「半年前の明晰夢」
見知らぬラウンジに見知らぬ男女が10人ほど。酒を楽しんでいる。
ほとんどが大人だが、中に中学生くらいの子供が2名ほど。
誰一人として実在の人物は見当たらないのだが、その夢の中では旧知の仲ということになっている。
その場で思う存分魔法を試した。
空中浮遊、地面すれすれの極端な斜め立ち、念力、物体出現など、タネのあるマジックではなく本物の魔法。
我ながらマジシャンらしいと思う。
泉のように無尽蔵に電気が発生する魔法のような発電機もハンドパワーを駆使して出現させた。
「なぜこんなことができると思う?」
「どうして?」
「それはね、これが僕が見ている夢だからだよ」
「まさかあ!じゃあ私はあなたの頭の中に存在する幻なの? そんなことあるわけないじゃん!」
見たこともない顔の知り合いが、そう言って笑った。
夢だと分かっていても、目の前のその人物が想像の産物などとは、とても思えない。その他の人も物も、まるで現実世界のようにはっきり見えている。
テーブルもグラスもソファーも、そして照明や空気感までも隅々まで鮮明に見渡せるし、確かな手触りも感じられる。
覚醒時とは異なる「もう一つの現実」を生きているような感じだ。
すぐに目覚めてしまっては、この極上のファンタジーが泡と消えてしまう。そんな勿体ないことはしたくないので、思う存分明晰夢の世界を楽しむことにした。
そして十分な満足感を得たあとで、すっきりとした目覚めがやってきた。