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「まどか26歳、研修医やってます!」 医者の臨床研修制度について


令和のお仕事ドラマ

令和の働き方改革で変わりゆく医療現場を描く本作は、水谷緑著「まどか26歳、研修医やってます!」「あたふた研修医やってます。」「離島で研修医やってきました。」(KADOKAWA刊)を原作に、ベテラン医師たちの試練に立ち向かい、同期の仲間たちと励まし合って、医師として女子として、人生と向き合う濃厚な2年間を描いた成長物語となっています。

主演は、『表参道高校合唱部!』の香川真琴役で出演して以来、10年ぶりの火曜ドラマ出演となる芳根京子さん。

主人公・まどかが最初に研修する先となった外科の指導医・菅野尊(かんの・たける)役には、鈴木伸之さん。医学部時代からの同期でよき仲間である研修医・尾崎千冬(おざき・ちふゆ)役には、髙橋ひかるさん。そして、同じく医学部時代からの同期の研修医・五十嵐翔(いがらし・しょう)役には、なにわ男子の大西流星さんが出演しています。

それら若い俳優さんたちを、主人公・まどから研修医たちの先輩医師役の佐藤隆太さんと木村多江さん。更に、謎の男・角田茂司(かくた・しげじ)役の奥田瑛二さんらベテランが支えており、完全な布陣でドラマが進行していきます。

今日現在(1月30日)、第3話まで放送されており、関東ビデオリサーチ調べで、第1話(1/14)が、5.9%。第2話(1/21)が6.5%。第3話が6.0%と火曜日夜10時台の視聴率としては、高い方だと思います。

また、民間TV局の配信プラットホームである「Tver」(1月28日分)では、「アイシー~瞬間記憶捜査・柊班~」(593ポイント)、「御上先生」(582ポイント)に次ぐ第3位(572ポイント)を記録しています。

更に、「Tver」のお気に入り登録者数が、最初の24.6万人から今日現在で65.2万人に増加しており、最新の第3話「初めての試練!医師が避けて通れない道――」では、感動の神回となっていることから、本作の人気が一層上がるのではと思います。

因みに、関東で限定して言うと、39万人の視聴者数で、平均視聴率が1%上がると言われており、「Tver」等からのデータを勘案しタイムシフト視聴率を加えた総合視聴率は、推定で8%〜10%と推定されます。

2025年1月期の連ドラは、同じくTBSドラマ「御上先生」が、平均リアルタイム視聴率11.7%となっており、他の連ドラを大きくリードしています。2位以下については、軒並み6%〜7%の状態ですので、本作は十分健闘しているのではと思います。

惜しむらくは、本作はプライムタイムの最後の10時台の放送ではなく、ゴールデンタイムの9時台放送でも良かったのではと、そして、ルーキーものですので、新卒者が仕事を始める時期(4月からの連ドラ)に放送したほうが良かったのではないかと。

医療系ドラマと言えば

さて、本作は、医療系のドラマです。医者を主人公としたドラマと言えば、「コウノドリ」「ドクターX」、「Dr.コトー診療所」など専門医または開業医と言われる医者達のドラマが多いのですが、「まどか26歳、研修医やってます!」では、過去のドラマでほとんど例のない「研修医」が主人公となっています。

因みに、本作の主人公であるまどかは、26歳の研修医ですが、この年齢が気になったので調べてみると、高校を卒業してすぐに医学部へ進学しストレートに卒業できた場合、研修医になる年齢は24歳です。

しかし、大学受験で浪人したり、在学中に留年したりする場合もありますし、社会人経験を経てから医学部に入学(編入)して医師になるケースもあります。 その為、 研修医の平均年齢は27.8歳となっています。これから推測すると、データ的には26歳の研修医は、平均的な年齢と言えます。

臨床研修医とは

さて、本作で登場する医師の臨床研修制度は、1947年(昭和21年)の医師法制定により開始されます。この時には、医師免許の合格者は、「インターン」という名称で呼ばれ各医療現場で1年間の臨床実習が義務化されていました。

しかし、このインターン制度(実地修練制度)は、本作内でも触れられていましたが、支援体制、給料面、及び勤務体系に無理があり、新人の医者の過労死や、激務による医療過誤、そして種々の事情により医師を断念する事態が多発します。

これを受けて、1968年(昭和43年)に医師法が改正され、医師法第16条の二項「医師は,免許を受けた後も,二年以上大学の医学部若しくは大学付置の研究所の附属施設である病院又は厚生大臣の指定する病院において,臨床研修を行うように努めるものとする」となります。これにより、現行の研修医制度が始まることとなります。

更に、2004年(平成16年)、この臨床研修医制度は、当初の努力義務から再び必修化され、かつ、出身大学(医局)関連の単一診療科(ストレート方式)による研修ではなく、幅広い診療能力が身に付けられる総合診療方式(スーパーローテイト)による研修に改められます。

この総合診療方式(スーパーローテート)とは、研修の必修科目とされている診療科(内科・外科・小児科・産婦人科・精神科・救急・地域医療)に加えて、選択科目として自由に選べる診療科によって決まります。研修期間である2年間の間に、さまざまな科目・分野を幅広くローテートするのが一般的だそうです。

研修医は、ローテート中の診療科で臨床経験を積みますが、研修医は原則として単独で診療行為にあたることはできません。このため指導医(3年目以降の医師)と一緒に入院患者さんを担当し、検査や治療方針を指導医と相談しながら決めることが、研修医の主な業務内容となります。つまり、「広く浅く」研修する時期です。

しかしながら、この研修医の期間は、医者として最低ラインの能力と資質を身につけ、更に、その後の医者人生を決定する専門を決める大切な時期となります。

この研修医として2年が経過すると、医者としての可否が審査され、これに合格すると臨床研修終了登録証が発行されます。

医師のキャリアにおいて専門医の取得は必須ではありませんが、2年間の臨床研修を終えた医師の多くは、専門医の取得を目指し「専攻医」になる道を選択します。旧制度ではこの段階の医師を「後期研修医」と呼んでいましたが、2018年にスタートした新専門医制度では「専攻医」と呼ぶようになりました。

因みに、2018年にスタートした新専門医制度では、まず19ある基本領域から自身の専門とする診療科を選択し、専門研修プログラムに所属して指導医のもとで3~5年の専門研修を専攻します。

専門研修の修了後は認定試験を受け、その試験に合格することで専門医の資格が得られます。また、専門医は原則として5年ごとに更新が必要となります。

更新にあたっては、更新認定基準に基づき勤務実態や診療実績の証明、更新単位の取得などが求められます。こうした更新制度によって、専門医の質が保たれる仕組みとなっています。

医者の「働き方改革」

このドラマのタイムリーな事は、実は、昨年2024年の4月から医療関係者の「働き方改革」が開始され、医者の一年間の実働時間が、1860時間以内にすることが義務化されました。(休日、時間外診療を含めて1920時間以内)

つまり、医者は、大雑把に言って実働時間が1日8時間以内であることが義務化されたことになります。

しかし、残念ながら、この改革で一番恩恵を受けているのが、このドラマでも良く取り上げられていますが、臨床研修医です。

厚生省の資料によると、1860時間を超過する研修医の割合が、平成28年では、13.3%あったのが、令和4年では僅か0.9%まで低下しています。

一方、他の科、特に産婦人科、整形外科、脳神経外科、救急科では、依然として高い割合となっています。

これは、日本の悪しき習慣であり、同じTBSテレビのドラマ「御上先生」でも言及されていましたが、一般に「先生」と呼ばれる「聖職者」に対して、公を優先させ私を蔑ろにすることを強要する風潮が、この働き方改革を阻害している最大の要因となっています。

やはり、この働き方改革を実効性のあるものにするには、個人の意識ではなく、公私のバランスが取れるようにシステム全体で考え直す必要があります。

最後に、このドラマでは、主人公のまどかは、笑って泣いて成長していきます。兎角、冷たく合理的なイメージのある医者も、人間なのだと自覚させてくれるヒューマンなドラマとなっています。さて、次週の第4話はどの様なストーリーとなるのかが楽しみです。



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