私を救ってくれたお客様のお声
私は飲食店の仕事をしていた過去がある。
ウェイトレスという仕事に、ただの憧れで始めた部分があった。
注文されたドリンクとフードを持っていくだけでかっこいいじゃん!!
…そのような軽い気持ちで始めた喫茶店のホールの仕事だった。
しかし、想像以上に大変な仕事だった。
まずはおぼんを片手で持ち、ドリンクとフードも片手でお出ししなければならない。
不器用な私は手が震えてしまい、なかなか上手にかっこいいウェイトレスにはなれなかった。
まわりの新人さんを見てもこんな劣等生は居なかった。
ホテルのバイキングの仕事をしたこともある。
そこも理想と現実のギャップに悩まされた。
要領よくこなしていくことができなかったのだ。
しかも、地元から離れた遠い場所での勤務だった為言葉も違うし、厳しい先輩からの指導にも正直心が折れそうで、できない自分が悔しく、1人になっては泣いていた日々だった。
お客様のために働いているはずなのに、いつしか自分守りをすることの方が多くなっていた。
ただ、心に誓っていたことが1つだけあった。
仕事ができない分、お客様の前では笑顔を絶やさずに丁寧でハキハキとした接客をさせて頂こうということを。
私は常に笑顔で心の闇をカバーしていた。
そんな時に嬉しかったことが2つあった。
1つは、
お客様から笑顔をほめられたこと。
お皿を下げにお伺いした時に
「君の笑顔が素敵だとさっきから思っていたんだよ。頑張ってね。」
…とわざわざお声かけ頂いたことが嬉しくて泣きそうになってしまった。
2つ目は、
お客様のお声としてお褒めのお言葉を頂いたこと。
あるご夫婦から
「とてもかんじがいい。お名前何ておっしゃるの?」
…と聞かれた。
後日、お客様のお声一覧に私の名前を出して頂き、接客と声がいいとお褒めのお言葉を頂いていた。
わざわざ文字で書いて頂いたことに胸が熱くなった。
本当に自信を失っていた私はこんな私を褒めて頂けたことが信じられなかったが、これからの自信に繋がった。
私が働いて笑顔になれた瞬間…
それは
“頑張って働いている姿を誰かは必ず見てくれていること”
である。
できないと立ち止まるのではなく、一生懸命に頑張ることで笑顔になれる瞬間があった。
私はその時に働いてよかったとこの先を生きていく自信に繋がった。
仕事で褒められた。
しかしそれは仕事のスキルではなく、私自身を褒めて頂いたような気がする。
今は別の道を歩んでいる途中だが、立ち止まりそうになった時は必ずこの思い出を振り返る。
私なら絶対大丈夫だと思えるようになった。
みんなきっと誰もが誰かの為に働いていること。
私はこれからどの仕事をしてもこのように思っていくに違いない。
今日も誰かが誰かの為に働いているから誰かが笑顔になる。
働くことは誰かを救う素晴らしいことだということを忘れたくないと思う。
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