている。
関わっている受容体サブセット:D1、5-HT7、KOR、5-HT5A、シグマ1、NMDA
受容体サブセットに関連する薬物:DMT、サルビノリンA、5-MeO-DMT、ケタミン
受容体サブセットが多く発現する脳の部位:連合皮質の最高領域(特に吻側および背側前帯状皮質)、側頭頭頂接合部、一次運動野、感覚野
因子2-1
テーマ:ポジティブな感情
キーワード「友人、愛、素晴らしい、素晴らしい、ダンス、ダンス、マジック、幸せ、鬱、損失、泣く」
・ポジティブな言葉だけでなく、ネガティブな感情を表す言葉もこのテーマには含まれていた。
・これらのテーマは、日、週、月、年という中期的な時間の範囲について書かれた体験談とも関連していた。
関わっている受容体サブセット:(重要度高)5-HT2A(重要度低)α-2A、カルシウムチャネル、5-HT2C、M3、5-HT1B、D2、D5、5-HT5A
受容体サブセットに関連する薬物:MDMA、MDA、LSD、2C-C(4-chloro-2、5-dimethoxyphenethylamine)、および25-I-NBOMe [4-ヨード-2、5-ジメトキシ-N-(2-メトキシベンジル)フェネチルアミン]
受容体サブセットが多く発現する脳の部位:視覚野の広範囲、上頭頂小葉、体性運動野
因子2-2
テーマ:音の乱れ、聴覚
キーワード「聴覚、音声、ピッチ、音、声、トーン、鳴り、音楽、ブーン、聞く、聴く、歪み、深い、耳鳴り、耳」
関わっている受容体サブセット:(重要度高)5-HT1A、(重要度低)セロトニントランスポーター(SERT)、シグマ1、5-HT7、5-HT1D、シグマ2
受容体サブセットに関連する薬物:DiPT系薬物
受容体サブセットが多く発現する脳の部位:ヘッシュル回、背内側前頭前野、背外側前帯状皮質、中帯状皮質、海馬傍回と側頭極に及ぶ側頭葉内側部、下頭頂葉など。
(補足: ヘッシュル回にある一次聴覚野は、入力された聴覚信号を最初に受け取る皮質領域であるが、DiPT薬剤は聴覚知覚に特徴的な歪みを引き起こす事が記録されている)
因子3-1
テーマ:不快な生理現象、視覚に関する用語、視覚の変化
キーワード「(不快な生理現象)吐き気、嘔吐、不快感、緊張」「(視覚に関する用語)視覚、パターン、色、目、見る、見る」「(視覚の変化)映画、動く、激しい、波、トレーサー、渦巻く」
関わっている受容体サブセット:5-HT2A、5-HT2C、5-HT1A
受容体サブセットに関連する薬物:DOI、 2C-T-7、 2C-D、 2C-C、 5-MeO-TMT、 そして2C-P等(フェネチルアミンやトリプタミン系薬物の一部)
受容体サブセットが多く発現する脳の部位:一次視覚野、下側頭回後部、牙状顔面領域、下頭頂小葉の一部(補足:隣接する視覚処理領域で多く発現していた)
因子3-2
テーマ: 感情的な用語、中間的な時間軸、聴覚的な用語
キーワード「(感情的な用語)うつ病、うつ状態、ダンス、愛(d)、友人、喪失、幸せ」「日、週、月、年」等(聴覚的な用語については記載なし)
関わっている受容体サブセット:イミダゾリン1、カルシウムチャネル、M3、NMDA受容体
受容体サブセットに関連する薬物:DiPT、MDMA、MDA、ケタミン
受容体サブセットが多く発現する脳の部位:吻側前帯状皮質、背外側前頭前皮質、側頭頭頂接合部、両側島などの高位連合皮質
因子4-1
テーマ: body load(説明:向精神薬、特にサイケデリックによってもたらされる特定の身体的または触覚的な感覚)、somatic intensity(訳不明)、外受容感覚
キーワード「(body loadとsomatic intensity)多幸感、強烈、突破、エネルギー、炎、負荷、スケール、効果、ダンス、ラッシュ」「(外受容感覚)視覚、ささやき、色」
・因子1と同様、秒単位の時間軸に関する用語、「吸う、吐く、心臓」等の過渡的な生理的パラメーターについての用語が見られた。
関わっている受容体サブセット:5-HT7、5-HT1D、5-HT2C、α2C、α2B
受容体サブセットに関連する薬物:DMT、5-MeO-MiPT、5-MeO-DMT等のトリプタミン系
受容体サブセットが多く発現する脳の部位:(より顕著)一次視覚野、側頭頭頂接合部、島後部、(やや弱い)内側前頭葉回と側頭極
(補足:この領域は右脳だけに限られていた。)
因子4-2
テーマ: 治療、解離
キーワード「(治療)植物、中毒、治療、離脱、メタドン」「(解離) しびれ、夢、めまい、映画」
・「膀胱、脚、足」等の解剖学的な用語や、年などの時間を表す用語も含まれていた。
関わっている受容体サブセット:NMDA、KOR、Sigma-1、D5、D3
受容体サブセットに関連する薬物:ケタミン、イボガイン、メスカリン、サルビノリンA、シロシン、LSD
受容体サブセットが多く発現する脳の部位:下頭頂小葉、一次視覚野、運動前野・運動野・体性感覚野の広範囲
因子5-1
テーマ: 快適さの度合い、身体的な用語
キーワード「(快適さの度合い)吐き気、痛み、麻痺、軽度、火傷、感触、快感、耐性」「(身体的な用語)鼻、鼻孔、心臓、体、感触、呼吸」
・分単位の時間を表す用語も含まれていた。
関わっている受容体サブセット:5-HT1A、シグマ-1、NMDA受容体
受容体サブセットに関連する薬物:ケタミン、5-MeO-DMT、2C-C、DPT
受容体サブセットが多く発現する脳の部位:一次視覚野、背内側前頭前野、側頭頭頂接合部、運動前野
因子5-2
テーマ: 環境、知覚
キーワード「植物、木、緑、太陽、形、雨、空、森、生命」「見た、見た、形、美しい、ささやき声、笑い、イメージ」
実態、存在、顔についての言及を表す用語も含まれていた。
関わっている受容体サブセット:5-HT2B、5-HT5A、5-HT1E、5-HT2C受容体、D1、KOR
受容体サブセットに関連する薬物:イボガイン、メスカリン、LSD、シロシン
受容体サブセットが多く発現する脳の部位:視覚野と内側側頭葉の一部
因子6-1
テーマ: 多幸感、知覚した印象
キーワード「(多幸感)多幸感、ハイ、ナイス、リラックス、高まる、バズる(buzz)」「(知覚した印象)さやき声、形、色、幾何学、パターン、音楽」
・一貫した実態、宇宙人への言及を表す用語も含まれていた。
関わっている受容体サブセット:5-HT2A、5-HT2B、5-HT2C、α-2A、α-2B、NMDA、シグマ1
受容体サブセットに関連する薬物:2C-C、DMT、2C-D、ケタミン、5-MeO-MIPT
受容体サブセットが多く発現する脳の部位:一次視覚野の広範囲、外側前頭前皮質、側頭頭頂接合部、島前部
因子6-2
テーマ:強烈な恐怖、その他の不快感
キーワード「恐怖、恐ろしい、死、恐怖、パニック」「圧力、シット、投げる、恐ろしい、死ぬ、狂気、降伏」
・見かけ上の超越(永遠、電球、至福、空虚、生命)というテーマも並行して含まれているように見られた。
関わっている受容体サブセット: 5-HT1A、5-HT7、5-HT6、5-HT1B、D3、D1
受容体サブセットに関連する薬物:5-MeO-DMT、イボガイン、5-MeO-TMT、メスカリン
受容体サブセットが多く発現する脳の部位:内側下側頭葉、下頭頂小葉、一次体性感覚野と運動前野の一部
因子7-1
テーマ: 物理的な状況、社会情緒的な状況
キーワード「(物理的な状況)部屋、家、公園、座る、壁、テント、通り、外、学校」「(社会情緒的な状況)友達、お母さん、怖い、パニック、笑う、面白い、思い出す、話す、言う、知る、考える」
関わっている受容体サブセット:5-HT1B、5-HT1D、5-HT7、5-HT2A、5-HT2C、5-HT6、D3受容体
受容体サブセットに関連する薬物:25-I-NBOMe、LSD、DOB、シロシン
受容体サブセットが多く発現する脳の部位:視覚野の広い領域、下側頭回、下頭頂小葉の限られた領域、両側頭頂接合部、体性感覚野と運動野の一部
因子7-2
テーマ:治療過程、知覚的・身体的用語
キーワード「治療、植物、中毒、離脱、デトックス、プロバイダー、メタドン、アヘン」「吐き気、病気、胃、摂取、ビジョン、頭痛、痛み、効果、刺激、穏やか、快適、素敵、リラックス」
関わっている受容体サブセット:シグマ2、NMDA、イミダゾリン1、DAT、MOR (μ-オピオイド受容体)
受容体サブセットに関連する薬物:イボガイン
受容体サブセットが多く発現する脳の部位:右背外側前頭前野、吻側前帯状皮質、両側前島、右側頭頂接合部
因子8-1
テーマ: 身体的なリラクゼーション
キーワード「多幸感、リラックス、快感、増強、ポジティブ、感動、刺激、触覚、波動」「ネガティブ、不安、恐怖」
・このテーマのキーワードには、対照的な用語が挙げられていた。
・年単位の時間軸が関わっていた。
関わっている受容体サブセット:5-HT1A、5-HT1B、D3
受容体サブセットに関連する薬物: 2C-C、2C-D、5-MeO-MiPT、サルビノリンA
受容体サブセットが多く発現する脳の部位:視覚野の広範囲、上頭頂小葉、側頭頭頂接合部の一部
因子8-2
テーマ: 嘔吐、暴力や力、目
キーワード「(嘔吐)嘔吐、嘔吐物、痙攣、ゲロ、吐き気、トイレ、クソ」「(暴力や力)投げる、やられる、傷つける、蹴る」「(目)目」
関わっている受容体サブセット:シグマ1、NMDA受容体、アドレナリン受容体、ムスカリン受容体
受容体サブセットに関連する薬物: DOI、DMT、5-MeO-TMT
受容体サブセットが多く発現する脳の部位:前島、背外側前頭前野、腹内側前頭前野、吻側前帯状皮質、眼窩前頭前野
関連性:ドーパミンと時間間隔
D1受容体は、テーマ1(神秘的体験)での秒単位の短い時間軸を表す用語と関わっており、またD2、D4、D5受容体は、テーマ2と3において、数週間、数ヶ月、数年という長い時間スケールを表す用語と関連していた。
(補足:マウスでは、ドーパミンニューロンを抑制する事で時間に対する行動感度が低下する他、ドーパミンニューロンの神経活動が時間感覚とともに変化する事が知られている。
統合失調症患者もまた、時間情報の処理に障害を持つ事で知られており、時間に対する感覚の歪みや、体内時計が変化しやすいという特徴を持っているが、このような患者は、一般的にドーパミン拮抗作用を有する薬物が処方される。)