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《短編小説》ディレクターズ・カット
再生時間0:00。
映像は、微笑ましい学芸会の一幕からスタートする。
小さなシンデレラが、鐘の音に急かされながら走る。少し遅れて、王子役の男子が後を追う。ガラスの靴を落とす場面だ。
「おうじさま、こっちにこないで。どうか、わたしのことはわすれてください」
たどたどしく台詞を読み上げる7歳のお姫様、佐村木美優。色素の薄い肌と髪に、ふわふわした水色のドレスがよく似合う。懸命に走るがドレス
《企画/ショートショート》全力で推したいダジャレ
「やだ!どうぶつえんがいい!」
「どうぶつえんがいい!」
奮発して取った星付きホテルの客室に、二人分の泣き声がこだまする。暴風雨に荒れる絶景を横目に立ち尽くしていると、夫が「やっぱり臨時休園だって」と携帯片手に戻ってきた。今日は子どもたちの希望で、動物園の一日ツアーを予約していたのだ。代替案の屋内プールはぞうさんの魅力には及ばないらしく、並んで泣き続けている。
初の家族旅行を、楽しい思い出
《企画/連作ショートショート》「立ぽうたい」のおもい出
「立ぽうたい」のおもい出 二年三くみ かた山 あずさ
わたしの「たからもの」は、年ちょうさんのときにママがくれた、ちょ金ばこです。
ある日、わたしはブタのちょ金ばこをおとして、わってしまいました。ママにたくさんおこられました。でも、しばらくしたら、かわいいシールがいっぱいはってあるちょ金ばこをくれました。ママは、「このちょ金ばこは、かみでできてるからわれないよ」といっていました。
ちょ
《企画/連作ショートショート》立方体の思い出
コーヒーに角砂糖をいくつ入れるか。
それだけのことすら聞かれなくなり、2年が過ぎた。
下らないこだわりかもしれないが、私はコーヒーを飲むならその日のメニューや気分によって違う味を楽しみたい人間だ。かつてはアレンジに協力的だった妻も次第に面倒がるようになり、インスタントコーヒーが出てくるようになって久しい。
薄いコーヒーを一口啜り、カップが古びていることに気づく。--新婚旅行で買ったもの
《短編小説》いつかの春に
枯れ葉混じりの風が渡り廊下を吹き抜ける。
咄嗟に押さえたスカートの裾が、冷えきった脚に擦れて痛い。
受験シーズンを間近に控えた校舎は人気も少なく、女子達の甲高い喋り声も、運動部の喧騒も聞こえない。びゅうびゅうと吹き荒ぶ風の音に、トランペットの音色が微かに混ざっているくらいだ。吹奏楽部の真面目な部員が、卒業式に向けて個人練習でもしているのだろう。
あと1ヶ月。たった1ヶ月しかない。昨日、