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「海に眠るダイヤモンド」第5話

2024年秋ドラマは、近年になく稀にみる名作揃いとなっています。その中でもひと際、輝いているのが、「海に眠るダイヤモンド」ではないかと思います。

間違いなく、脚本家・野木亜紀子さんにとっては、代表作ドラマ「アンナチュラル」に匹敵するほどのドラマとなっています。

過去と現在を行き来して、宮本信子さんが演じる「現在の主人公」であるコードネーム「いずみ」のモノローグ形式でストーリーが、進行しています。

1〜3話までは、このドラマのトリプルヒロイン、端島に流れ着いた謎の美女リナ(池田エライザ)、長崎で原爆により母と姉を失い、自身も被曝している端島炭鉱の職員の娘・百合子(土屋太鳳)、そして、羽島の食堂の看板娘・朝子(杉咲花)にそれぞれ焦点が当たり、最近のドラマにしては珍しくスロースタートとなっていました。

話がなかなか進展しないために、当初の視聴率から急激に低下。しかし、第4話以降は、話が深化し、いままで張られていた伏線が、少しずつ回収されていきます。

そして、第5話で、話が、一転して更に謎が深まる中で、雷雲が近づいてくる様な胸騒ぎを感じさせるストーリーへ、そして、ついに「いずみ」の正体が最後に語られています。また、同時に「いずみ」と端島の荒木鉄平にそっくりなホストの玲央との関係性も。これにより、更にこのドラマの謎は、深まっていきます。

はっきり言って、「いずみ」の正体が、私が思っていたのとは大きく違い、もし、「いずみ」が◯◯であるならば、第6話以降は、どんなストーリーになるのか。謎は更に増していきます。(ネタバラシは、ドラマの楽しみを奪うものであると思っていますので、誰が「いずみ」なのかは、ドラマを実際に見て確認してください。)

このドラマは、当脚本家である野木さんが言う様に、映画「タイタニック」のアンソロジーとなっています。

例えば、ホストの玲央(レオ)は、映画「タイタニック」主人公で、画家を目指す貧しい青年のジャック・ドーソンを演じたレオナルド・ディカプリオに因んで付けられており、その他にも、ヒロインでは、リナ=莉菜(花)=茉莉花(マツリカ)=アラビアンジャスミン。百合子=ユリ。そして朝子=朝顔といずれも、花に関連する名前となっています。これも、映画「タイタニック」のヒロインが、ローズ・デウィット・ブケイターであり、名前がローズ=薔薇と花の名前に倣ったものです。

因みに、アラビアンジャスミンの花言葉は、その花の香りが強くまとわりつく様な匂いから「官能的」。ユリは、「慈悲深さ」「注目を浴びる」「虚栄心」。そして、朝顔は、「はかない恋」「固い絆」「愛情」となっています。

それぞれの名前に隠された意味が、その花言葉を使ってその後のストーリーを指し示しているのではと個人的には考えています。

このドラマは、最近の日曜劇場になかった、群像劇形式の本格的なドラマに謎解きの要素、そして、野木さんの持ち味である社会風刺が、絶妙に混ざっているものであり、次回からは、とうとうこのドラマも後半戦となり、更にストーリーが展開される模様です。

しかし不思議なのは、ここ数年の日曜劇場の中で、このドラマの視聴率が、最低であることです。

恐らくは、1955年と2018年といった70年を隔てた時間を行ったり来たりするストーリー、又は、2018年のストーリーと1955年のストーリーとの関連性が分かりにくいことが嫌われたのかもしれません。(SNS等では、2018年の設定が必要ないのではとの意見もありますが。)

実は、このドラマの凄いところは、因果関係(原因=1955年、結果=2018年)を時系列にストーリーに落とし込むのではなく、結果を先に提示してから原因を見せるという「逆転のストーリー」になっていることです。つまり、原因が少しずつ明らかになるに従って、結果の持つ意味がハッキリと見える様になっています。

そう言う意味でも、後半部のストーリー展開が、このドラマの真の価値であると思います。

まだ、見ていない人や、途中で断念した人は、このドラマを最初から見ていただきたいと思っています。

久しぶりに、映画の様な、本格的なドラマに出会えてとても感動しています。第6話以降が、非常に楽しみです。


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