雲野ミズキサ

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第118号報告(2021年12月27日)

祖父母の家の居間に立っている。部屋中が薄暗いが視界の右のほうでテレビだけ点いていて、音がない。何を映しているのかもよく分からない。 自分は祖父母と向かい合って立っていた。 対面の台所のカウンターを挟んで向こう側に、祖父母が並んで立ってこちらの顔をじっと凝視している。死んでるみたいな冷たい無表情なのに、怒っているのだと分かった。 自分はここが夢だと分かっている。夢の中なのに、そんな怖い顔で無言で見られ続けるのがいやだった。それで、ここは夢の中で、二人はいま自分の夢の中にい

    • 夜を旅する子供たち

       その時の自分が何歳だったのか、よく分からないのですが、まだ十歳にもならないくらいの小さい頃だったと思います。 それは、大人たちがひとり残らず寝静まってしまう真夜中のことでした。私たちは、大人たちには内緒の、ひそかな鬼ごっこに興じふけっていたのです。 私たち、というのは、みな十歳前後の小さな子供たちで、いったい全員で何人が鬼ごっこに加わっていたのか、その全貌は今となっては分かりません。 場所は、無限に広がっているかとも思われる広い広い旅館のような日本家屋で、どこまでも延

      • 眠る星の詩

        空という水に 雲という舟が浮かぶ アスファルトでできた水底の 人間と呼ばれた魚たちは 未だ水の外の世界を知らない。  ずいぶん久しぶりに目を開けたら、ずっと曇っていた空が割れて、あたたかな光が降ってきた。  あんまりたくさん降るもんだから、傘を開いて、さした。傘の上で光がはねて転がり落ちては、地面に吸いこまれて、死んだ。  傘を伝った光を、ひとかけら、左の手で受けとめた。その光が死ぬことはなかった。  やがて、地平線の向こうに太陽が落ちていった。だんだん寒くな