山あり谷あり新聞奨学生体験記 Part 37「配達を楽にするためにやったこと」
私の配達区域は新興住宅地で、次から次へと家が建っていました。そのため、新聞社の読者獲得は激戦でした。店長はいつも営業に出ていたので、配達中にしょっちゅう遭遇していました。
毎月沢山の新規顧客が上がってきます。時には20件くらい増えた時もあり、覚えるのに必死でした。そして、配達時間も増えて結構な負担となりました。
区域を担当し始めた頃、朝刊配達件数は合計300くらいでした。それが毎月増えていき、最大で380件くらいになりました。60件も増えると、配達時間は約20分延びました。
私が集金をしている区域だと集金するとその分少しばかり集金手当があるのですが、集金していない区域だと配達するだけで何の手当も付きません。
もうこれ以上増えてほしくないので、なんとか手を打つ手段を考えました。一つ考えたのが、何件かわざと入れ忘れてクレームにより契約解除まで持っていくという手段です。しかしこれだと店からメチャクチャ怒られてしまいますし、なによりも顧客に迷惑を掛けてしまいます。
そして納得がいかなかったのは、配達件数が増えたのに手当がなかったからです。というのも、配達している区域に他の区域が増えると代配手当がつきます。私の先輩と後輩は区域が増えたので、手当がついていました。区域が増えても私の配達件数より少なく配達時間も短かったです。
私は区域が変わらなかったものの配達部数が増えたので、給料は現状維持でした。この矛盾に店に何度か訴えましたが、上手いこと丸められ上げてもらえませんでした。
「待遇が変わらないなら減らしてしまえ」と思い、ある作戦を企てました。わざと不配や遅くに配達するなど、そういう誰かに迷惑をかけるのではありません。
実際に行ったのは、新規契約を取らないことでした。それまでは新しい店やハイツが建った時は店長に報告していましたが、それをキッパリ止めました。
そのため、小さなコンビニが出来た時に報告しなかったので、他の新聞店が契約し、後から営業に行っても断られたそうです。コンビニだと部数がメインの新聞紙とスポーツ紙、他の専門紙を合わせると20部くらいになります。それらを私が届けないといけないかもしれないので、そんな面倒な手間を逃れられました。
そしてハイツが建った時も敢えて報告しなかったので、入居しても配達せずに済みました。
ハイツはバイクから降りて各部屋のドアに入れないといけないので、時間がかかります。一軒家に配達するのとハイツの二階に配達するのでは、20秒ほどの差があります。それが何件も増えると、配達時間が長くなってしまいます。
あとは引っ越しをしてきた家を見ても私が営業することはなかったですし、店に報告することもありませんでした。
とにかく、新規契約を取らないように何も行動を起こさないようにしました。
そして、あと一つ行ったのは、契約期間の延長をお願いしないことでした。新聞の契約ではほとんどの読者が契約期間を決めて契約しています。
契約更新をする時、店側は色んなサービスを付けて顧客が離れないようにします。期間が満了すると他の新聞店と契約する人が結構いました。他の新聞店も新規顧客獲得のために必死になり色んなサービスを付けてきます。
どの新聞店も、読者獲得は争奪戦でした。
私は契約期間が迫っている読者に対して、延長のお願いを一切しませんでした。集金で訪問した時に「あと何ヶ月で契約が切れるから、新聞止めてね」と言われても引き止めることをせず、「はい、分かりました」と返事していました。
新規契約獲得や顧客の契約更新について何の行動も起こさなかった結果、最初の配達部数約300に戻りました。
本当に迷惑になることは一切しませんでした。そのため、店には何のクレームも入っていなかったようです。
私より部数が少なく配達時間も短い人が私より給料が高かったので、本格的に社会に出るまでに、不公平とはこんなものだということを体感したと思いました。
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