今週のBlood【2021年12月、vol138、issue22】

論文を読み続ける習慣作り。記念すべき第1回目は、自分が将来専門にしたいと思っている血液分野から。Blood 2021;138(22)

今週のReviewは、aGVHD

Reviewは急性GVHDの非古典的症状。古典的症状というのは、学生時代に血液内科ローテで繰り返し問われた3つの臓器症状、すなわち皮膚・肝臓・消化管の症状。具体的には皮疹・Bil上昇・下痢。では非古典的症状とは?

中枢神経、リンパ節、胸腺、肺、腎、卵巣・精巣、骨髄など。GVHDなのか、薬の副作用なのか、区別も難しい。例えば、肺障害は前処置でも生じ、腎障害は移植後のカルシニューリン阻害剤でも生じる。

古典的GVHDが共生細菌に原因の一端があるとも。皮膚と消化管は言われてみれば確かに。肝臓も胆道系と捉えれば確かに。一方で、非古典的GVHDはCNS等無菌の臓器にも。CNS-GVHDは予後不良で、予想より多いんじゃないかとも。最近、ステロイド抵抗性GVHDにルキソリチニブが効くとも言われ、ホットな分野だ。

Reviewに関連して、cGVHD

移植に関するphase2。BelumosudilのROCKstar Study。かっこいい試験名だ。コメンタリーも洒落ている。

ROCKin' cGVHD treatment: has the time come?

Blood 2021;138:2161-3

Belumosudilというのは選択的ROCK2阻害薬らしい。ROCK1よりROCK2のほうに選択的。STAT3、Th17細胞を抑制、STAT5を向上。対象は慢性GVHDで3rd line以降。つまり先にステロイドやイブルチニブ、ルキソリチニブ等を投与した後。1日200mgで充分、44%は1年以上続けられ、54週まで効いたと。副作用は肺炎、高血圧、高血糖。GVHDのほか全身性硬化症でも研究されているらしい。期待できそう。phase3待ち。コメンタリーの結語が秀逸。

Removing the mountain called GVHD starts with crushing rocks to stones that will finally be used to pave roads for a better life for transplant survivors. One of these stones is now being called ROCKStar.

Blood 2021;138:2161-3

臨床試験のパートでは、ヘパリンフリーの透析

第11因子と結合して、第12因子による活性化を阻害するAB023は、前途有望。0.25〜0.5mg/kgで使うそう。

Blood Workは、内軟骨腫症

他の記事は実験系が多め。最後に楽しみなBlood Workのコーナー。PVからMFに進行したと思ったら、骨髄で増えていたのは線維ではなく軟骨でした、という病理写真。血液学は奥が深いな。線維以外にも良性や悪性の腫瘍が骨髄で増えることがあるから注意しようと呼びかけられていた。

Clinicians should be aware that other conditions can cause a similar picture, including marrow infiltration with both benign (as in our case) and malignant tumors.

Blood 2021;138:2299

まとめにかえて

GVHDの特集号といっていいだろうか。急性GVHDの非古典的症状、慢性GVHDへの新たな治療選択肢が提示されていた。よし、GVHDの勉強しよう。

Noteの初投稿でした。Journalを継続的・網羅的に読めるように、楽しめるようになりたいと思っています。続けていくぞ!

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