好きな短歌|塔2024年4月号

「塔」2024年4月号より好きな短歌を引いてみました。いつも楽しく読んでいます。

病院の夫想いつつよく伸びる雑煮の餅を三つ食べたり/数又みはる

「塔」2024年4月号p.152


入院中の夫を思う一連。愛の深さと静かさに泣いてしまいそうになる。自分の日々を全うするというのも愛のかたちなのかも、と思う。

ようやくに連絡つきて義姉はいま散らばる仏具を拾うていたり/林芳子

「塔」2024年4月号p.161


故郷が震災の被害に遭ったことがわかる。「散らばる仏具」がリアル。

われは今焼香台に向き合へる佳き人のごと昏き目をして/新谷休呆

「塔」2024年4月号p.181

友人の焼香台と読んだ。自分を見る目が冷静でおもしろい。友人が主体を「佳き人」にしてくれたのかもしれない。

アナウンサーの「あーりがとさーん」に抑揚なしアホの坂田の訃報読むとき/山田恵子

「塔」2024年4月号p.185

ニュースの映像がありありと思い浮かぶ。アナウンサーも案外同じことを思っているかもしれない。

パワハラを告げることなく辞めてゆく小雨に濡れて派遣のひとは/春野あおい

「塔」2022年4月号p.220

小雨で傘を差さないように、辞める職場のパワハラのことを言わない。そういうひとなのか、派遣という立場がそうさせるのか。

官邸に防災服らが並びをり本気になつてくれなつてくれ/山下好美

「塔」2024年4月号p.276

「ポーズとして」防災服を着ていることに作者は気づいている。下の句は怒りのようで、祈りのようでもある。

増水のタイムラプスを見ていると時々誰かが川を見に来る/藤田エイミ

「塔」2024年4月号p.303

増水の川は危なく、知人が見に行こうとするなら止めたいところ。「タイムラプス」でなんだかコミカルな景になる。


評を書くのは勇気がいりますね。いつも短歌を読み、伝えてくださる方に改めて感謝したいです。

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