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「あるウクレレ奏者の話」
ラジオを聞いていたら、あるミュージシャンがウクレレのことを話していた。
ウクレレという楽器にあまり興味は無かったのだが、説得力のある話しっぷりと内容の面白さ、そしてスタジオで爪弾いたウクレレが、これまでのイメージを覆す音だったことで、引き込まれてしまった。
ギターに比べ数段減衰の速い音なのだが、静かな環境で聴いていると、思っていたよりは長い余韻が残るもので、その余韻を生かすような、タメを効かせたスローな演奏に耳を奪われた。
パチンパチンと弾けるような立ち上がりは確かにウクレレの音なのだが、短めの余韻がたっぷりと活かされロマンチックに響き、未知の楽器を聴いているかのような、一種不思議なムードを醸し出していた。
そんな彼が、ブータンを訪ねたときの話が興味深かった。
自分の誕生日を知らない人が多く、葬式も結婚式も無い。輪廻転生を信じているので、人生観が現在の日本とは全く違うのだ。放送も印刷物もなく、マスメディアというものが存在しない。
そんな国で流行歌というものが存在するのかと思っていたら、数年に1曲程度、国レベルで流行る曲があるのだそうだ。誰が作曲したかも分からない唄が口伝えで広まり(そもそも著作権なんていう概念が存在しない)、伝言ゲームのように様々なバリエーションを生み、自然に広まってゆく。
そういった国の街角でウクレレを弾いていると、子供たちが集まってくるのだが、ウクレレの音にはさほど興味を示さないという。日本では最近リラクゼーションを求めてウクレレが静かなブームになっているが、ブータンでは生活の基本にリラックスが溢れているので、わざわざリラックスする必要は無く、音楽にはむしろ激しさを求めることになる。音楽というのは、日ごろの生活から精神的にシフトするためのものだということを実感したという。
ミュージシャンの名前を知りたいと思いながら聞いていたのだが、相手の女性アナウンサーが「いわおさん」としか言わない。番組の最後で自己紹介していたが、「インターネットで、ウクレレ いわおで検索するとホームページが開けます」としか言わなかった。