書棚の隙間から覗く百合――『バーナード嬢曰く。』
通称「ド嬢」。既刊5巻
読むきっかけ
いつものように百合ナビで百合漫画セール情報を確認していると、見慣れたタイトル群の中にそのタイトルは見えた
存在は知っていたのだが、まさか百合作品だったとは
アニメしか見ていなかった『わたモテ』が百合モノとして持て囃されているのを知ったときくらいの衝撃があった
感想
百合だったぁ……
本作は1巻と2巻以降で表情が異なる
1巻は「名言は好きだけどその本は読まない主人公」の話、
2巻以降は「図書館に集まる4人組(女3男1)」の話、といった具合だ
登場人物4人は1巻で登場するのだが、その関係性に着目されるのが2巻以降になる
従って、百合をしだすのも2巻以降
SFオタクの神林×本を読まない主人公町田(バーナード嬢)のCPだ
……いや、少なくとも百合として読むなら、この漫画の主人公は神林である
そもそも矢印は神林からの一方通行で、町田は持ち前の天然っぷりで神林の感情に踏み入ってくるだけだ
それが象徴的なのが、3巻の37冊目(「ド嬢」での話数の単位が"冊目")の、たった6ページのストーリー【バス停】である
雪の中バスを待っていたのに急に「マフラーを忘れたからバス一本遅らせて待ってて!」と走り去る町田
ひとり取り残された神林がかじかむ指先で文庫本を読みながら寂寥に耐えていると、帰ってきた町田に手を握られるというのがあらすじだ
大きめのコマ割りで、ほぼ1ページに渡って神林の手を町田が握っている場面が描かれる
ここまで言っていなかったが、(少なくとも2巻以降の)「ド嬢」は"本読みあるある"がテーマの作品だ
しかし【バス停】では、あるあるネタはせいぜい「新品文庫のページ間のくっつきが剥がれる感じが好き」くらいで、それすら神林の感情表現へと昇華している(その後、「でも なんだか今は… 氷に張り付いた指先を 皮膚ごと引き剥がしているような気持ちになる」と続く)
明らかに「本読みあるある漫画としては不要」な神林の心情描写があり、それこそが「ド嬢」を百合作品たらしめている
百合をメインに据えた作品ではないが、一貫して強度の高い百合を供給してくれる作品なのだ
本読みあるある漫画として
筆者はあまり本を読まない方である。排水溝掃除くらいの頻度でしか本を読まない
最近読んだ小説といえば、バンドリにハマって読んだ中村航先生の『夏休み』くらいか
あとはなろうの百合ラノベくらいなものである
それでも、「ド嬢」の繰り出すあるあるネタは面白かった
SF作品がよく取り沙汰されるのだが、大抵は登場人物の神林が解説を入れてくれるので、未読でも全く問題ない
あるあるネタ自体も、読書家でなくとも「分かる~!」と頷いてしまうものばかりで、文字の多い漫画にも関わらずスラスラページを捲ってしまう
それから、気に入っているのが「話と話の間に挟まる作者の解説」である
次の話のキーワードにあわせて解説が1ページ挟まるのだが、これが美術館のキャプションボードのような雰囲気を醸し出している
ともかく、百合好きもそうでない人も、読むべきは『バーナード嬢曰く。』である
今なら50%ポイント還元である。急ごう