「怪しげな店@天文館 ~ 15年前の元気なエピソード」
来春には69歳になるという現在、健康に気遣いながら慎ましい生活を送っているが、15年前だとかなり様子が違ってた。健康上の不安も感じていなかったし、現在は経っているアルコールも、好きなだけ飲んでいた。
その当時の、気ままな夜遊びの様子がチラリと日記に書き残してあり、なんとも懐かしい気分で読み返した。
店選びを失敗したという、マヌケな失敗談に過ぎないのだが、過ぎ去った事として第三者的に見れば、馬鹿々々しくも面白い。
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2010年01月10日 日曜日
あまり街では飲まないが、正月ぐらいはいいかな? というノリで,
連休初日の昨日9日、「南九州随一の繁華」天文館に出た。
一旦夜の街に出てしまうと、くたびれ果てるまでハシゴを続ける習性がある。
最近体調もよく、この夜も、困ったことに全く疲れることもなくメチャメチャ元気。飲んでいた店が終了すると、開いている店を探して彷徨うという行動が続いた。
深夜2時ごろ、某ビル7階(だったかな?)のバーにふらりと入ると、第一声が、
「どんな店だかご存知ですか?」
「いや、全然知らない。ふらっと入っただけ」
「1時間半で9000円なんですけど、いいですか?」
「うん、いいよ。飲んでく」
カウンター席に通され、若い女の子がやってきた。
開口一番。
「きれいな女の子がそばにいると気分いいでしょ?」
そういって顔を近づけてきたが、
「・・・・・・」
返す言葉がみつからない。
まあ、容貌だけが全てというわけではない。気立ての良さやお喋で楽しませてくれればそれでよい。
そう思って、その娘の出方を待つことにした。
面白い話の一つや二つは、いつでも提供できるつもりではいる。
しかし・・・、
ぶっちゃけ、全然タイプじゃないから、わざわざこちらからアプローチする気にならんのだ。主役は客であるこちら。無理してまでホスト役に回るなんぞ面倒でしかない。
ところが、
この女の子、
いっこうに話題を振ってこない。
そればかりか、ふらふらとその場を離れてしまった。
完全に待ちの構えでいるこちらに対して、話の振り方が分からないのかも知れない。
プロとして失格だと思った。
店の男の子に
「これって職場放棄じゃん?」
と言ってみたところ、小さく頷きながら困ったような苦笑い。
その後、離席状態が続いた。
金を払ったうえ、我慢して放置状態に堪え続ける必要などさらさらない。店は他にいくらでもあるのだ。
レジの男の子に詰め寄って金を返してもらい、店を後にした。
すると自分の背中をめがけて、なにやら凄んだ声が聞こえてきた。
振り返ると、
般若のような険しい表情を浮かべた骨太の女性が立っていた。
さっきの、サービス放棄のお嬢さんだ。
「只飲みする気? 警察を呼ぶよ」
「放置してるだけじゃん! それで金取るのか?」
「あんたが面白くないからだよ」
「それ、こっちのセリフだよ。 放置して、それがサービスと言えるか? 馬鹿馬鹿しくて金なんか払えないよ」
「水割り飲んだじゃない?」
「飲んでない」
「飲んだのよ」
「あ・・・、ちょっとだけ口を付けたか・・・。あんまりつまんないから飲んだことさえ忘れてたよ。いくら払えばいい?」
「9千円」
「9千円って・・・、10分もそこにいなかったんだぞ」
「うちはそういう店なのよ」
お嬢さんは、引き連れてきた店の男の子を責め始めた。
「あんた、なんでお金返したりしたのよ!」
男の子は、困って背中を丸めている。
「じゃあ、千円だけ払おう」
そう言って、若い女傑の手のひらに、千円札を捻じ込んだ。
「9千円払ってよ」
「水割り一杯で9千円って、そんな馬鹿な話があるもんか、警察を呼べ!」
相手側から発せられた「警察」の二文字を、今度はこちらから返した。
実質的な言葉のやり取りはこれで終了。
「貧乏人! ここは、あんたみたいな貧乏人の来るところじゃないのよ!」
そう言われてもねぇ・・・。
「言われるとおり、俺は貧乏人だよ。
仰せの通り、ここは俺の来るところじゃないと思ったよ。
だから、店を出たんじゃないか。引き止めないでね。もちろん二度と来ないよ。それでいいだろう? バイバイ!」
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この顛末は、次に入った店で、話のネタとして使わせてもらった。
「ひどいですねぇ・・・、そんな店があるから困るんですよ。貧乏人なんて、お客さんに言うなんて失礼だし、それって、ただの負け犬の遠吠えですよ」
カウンターで、僕の横にいた若い女性客。
「ここは、そんなお店じゃないですよ」
その笑顔に嘘のないことはすぐに分かった。
聞くと、その小柄なお嬢さんの職業は介護福祉士(当方、現在介護の勉強中)。
そんなわけで、その後は楽しいひと時を過ごせたのでありました。