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「明け方に見た夢(常盤の家)」

 以前から、繰り返し夢に見る常盤の家。3歳直前から13歳直前まで住んでいた家だ。これまで色んなシチュエーションが登場したが、今朝見たのは、ほぼ引っ越しが完了し、家財道具一切が無くなってガランとした部屋。なぜか真ん中に平たい食卓が置かれていて、使われなくなった食器やら空のペットボトルやらが並んでいる。

 これまでよく親や妹たちが出てきたものだが、一切その姿は無く、気配さえも感じられない。家族たちがすでに去った後の空き家を、特に何かを感じるわけでもなく、ただ何となく目にしている。

 一旦外に出て、東側に並んで立っていた樹木を1本1本視線を移しながら順番に見る。樹木に対する思い入れの強さを感じながら注視していると、木々はそれぞれ変形していて、記憶の中の姿とは随分異なったものになっている。

 それらの中で最も高い1本を探した。すると、その木の一端が東側に立っている隣家の隅に触れており、その触れた箇所が家と同化している。さらにその家の外観をぐるりと見渡すと、記憶とは形の違うまったく別の家屋になっており、屋根を突き破って空に向けて聳え立っている数本が見えた。自然木を支柱として活かしているらしい。家の形も単純な箱型ではなく、「コ」の字にデザインされ、中庭にも数本の樹木が植えられ、芸術作品のようなその造形美に見とれてしまった。

 再び、空き家となった自宅のほうへ戻ると、中から、見知らぬ高校生くらいの女の子が出てきた。全くの赤の他人で、記憶の中にはない顏だ。これといって容貌的に強い印象を残すような特徴はなく、街角に立っていたら群衆に紛れ込んでしまいそうな平均的な姿だ。あまりにも普通の表情をして出てきたのが不思議で、通り過ぎようとした後ろ姿に呼び掛けた。

「家を突っ切って出てきたの? ここ、人の家なのに・・・」

「あら、そうなのねぇ」

 特に驚きもせず悪びれもせず、短い言葉を発したあと、何ごとも無かったように振り返って去って行った。

* *   * *   * *  * *

 物語性の無い、意味の分かりづらい夢。現時点では、どう解釈したらよいのか見当もつかないが、今このタイミングで、常盤の家が夢に出てきたこと自体には、一つ思い当たる理由がある。

 今年春、玉龍高校前と常盤を結んでいた市営バス「常盤線」が廃線になり、同時に常盤バス停も廃止になった。それを知ったのが、まだ最近のことで、幼少期の思い出につながる大切な場所が一つ、根こそぎ無くなってしまったような淋しさを感じている。

 今は、猛暑の最中だが、涼しくなったら、カメラを持って常盤の町を訪れ、思い出に浸る時間を持ちたいと考えている。

 ※写真はかつて我が家があった付近の懐かしい風景

   今では、すっかり様変わりしています。



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