競泳元日本代表・伊藤華英さんと考える、女性アスリートの生理/PMSに関する課題と大切なこと
オンラインピル診療サービス『mederi Pill(メデリピル)』を展開するmederi株式会社(東京都目黒区、代表取締役:坂梨 亜里咲 以下、当社)は、2023年10月5日(木)に、mederiスポーツアンバサダーに参画する6チームへ向けて第3回セミナー「女性アスリートが考える生理/PMSに関する課題」を実施しました。
【YouTubeにアーカイブ公開中!】
登壇者
・スポーツコメンテーター/競泳元日本代表 伊藤華英 氏
・mederi株式会社 坂梨亜里咲(モデレーター)
10月19日は国際生理の日
今回のセミナーでは、10月19日「国際生理の日」の月間として、改めて女性アスリートの皆さんと一緒に、スポーツと生理/PMSについて考える機会になればという想いも込めて実施されました。
はじめに、ゲストの伊藤華英さんの活動年表をみながら、「キャリア」「メンタル」「生理/PMSの課題」の3軸を中心に振り返り、お話をお伺いしました。
伊藤さんが水泳選手のキャリアにおいて最初に「生理の課題」にぶつかったのは、初めて出場した2008年の北京オリンピック。これまでの水泳人生で1番とも言える大舞台と、生理が重なってしまいました。大切な日に向けて準備をする中で、自分にあった対処法を見つけられなかったことや、実際に生理が重なってしまった不安を経験し、生理による体調やメンタルの変化を日頃からご自身でコントロールすることの必要性を感じたそうです。この出来事が契機となり、その後、伊藤さんは女性特有の健康課題に関する知識を増やし、多くの選択肢の中からご自身に合った対処法を探したり、現在も「スポーツ×生理」をテーマとした発信を行なっています。
スポーツ時の生理/PMSの課題について
続いて、スポーツ時の生理/PMSに関する課題についてより具体的にお話を伺いました。mederiスポーツアンバサダーの参加チームへ事前に行ったアンケート結果によると、生理/PMSのトラブルをコーチに相談している人は約32%。反対に、相談しない人が6割以上と大多数を占めています。
生理/PMSの悩みについてオープンに話す機会は近年増えていると言われていますが、チームによっても差があり、選手たちがそれらの知識を得る機会もまだまだ少ないと考えられます。生理における身体的な負担やメンタルのゆらぎが、スポーツ時のパフォーマンスに影響を与えることは多くの方が認識していると思いますが、「(現役時代は)対処法がわからなかった」という伊藤さんのお話もあるように、コーチに限らず相談できる大人がいる環境や、日頃から婦人科など体について専門家に相談できる場や、正しい知識にアクセスできる状態をつくることが必要だと実感しました。
mederi坂梨からは改めて「生理痛」「生理不順」「PMS(月経前症候群)」はなぜ起こるのか、これらの症状に関係するホルモンの話などをお伝えさせていただきました。伊藤さんは、現役時代と引退後も含めて、生理/PMSの対策として、ピル(低用量・中用量)やミレーナなどを取り入れてみた経験があるそうです。合う合わないなど個人差もありますので、まずはご自身の課題を知り、自分に合う方法を探すことが大切だとアドバイスいただきました。
目標達成に向けたメンタルコントロールの大切さ
続いて、「メンタル」に関するお話を伺いました。
現役当時、ご自身のコンディションを繊細にキャッチしていたという伊藤さん。PMSになった時は、無理をしすぎずに、「頑張れるところは頑張ろう」と練習メニューを調整していたそうです。また、モチベーションが下がっている時には、周りの人からの叱咤激励をいただくこともあります。しかし、受け入れることもあれば、時には敢えてシャットダウンするように心がけていたりと試行錯誤していたそう。
mederiスポーツアンバサダーへの事前アンケートによると「PMSによる競技中もモチベーション低下を感じますか?」という問いに対して、「はい」と答えた方は44.6%と大多数という結果に。
うまくいかない時やライバルと比べられた時には、「自分が頑張れていないのではないか」と不安になってしまう方もいらっしゃると思います。伊藤さん自身も現役時代、「自分が弱いのではないか」と思ってしまったこともあったそうですが、振り返ってみれば、あの時にご自身の生理周期を知っていたら、実は月経前のPMSで不安な気持ちになっていたのだと理解できる可能性があったとのことです。
モチベーション低下や不安・緊張の原因が「PMS」なのか、他のことなのか区別がつきにくいこともあるかと思います。適切な対策をするためにも、まず生理周期を把握することの必要性を改めて、伝えていただきました。
また伊藤さんは引退後に大学院で「メンタルタフネス」という概念を研究されています。精神的な強さのためには、「しっかり頑張れること」「しっかり休めること」の双方が必要で、それによってチャレンジやコミットメントの向上に繋がるそうです。そのような側面からも、うまくいかなかった時に結果だけに落ち込むのではなく、上手に休んでご自身をコントロールすることも重要だと教えていただきました。
女性特有の健康課題について引退後に気づいたこと
最後に、女性のライフプランに関わる部分についてもお話しました。女性には生殖年齢のリミットがあり、卵子の数は生まれた時がピークで、年齢を重ねるにつれてその数は減っていきます。
伊藤さんも引退後にその仕組みを知り、女性の健康課題の多くがホルモンや月経とともにあると理解したそうです。そのような経験から、「まずは正しい知識を身につけ、長期的かつ客観的に健康について考えることが大切だと、若い世代の女性へ伝えたい」と話します。
現在、不妊に悩むカップルは5.5組に1組と言われています。男女双方でさまざまな原因がありますが、女性の場合、早期閉経や、ホルモンバランスの影響で毎月月経がきているのにも関わらず排卵ができていないケースも。特にお腹の中の健康状態は自分の目では直接確かめることはできないので、妊娠する前から定期的に産婦人科へ行って先生に診てもらうことが大切です。
また経験しないとなかなか当事者意識を持つことが難しい、妊娠・出産。伊藤さんも引退後に出産を経験し、現在は子育てをする中で、「仕事と家庭の両立は周りの人のサポートが合ってこそ成り立つ」と日々感じているそうです。「みんなで子どもを育てていく社会にしなければならない」と語ります。
そして女性アスリートの多くは、20代半ばあたりから、競技のキャリア、引退後のキャリア、妊娠・出産など、人生における大切な選択をいくつか迎えます。最近では妊娠出産におけるサポートも増えてきており、競技にもよりますが、「子を産んでから競技に復帰する」という選択肢もあるそうです。多くの女性アスリートが後悔ない人生を送れるよう、ご自身でプライオリティを考え、必要があれば20代で卵子凍結をすることも一つの選択肢として知っておくと良いと考えます。
伊藤さんからメッセージ
このように、本セミナーでは女性アスリートとしてご活躍された伊藤さんならではの視点で、具体的な体験談も織り交ぜながら、メンタル面などの具体的な知識を知る機会となりました。
mederiでは、今後もすべての女性が生きやすい社会の実現を目指して、低用量ピルを含めたさまざまな選択肢を知っていただけるよう、あらゆるライフステージの方へ向けたセミナーや勉強会を実施してまいります。
mederiスポーツアンバサダー
https://mederi.jp/sportsambassador/