筋肉の萎縮は原疾患からのメカニズムで生じる 〜筋トレは通用する?〜
こんにちは。医学研究者@ Dr_Tです。
今回は筋肉の萎縮についてお話しします。
近年ではリハビリテーション分野が、目まぐるしく大学が出来て、医学部にもどんどん講座が生まれています。
リハビリテーション分野の先生も、私たちみたいなマニアックな細胞好きが集まるようなニッチな学会に参加して、発表されているのをよく見かけます。
その中でも、大抵、骨格筋萎縮関連のテーマが多く感じます。
そこで、医学に関係ない素人の人が聞いても面白いような筋肉にまつわる身体の仕組みを今回はお話ししていきます。
以前の投稿で、筋肉の異常を取り戻すと糖尿病が改善する
https://note.com/med_researcher/n/n61b04d5238f8
といったように、骨格筋は全身を調整する臓器として身体に必要です。
そもそも身体の部位でいうと、体重の70%は骨格筋ですからね…
生きるために必要な体温もほとんど、骨格筋で作っています。
(寒いと震えるのは、筋肉を収縮させて熱をつくりだしてるんですね)
ここでは、臨床上よく見かける4つの疾患に関する骨格筋萎縮を紹介します。
心不全の筋萎縮
心不全になると全身の酸素量の低下(酸素をよく運ぶヘモグロビンの低下)、心筋の過剰な脂質代謝により、末梢の脂質代謝の抑制が関与し、骨格筋のTYPE1線維(赤筋、細い線維)の代謝低下が生じます。
よって、心不全系の血管系に異常がある場合は、持久性に富むような筋線維が萎縮します。論文では、脂質代謝が低下し、脂肪が骨格筋内に蓄積し、霜降りになるとの報告でした。
(in vivo 人体の特殊なMRIの画像診断より)
臨床的には、パワーが落ちるだけでなく、持久力が落ちるということです。
糖尿病の筋萎縮
これは、高血糖による糖蓄積により、糖を代謝する線維であるTYPE2線維(白筋、太い線維)の代償性肥大が起こることが特徴です。血糖値を下げるように身体が頑張るのですね。
また、逆にヘモグロビンが糖化し、HbA1cが大量に存在するため、相対的にヘモグロビンが酸素運搬を出来ない状態になります。
よって、解糖系が亢進し、好気性代謝が抑制されるため、よりTYPE1が萎縮して、TYPE2が肥大するというメカニズムになります。
臨床的には、絶対的な筋力低下はあまりないが、圧倒的に持久力が落ちるということになります。
肺疾患(COPD)における骨格筋萎縮
これは、イメージ出来るように、酸素不足による、TYPE1線維の萎縮が主に起こります。
ただ、肺疾患は面白くて、横隔膜や腹筋、僧帽筋や胸鎖乳突筋など、呼吸筋には、代償性にエネルギー供給が盛んになり、より呼吸ができるように筋肉は現状者より肥大するということが起こります。また、エネルギーが枯渇しないように四肢の筋肉を切り崩して、エネルギー変換し、呼吸筋に供給するというメカニズムが起こることが報告されています。身体の助け合いが、非常に感じられるメカニズムですよね。
臨床的には四肢の骨格筋萎縮が急速に進みます。
癌による骨格筋萎縮
これは、まだまだメカニズムは決定的な報告がありませんが、全身炎症を引き起こして、エネルギー飢餓による筋肉が切り崩される説、癌が成長するための栄養を骨格筋から切り崩して利用してる説が有力な説として報告されています。癌は、筋肉のエネルギーを遠隔で利用して、自分の成長の源にしているのですね。
臨床的には、全身の筋肉が癌の進行と共に萎縮していきます。
骨格筋の量は多ければ多いほど、癌の進行が進んでも長生きできると報告があるので、
栄養を身体に残しておける方法は、貯筋なんですね。
以上のように、タイトルに書いた原疾患により筋肉の萎縮はさまざまなメカニズムで生じることが世界的に明らかになっています。
それに対して、どう筋肉をつけるか?
ここが、今世界的に焦点が当たっています。
闇雲な筋トレは、その萎縮を進行させ、助長する可能性も報告が散見されます。
この辺りをトレーナーの方や、リハビリ分野の方が積極的にいろいろ研究してもらえると面白くなってきそうですね。
私は原疾患の改善、治療薬の開発に注力します。
薬で筋肉をつけれるように頑張ります。
*夢の薬ですけどね… できればノーベル賞頂きます。笑
それでは、今日はこの辺で。
少しでもためになったり、面白ければ、スキお願いします。
みなさんが見る量が増えてくれば、もう少し掘り下げていろいろ書いていければと思っています。
また、私の記事で、原文の論文がみたいとか、あればどの記事についても対応します。
最後まで読んでくださりありがとうございました。