山あり谷あり新聞奨学生体験記 Part 35「隙を見せてしまい、携帯電話がバレる」
二十歳の頃、携帯電話を購入しました。きっかけとなったのは、店の改築でしばらくアパートに移るため、その間は連絡手段がなくなってしまうので契約しました。
2ヶ月に改築が終わり、店に戻りました。それまでの間、すっかり携帯電話のある生活に慣れたので、解約するつもりはありませんでした。当時はまだ普及率は低く、契約台数がやっと1000万台を突破した所でした。
携帯電話を持ったことについては店には言っていませんでした。もし言ってしまうと、頻繁に連絡があったり、都合の良いように使われそうな気がしたからです。
店に電話を掛けて誰も出られなかった時に私の方に掛けてくる可能性が高いと感じました。
ずっと店には内緒にしていましたが、卒業約2週間前に店長にバレてしまいました。
いつもは部屋に鍵を掛けていましたが、たまたま鍵をかけていない時に店長がやって来て、ノックをせずに入ってきました。店長は日頃から誰の部屋にもノックをせずに入っていました。
店長が来る時はいつも車の音が聞こえるので、来たかどうかは把握出来ます。そのため、車の音が聞こえてきたら、携帯電話の電源を切って布団や押し入れに隠していました。
この時は土曜日で学校が休みで、夕刊前に仮眠していました。店長は携帯電話を見つけ、「携帯電話買ったのか、番号教えろ」と言いました。
「これはプライベートで使っているので言いたくないです」と言いました。「なんでやねん、教えろや」と言われましたが、必死に抵抗して「他の人は持っていないのに言わないといけないのですか?」と言うと、テーブルにあった煙草の箱を私に投げつけて去っていきました。
数十分後、夕刊配達の準備をしていると店に電話があり出てみると店長からでした。何か大きな声で怒鳴りまくっていましたが、何を言っていたか聞き取れませんでした。
「なぜ怒鳴られなければいけないのか」と思いモヤモヤした気分で夕刊配達をしました。
この日は夕刊配達後、集金に行きました。集金では期日ごとにノルマがありました。普段はノルマを達成できていたのですが、この時は達成できませんでした。未回収の所を全て行きましたが、留守の所が多かったです。
本店にお金を収めに行くと店長がいました。私にキツい口調で「ノルマは達成できたのか」と言われ、「留守が多くて達成できませんでした」と言うと、ここでも大声で怒鳴られました。「真面目に集金に行ったのか!」と言われ、「お前のせいで支店がノルマ達成出来なかったやろ!」と、まるで私だけの責任のように当てつけの如く言われました。「お前の携帯事件でイライラしてるんや!」と、やはり私が番号を教えなかったので腹が立っていたようです。
集金の計算が終わり事務担当の社員にお金を渡すと、店長は大人しい口調で「飯食って帰れよ」と、普段滅多に言わないような事を言われました。怒りが収まったようでしたが、急な変わりように気持ち悪かったです。
店長は私が晩御飯を食べている間、他の学生達に「なぜあいつは番号を教えないんや」と言っていたそうです。その中の先輩は「あいつから聞くのは無理ですよ。僕にも教えてくれないから」と言ったそうです。
実は先輩や一部の先輩には番号を教えていました。先輩は嘘をついて誤魔化してくれました。
店長が帰った後、私も支店に帰ろうとする時に、事務担当の社員に「もうすぐ卒業なのに、ドジな事をしたな」と言われました。
みんな私の味方をしてくれていました。元々、店長の好感度が非常に悪いので、誰も店長に同調することはなかったようです。
その後卒業するまで番号を聞かれる事はありませんでした。卒業直前に、間抜けな事をしたなぁと思いました。
しかし、頑なに拒否して教えなくて良かったと思いました。もし教えていたら、卒業後も電話がかかってきたと思います。支店から実家までは近い所にあったので、誰かが新聞の入れ忘れがあった時、代配の依頼の電話があったかもしれません。
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