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楽しみでしかない大河ドラマ

2025年「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)〜」そして、2026年「豊臣兄弟!」のキャスト及びストーリーが少しずつ発表されています。

NHKのこれまでの次回以降の大河ドラマに関して発表したものを読むと、放送はまだされていませんが、今から非常に楽しみです。

と言うことで、今日は、2025年および2026年に放送される大河ドラマについて書いていきたいと思います。

大河ドラマ64作目、65作目

次回第64作目(2025年)の大河ドラマは、「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。

中期の太平の世、自由な空気が漂っていた良き時代に、「黄表紙」や「洒落本」を出版しヒットを連発し、33歳で「江戸のメディア王」となり、後に、喜多川歌麿、東洲斎写楽、葛飾北斎などを育てた蔦屋重三郎を、主人公としたものです。

このドラマでは、「時代ドラマ」と呼ばれていた作品の時代が、描かれています。大河ドラマとしては、「歴史ドラマ」が本流であった作品と比べて、非常に珍しい作品になるのではと思われます。

そして、第65作目(2026年)に放送されるのが、「豊臣兄弟!」となっています。

このドラマは、「どうする家康」では、ムロツヨシさんが演じた戦国の三傑の一人である秀吉、そして秀吉の腹違いの弟で、表には立たず常に秀吉の影となって働いた「天下一の補佐役」である秀長を中心にしたものとなる様です。

この秀長ついては、いままで殆ど大河ドラマでは、扱われてきませんでしたが、「どうする家康」で佐藤隆太さんが演じて大河ファンに認知されるようになりました。

演技力に裏打ちされた出演者と優秀な脚本家

(64作目「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」)
まず、第64作目「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」では、主演(座長)が、横浜流星さん。そして、出演者が、今最も油の乗っている小芝風花さん。今やハリウッドスターとなっている渡辺謙さん。その他に、染谷将太さん、宮沢氷魚さん、片岡愛之助さん、福原遥さんなど錚々たる出演者の名が上がっています。

そして、次回の脚本もオリジナルであり、これを、ドラマ『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)や『JIN-仁-』(2009年・2011年)、『義母と娘のブルース』(2018年)などでザテレビジョン ドラマアカデミー賞脚本賞を受賞している脚本家・森下佳子さんが担当します。

新しいキャストの発表 冨永愛さん

この大河ドラマは、第10代将軍・家重、第11代将軍家斉、そして、田沼意次時代と言われた頃を描いており、歴史的には「賄賂政治」と評判の悪い時代ではありましたが、幕府がこれまでの農業中心から商業中心へシフトし、その結果、商人が裕福となり、商人の財力により江戸の町人文化が最も栄えた時代でもありました。

そして、この頃、幕府では将軍、老中の次に権力を持っていたのが、大奥老女であり大奥総取締である高岳でした。

今回、新しくキャストが公開され、この高岳に冨永愛さんが演じることとなりました。冨永愛さんは、準主役ではありませんが、重要人物として登場するとのことです。これは、NHK時代劇ファンとしては、非常に嬉しいニュースです。

何故かといえば、今回、このドラマの脚本を書いている森下さんは、NHK「ドラマ10」の枠で放送された、男女逆転ファンタジー時代劇「大奥」を翻案(脚色)した脚本家であり、そして、このドラマの主要な登場人物となる第8代将軍・吉宗を演じて好評だったのが、冨永愛さんだったからです。

NHK時代劇「大奥」

NHK時代劇「大奥」は、昨年、珍しく20代から30代女性をターゲットとした火曜日の午後10時に放送される「ドラマ10」の枠を使って放送されました。

このNHK時代劇「大奥」は、2022年度の4四半期のワンクール、そして2023年度の3四半期のワンクールの2シーズンかけて放送された時代劇です。

NHK時代劇「大奥」は、よしながふみさんの漫画『大奥』を原作とした時代劇ですが、このNHK版以前に、漫画「大奥」の一部分を民放や映画でも製作されましたが、NHK版では、よしながふみさんの漫画『大奥』が完全な形で放送され、「裏大河」とも言われるようなドラマとなりました。

このドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」では、大河ドラマの本格的時代劇という史実に基づいたストーリー(徳川将軍と老中田沼意次および大奥取締・高岳らの幕府)と、あくまで娯楽中心の「時代ドラマ」風の時代設定をどの様に融合させるかが、成功と失敗を分けるキーとなるのではと思います。

(65作目 「豊臣兄弟!」)
次に、第65作目となる「豊臣兄弟!」の主役(座長)となるのが、大河ドラマ第46作目「風林火山」出演以来、大河ドラマ6度目となる仲野太賀さんです。確かに、仲野太賀さんはサル顔の俳優さんですので、この主役にピッタリであると思います。

そして、このドラマでは、この主役を取り巻く女優陣が、豪華なことが特徴です。小一郎(秀長)と同い年の幼なじみ直(なお)役に永野芽郁さん。小一郎の正妻・慶(ちか)役に吉岡里帆さん。更に、豊臣秀吉の正妻・寧々役に浜辺美波さんと、若い俳優さんの中でも、もっとも人気がありかつ美人の女優さん達が勢揃いしており、これだけを見ても素晴らしい作品となることは保証されたようなものです。

脚本を担当するのは「半沢直樹」「下町ロケット」「陸王」のヒットメーカーである脚本家・八津弘幸さん。細部のストーリーについては、まだ発表されていませんが、始まりの部分やあらすじが、2015年に堺屋太一さんが書いた「豊臣秀長ある補佐役の生涯」に似ている為に、この本の流れと似ているものとなるのではと思います。

また、この堺屋太一さんの本では、卓越した実務能力と抜群の調整力、非凡な統治能力で、脆弱な豊臣家の体制を支え続けた、日本史上屈指のナンバー2と呼ばれる男の生き様が理解できます。この2026年NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」を見る上では、教科書の様な本になると思います。

新しいキャストの発表 池松壮亮さん

最初、「豊臣兄弟!」の主役を仲野太賀さんが演じることを知った時に、不安であったことは、非常に癖があって演技の上手い仲野太賀さんの小一郎(豊臣秀長)の相手役となる藤吉郎(豊臣秀吉)を誰が演じるのであろうかと言うことでした。

並の俳優では、力負けしてお互いの演技が不自然になるのではないかと思っていました。そんな同じ様に癖があって演技の上手い俳優さんは、存在するのかと。

しかし、最近のNHKのドラマのキャスト選出については、神がかりしており、今回も、この演じることが難しい藤吉郎(豊臣秀吉)に、これ以上ない俳優さんが、最近、発表されました。

その俳優とは、最近、「海のはじまり」で水季の職場の同僚で、水季に思いを寄せていた男性・津野晴明役を演じていた池松壮亮さんです。

小一郎役の仲野太賀さんと藤吉郎役の池松壮亮さんの何方も、サル顔であり兄弟と言ってもいいほどよく似ており、二人とも癖があって演技が上手い俳優さん同士でもあり、これはもしかしたら面白い大河ドラマになるのではとワクワクしてきます。

時代劇と製作費

そもそも、NHKが放送する時代劇には、大きく分けて、史実を忠実に再現し本格的な歴史劇である「大河ドラマ」と、娯楽が中心であり江戸時代を主に描いた「特選時代劇」の二つの種類があります。

以前には、民放でも、娯楽を中心とし江戸時代を描いた時代劇、たとえば、
「水戸黄門」、「暴れん坊将軍」「遠山の金さん」などが、放送されていましたが、1話当たりの制作費が、2000万円〜3000万円と現代劇の2倍から3倍の高額な製作費がかかると言われていました。

もはや、企業の広告媒体がテレビからインターネットに移行しており、民放の主たる収入が減少している現状では、この様な金のかかる時代劇は制作することが難しい状態となっています。

特に、戦国時代のような、合戦シーンが多く登場する本格的な時代劇となると、その額は更に高くなります。

例えば、スペクタクル映画を売り物にしていた角川映画が、製作した「天と地」では、制作費が50億円、これを45分1話で換算すると、1話当たり15億円となります。

また、角川映画ほどではないのですが、合戦シーンを削って、製作費を切り詰めて2015年につくられた映画「のぼうの城」でさえも、製作費は15億円かかったと言われており、これを1話45分換算すると、1話が5億円となります。

因みに、先月、アメリカのエミー賞をほぼ独占したドラマ「SHOGUN将軍」は、1話当たり10億円したと言われており、やはり、合戦シーンが多く登場する本格的な時代劇を作るのには、高額の製作費がどうしても必要であると言われています。

従って、現時点では、金のかかる時代劇を定期的に放送できるのは、NHKだけとなってしまいます。

時代劇製作に吹く逆風

しかし、2004年7月に発覚した、NHKのチーフプロデューサーの巨額な番組制作費の着服事案が、本格的な時代劇作りに大きな障害となります。

この着服事案は、1996年から2001年にかけて、NHKのチーフプロデューサーの大学の先輩が社長を務めるイベント企画会社に、業務の実態がないのに「番組構成料」などの名目で支出し、最大で半額を返金(キックバック)させて飲み食いに使っていたと言うものです。

不正支出額は、総額4800万円と言われています。その額の大きさだけでなく、日本の放送制度ではNHKだけに支払う仕組みになっている受信料が着服されたことが、更に衝撃を広げます。しかも、不正の舞台は、看板番組「紅白歌合戦」も含まれていたと言う、おまけまで付いており、NHKの信用すら失墜させることとなります。

この着服事案は、額こそ少額ですが、現在までに度々起こっており、更に、ドラマ製作時の逆風となって吹き荒れています。

大河ドラマの製作費の見直し

この着服事案のあおりを受けて、大河ドラマの製作費も見直される様になりました。2006年製作の第45作目の「功名が辻」以降、製作費が削られる様になります。

実際にどれだけ削減されたかと言うと、第44作目の「義経」の製作費が、1話当たり6440万円で49話で総額約32億円だったのが、第45作目の「功名が辻」では、1話当たり6110万円で49話で30億円となり、その後も総額で30億円を超えることがありませんでした。

しかし、セット制作費の高騰および人件費の引き上げにより、2020年の第59作目「麒麟がくる」では、1話7900万円、44話で35億円まで高騰してしまいます。民放に比べて豊富な資金力を持つNHKでも、視聴者からの批判の声もあり、大河ドラマにおいても、今後、製作費は総額35億円を超えることは許されなくなります。

かくして、如何に製作費を切り詰めるかが、大河ドラマを製作する上で、最大の課題となります。

最近の大河ドラマの傾向

2021年の大河ドラマ第61作目「青天を衝け」から2026年放送予定の大河ドラマ第65作目「豊臣兄弟!」を並べて見ると、最近の大河ドラマの傾向が、はっきりと浮かび上がってきます。

その傾向とは、予算削減のために、金のかかる合戦シーンを減らして、かつ、セット費用を節約しながらも、大河ドラマの本質である本格的な歴史ドラマ作りが模索されていると言うことです。

この相容れない二つの命題、節約と本格化時代劇を両立させるのに、色々と工夫と挑戦が行われてきました。例えば、合戦シーンが、全く出てこない時代設定にするとか、セットを簡略化し本格的に見える様に背景等を特殊効果で補強するなど、かなり苦労の後が見受けられます。

ただし、これらの努力が報われたかと言うと、そうでもなく、時代設定を近代にすると朝の連続テレビ小説と競合してしまいますし、かと言って、特殊効果を多用すると、どうしても迫力に欠けたりと、なかなか製作費削減とドラマの本格的な絵面の両立には、苦労しているようです。

とは言っても、今放送されている「光る君へ」は、平安時代の貴族社会に限定されており、この時代の建築が、戦国時代以降の「書院造」とは違って、基本的に丸い柱だけで構成されている「寝殿造り」であり、同じセットでも、柱の位置を変えたり、間仕切りの位置を変えることにより使い回しできるなどの利点があります。

また、次回作では、東映太秦映画村やつくばみらい市にあるワープステーション江戸などにある江戸時代のオープンセット(野外セット)をそのまま使用でき、新たに作る必要がなく、経費の削減ができるようになっています。

更に、2026年の「豊臣兄弟!」では、ストーリー上、合戦シーンを殆ど使う必要がなく、かつ、日本人が最も知っている戦国の三傑が全て登場するなど大河ドラマとしては、もっとも魅力的なストーリーを作ることができなるど、どこを取っても本格的なドラマ作りにはプラスになるようなことばかりです。

以上のことからも、どうやら大河ドラマの方向性が、定まってきており、再び、本格的な大河ドラマを見ることができるのではと期待できます。

最後に、これは私的な要望ですが、2027年以降の大河ドラマについては、まだ、何の発表が行われていませんが、個人的に宮部みゆきさんの「孤宿の人」を取り上げてもらいたいと思っています。

この「孤宿の人」は、2009年に発表された非常に感動的な時代小説でありながら、多くの登場人物と複雑なプロットを持つため、そして、実写化するには、多くのリソースが必要であり、特に正確な歴史的再現が求められるため、制作コストが高くなることなどから、映画化やドラマ化が見送られていました。

しかし、1年を使って描かれている大河ドラマでは、複雑なプロットがあったとしても十分深掘りができますし、話の中心となる屋敷も、映画「八つ墓村」で使用した様な江戸時代から明治にかけて作られた庄屋を借り上げれば十分本格的な絵面が撮れるなど、工夫次第では、この小説を実写化できるのではと思っています。

コロナ禍も一段落して、野外ロケも再開されたと聞いていますし、是非とも、世界的に有名なドラマ「おしん」の時代劇版とも言える「孤宿の人」を大河ドラマで実写化してもらいと切に願っています。

以上、最後は、取り留めのない内容とはなりましたが、「楽しみでしかない大河ドラマ」という題で書いてみました。









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