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流体力学 ブラジウスの公式(例題編)

 皆様おはこんばんちは。
 
 最近,流体力学を再度学び直してみようと思い,記事にしています。
 今回は,第63回目として「ブラジウスの公式(例題編)」について紹介したいと思います。今回は,以前に投稿した「ブラジウスの第1公式」,「ブラジウスの第2公式」,「コーシーの積分定理」を使いますので,まだ知らない方はご確認ください。


(1)例題1


 では,ブラジウスの第2公式を利用して翼の中心周りのモーメントMを求めてみましょう。以下に具体的な設問を示します。

 流速u0の一様流れにおいて,平面翼(長さ4a)が迎え角αにて置かれた場合,翼の中心の周りのモーメントMは式(1)にて表されることをブラジウスの第2公式より導け。

基礎流体力学・水力学演習,原田幸夫,槇書店

 はじめに,この状況を図示したものを図1に示します。図1は,x軸に適当な傾き角αをなす一様流れと循環を加えたz平面とジューコフスキー変換後のζ平面(平板翼:長さ4a)であり,過去の記事で取り扱った「翼理論(その4)」からの抜粋です。

図1 x軸に適当な傾き角αをなす一様流れと循環を加えたz平面とジューコフスキー変換後のζ平面

今回は,翼の中心周りのモーメントMを求めるためにブラジウスの第2公式を使います。ブラジウスの第2公式を式(2)に示します。

ここで,図1に示したようにz平面からζ平面に変換するには,ジューコフスキー変換(式(3))が必要になります。

式(3)を式(2)に代入すると,式(4)のようになります。但し,ブラジウスの第2公式(式(2))を見るとz平面で議論が進むため,ζ平面に座標変換する必要があります。そのため,合成微分(チェーンルール)を使用することで,式(4)はz平面からζ平面に変換されたものになります。

次に,x軸に適当な傾き角αを持たせたことでz’平面として考えているため,任意の角度αを持った複素数z’→zに変換した円柱周りの複素ポテンシャルw(z)は,式(5)のようになります。

得られた式(5)をzについて微分した複素速度dw/dzを式(6)に示します。但し,ブラジウスの第2公式に代入する形式に合わせるため,式(6)を2乗した形で示します。

ここで,さらにブラジウスの第2公式へ代入する形式に合わせるため,ジューコフスキー変換(式(3))からzについて微分したものを式(7)に示します。

ここで,式(7)を式(4)の下線部に代入すると,以下のようになります。ここで,注意するべきは(1-a^2/z^2)です。分母に(1-a^2/z^2)がある状態では,その後の議論をするのに障害となるため,マクローリン展開(1次項のみ)を使用します。

この状態にできれば,式(6)と式(7)を代入して計算を進めると,式(8)のようになります。

式(8)の状態でブラジウスの第2公式の積分をすることは不可能なので,チート技である「コーシーの積分定理」(式(9))を使用します。

式(9)を式(8)に適用すると,簡潔な形に持ち込むことができるので,式(10)のような複素数形式になります。

式(10)を式(4)へ代入すると,翼の中心の周りのモーメントMである式(11)が求められ,式(1)と同じになります。

よって,ブラジウスの第2公式を利用して翼の中心の周りのモーメントMを導出できたことになります。
 

(2)例題2


 次に,ブラジウスの第1公式を利用して揚力Lを求めてみましょう。。以下に具体的な設問を示します。

 流速u0の一様流れにおいて,平面翼(長さ4a)が迎え角αにて置かれた場合,揚力Lは式(12)にて表されることをブラジウスの第1公式より導け。

基礎流体力学・水力学演習,原田幸夫,槇書店

先ほど触れた「例題1」と同じ手順で進めます。基本的な進め方は以下の通りです。

複素ポテンシャル→複素速度→マクローリン展開→コーシーの積分定理
→ブラジウスの第1公式

「例題2」の状況も図1と同様のため,省略します。
では,ブラジウスの第1公式を式(13)に示します。「例題1」と同様に,z平面→ζ平面に座標変換した形式にしてあります。そのため,ζ平面におけるx,y方向の圧力をそれぞれPξ,Pηとします。

次に,x軸に適当な傾き角αを持たせたことでz’平面として考えているため,任意の角度αを持った複素数z’→zに変換した円柱周りの複素ポテンシャルw(z)は,式(14)のようになります。

得られた式(14)をzについて微分した複素速度dw/dzを式(15)に示します。但し,ブラジウスの第1公式に代入する形式に合わせるため,式(15)を2乗した形で示します。

ここで,さらにブラジウスの第1公式へ代入する形式に合わせるため,ジューコフスキー変換(式(3))からzについて微分したものを式(16)に示します。

ここで,式(16)を式(15)に代入すると,以下のようになります。ここで,注意するべきは(1-a^2/z^2)です。分母に(1-a^2/z^2)がある状態では,その後の議論をするのに障害となるため,マクローリン展開(1次項のみ)を使用します。

この状態にできれば,式(15)と式(16)を代入して計算を進めると,式(17)のようになります。

式(17)の状態でブラジウスの第1公式の積分をすることは不可能なので,チート技である「コーシーの積分定理」(式(18))を使用します。

式(18)を式(13)に適用すると,簡潔な形に持ち込むことができるので,式(19)のような複素数形式になり,ζ平面におけるx,y方向の圧力Pξ,Pηを求められます。

ここで求められた圧力の合力はρΓu0であり,一様流れの速度u0に対して垂直に働く力,すなわち揚力Lとして考えることができます。この考えに沿って行くと,式(20)のようになり,式(12)と同じになります。

よって,ブラジウスの第1公式を利用して揚力Lを導出できたことになります。ちなみに式(20)の導出時に使用した循環Γの値については,過去の記事で紹介しているため,既に分かっているものとして取り上げています。(「翼理論(その4)」,(2)z平面のx軸に適当な傾き角αをなす一様流れと循環を加えた場合の循環より参照)


(3)まとめ

 今回の記事のまとめを以下に示します。
①     流速u0の一様流れにおいて,平面翼(長さ4a)が迎え角αにて置かれた場合,ブラジウスの第1公式とブラジウスの第2公式により,揚力Lと翼の中心周りのモーメントMを導出することが可能である。

以上です。最後まで閲覧頂きありがとうございました。
次回は,「有限翼」について取り上げます。

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