野球殿堂入りとマイクロアグレッション
イチロー氏が、日本人で初のメジャーリーグ殿堂入りを果たしました。
個人的には、イチロー氏が日本人発というのには少し驚いています。なぜなら、メジャーリーグで活躍した日本人で、魁ともいえる野茂秀樹さんや松井秀喜さんが有資格者でしたが、まだ殿堂入りを果たしていないと思ってなかったからです。
殿堂入りの有資格者の要件
殿堂入りの要件としては、投票の15年前~5年前の10年間にメジャー・リーグで選手として登録されている必要があります。またこの10年間にメジャー・リーグの試合に出場していることが条件です。そして現役を引退して暦年で5年が経過した翌年に候補者リストに掲載されます。
例外として現役選手が他界した場合、または引退してから 5 年未満の選手が他界した場合は、死亡日から6 か月後、もしくは現役を引退して暦年で5年が経過後のいずれか早い方で資格が得られます。その場合でも上記10年間メジャーの試合に出場している条件は満たしている必要はあります。
殿堂入りの投票者の要件
殿堂入り有資格者に対して投票できる人は、10年間連続して野球記者として活動している全米野球記者協会の正会員および名誉会員のみに投票資格が与えられます。また記者の現役を退いた人でも引退後10年間は投票に参加できます。
選出方法
選出方法としては、BBWAA (全米野球記者協会)選出とERA委員会(時代委員会)選出の2種類あります。
通常は、BBWAA (全米野球記者協会)選出によって「殿堂入り」が決定されます。イチロー氏も今回、このBBWAA (全米野球記者協会)選出により「殿堂入り」が決定しました。
BBWAA (全米野球記者協会)選出の投票方法は、2025年選出では392人の選挙人が投票しました。一人につき最大10人まで投票できます。そして、75%以上得票で殿堂入りとなります。投票は無記名式で、公表するかどうかは投票した記者が選択するそうです。
この選出方法で満票で選出されたメジャーリーガーは、メジャー史上最多652セーブを挙げたヤンキースの守護神マリアノ・リベラ氏(2019年受賞)のみであり、今回史上2人目にイチロー氏がなるのではと大方の予想でしたが、392名中391名で99.7%の得票となりました。惜しくも当初予測されていた満票とはなりませんでした。
野手の過去最高得票は、2020年の元ヤンキース、デレク・ジーター氏です。この時も99・7%で満票選出に1票足らず、イチロー氏の今回の結果と同様であり、この意味では野手としては十分に評価された結果であると言えます。
しかし、米「ニューヨークポスト」の看板記者、ジョン・ヘイマン氏は自身のX(旧ツイッター)でこの結果にブチ切れ。「イチローは1票差で満票を逃した。バカ野郎は前に出てこい」と投票しなかった記者1人を猛批判していますが。
今回の1名については、名前は覚えていませんが、SNSで殿堂入り選出でイチロー氏には絶対に投票しないと公言していた記者であろうと思います。
この記者の論旨は、唯一満票を獲得したマリアノ・リベラ氏にイチロー氏は野球人として遠く及ばないからだと言うものでした。
しかしながら、そのSNSの行間を読むと、これは間違いなくマイクロアグレッションそのものでした。
マイクロアグレッションとは
では、このマイクロアグレッションとは何かと言うと、他人を傷つける意図はないが、結果として傷つけてしまうような発言や行動を指します。例えば、「男のくせに」とか「関西人は〜」とか言うものです。
この「意図的でない」というのが非常に微妙な所です。差別は「意図的」であり、したがってマイクロアグレッションは、人種差別ではないと開き直られることが多いからです。
しかし、そのマイクロアグレッション言動の背後には、一般的な思惑やイメージ(ステレオタイプ)が反映されており、これが単純に「意図的でない」とは言えないという側面もあります。
特に、アメリカ人が日本人に対してこのマイクロアグレッションを行う際に、心の奥底にあるのが、「アメリカは、日本に戦争で勝った」という成功体験です。
したがって、日本人は、アメリカ人に比べたら下であるという意識が働いています。くだけた言い方をすると「アメリカ人は、日本人にマウントを取っている」ということです。(全てのアメリカ人ではありませんが、この様に思っているアメリカ人は一定数存在しています。)
日本スチールのUSスチール買収の際のアメリカの鉄鋼大手クリーブランド・クリフス(クリフス社)のローレンソ・ゴンカルベスCEOの記者会見での発言が、このいい例であると言えます。
このローレンソ・ゴンカルベスCEOは、はっきりと「1945年以降、何も学んでいない」と言っており、間違いなく上に書いたマイクロアグレッションが働いています。
この発言で、笑える所は、このローレンソ・ゴンカルベスCEOは、名前で分かる通り、生粋のアメリカ人ではなく、アメリカに移民としてやって来たブラジル人であると言うことです。
しかし、日本人でも、日本の国技である相撲の最高位である横綱に外国人がなった時に、同様のマイクロアグレッションを行っている場合があります。
やはり、人を評価するときには、公正な数字や記録で評価すべきであり、人柄とか人種などのイメージで判断すべきではないと思います。
つらつらと書いてきましたが、満票だろうが無かろうが、イチロー氏のアメリカでの成績は、偉大であり、間違いなくイチロー氏は野球の天才であることは変わりのないことです。
素直に、イチロー氏の偉業を称えたいと思います。